SSブログ

『ねじの回転』/ブリテン 其の1 [オペラ録音・映像鑑賞記]

 ソプラノとテノールだけのオペラなんて
「かぁァァ…ペッ(*゚д゚) 、」
 ってな筈なんですが、『ねじの回転』はまぎれもなく、二十世紀オペラの最高傑作の一つじゃないかと思ってしまう。歌手の好き・嫌いなど関係なしにハマるのだから、管理人は真性の“ブリテン体質”なのかもしれません。

 バリトンやバスといった“重石”が無いので、楽曲の重心は高く不安定。『ピーター・グライムズ』で聴かせた雄大なうねりはこの曲にはなく、かわりに青ざめた月光のような透明感と硬さがあります。
 過度にホラー的、情緒的でないところが、かえってウ゛ィクトリア朝時代の幽霊話の雰囲気をよく表していると思います。

 などと当たり障りのない感想を述べてから、本題の「ブリテン少年考」に移るわけです。

 ワタシが聴いているCDはピアーズが語りと幽霊を歌っている、1954年のブリテン自作自演盤です。この録音で少年マイルズ役を歌っているボーイソプラノが、張り倒したくなるくらい上手で、いい仕事をしているんです。幽霊のクイントの呼びかけに「I'm here~~」と応えるところなんて、語尾部分のグリッサンドをいっちょまえにやらかしたりして、ですね。

 子どもの歌唱を効果的に使うオペラはたまに見られますけれども、『ねじの回転』みたいに子役を重要な位置に据えて出ずっぱりに歌わせる作品は珍しいのではないでしょうか。
 少なくとも、ワタシの乏しいオペラ鑑賞経験ではそうなのでして、それだけでも特異なのに、ボーイソプラノの妹役を大人のソプラノが歌う(こともある)という気味の悪さ!

 横隔膜の発達した大人たちの声にまじってボーイソプラノの頼りなげな歌声が聞こえてくる。これが作品全体の異様な雰囲気を高めるのと同時に、ブリテンの“少年”に対する怪しい思い入れ、更にはこのオペラに封じ込めたテーマを物語っているように思うのです。

 ちなみに、このCDでフローラを演じるオリーヴ・ダイアーについては詳細不明。大人の声のようにも聴こえるし……、まぁどっちでもよろし。女の子の声なんて大人になってもたいして変わりはしませんし。
 ですが、男の子は劇的に変化します。いやホント、ボリス・クリストフのヘラヘラしたバス声などを聴いていますと、このオッサンにも「天使の歌声」を出せた年頃があったのか疑わしくなってきますよ……。
 その点でボーイソプラノは滅びゆく美の象徴であると言えます。

 そして更に、ブリテンお得意のテーマであるところの「無垢という罪」に話が及ぶわけですが、となると「誰(何)がマイルズを殺したのか」という命題に迫らなくてはならない。携帯電話でちまちま書いていると親指がツッてしまうので、続きは後日といたします。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。