《ピーター・グライムズ》MET ライブビューイング 5/27 [オペラ録音・映像鑑賞記]
METのライブビューイングなるものに初めて行ってきました。と言ってもアンコール上映なんですけど。
先日の読響のコンサートに引き続いてのブリテンです。特に《ピーター・グライムズ》は私がブリテンにハマるきっかけとなった記念すべき作品。
《ピーター・グライムズ》を聴かなければ《ビリー・バッド》にも手を出さなかっただろうし、ビリーを聴かなければピーター・グロソップの声に惚れることもなかったわけですから。これからも機会があったら、いろいろなグライムズに接していきたいです。
それに、オペラ作品としてのまとまりは、ビリーよりもグライムズのほうが上であると、ワタシ勝手に思っているんで。
実演鑑賞ではないですけれども、大音量と大画面での舞台にはかなり満足できましたよ。
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しかし、アレですねぇ、グライムズに限りませんけど、「これぞ理想!!」と呼べるような上演にはなかなかお目にかかれないものなんですね。不満というわけではありませんが、今回のMETのグライムズ、私的には少し物足りなかったです。
アンソニー・ディーン・グリファーのグライムズは外見的には気に入ったし、脆弱そうな声にしてキレ気味な歌唱もけっこういい感じだと思いました。この上演で初めて《ピーター・グライムズ》を観たのであれば、それなりに感動したかもしれないです。すごい好感はもてました。
ただ私の場合、ジョン・ヴィッカーズによる血まみれ歌唱がグライムズ・スタンダードになってしまっているので、クライマックスの狂気のカデンツァはもっと壮絶なのが好みなのです。完全にあっちの世界にイッちゃって欲しい。
グリファーの役づくりなんでしょうか。けっこう正気っぽかった。自分をきちんと保った上で、運命に挑みかかっている、というか……。
やっぱブリテンの最大の見せ場は、テノール狂乱。これに限る。
んー……“恋人”の悶えシーンを作って「萌え~!!」なんてやってたに違いないベンジャミン・ブリテン卿――想像すると怖いですが……(´;゚;ё;゚;`)
エレン・オーフォードのパトリシア・ラチェットも頑張っていましたけれども、なんか“アメリカ人女性”っぽさが目だったし。強すぎるのよね。
もちろんエレンは、一人でその他大勢の悪意からグライムズを守ろうとする“強い”女性なんだけど、だからといって希望を持っているわけではないんです。グライムズと同じく、絶望を抱えて生きているわけで。スカーレット・オハラみたいに果敢に運命に立ち向かっているのとは違うんですよね。
ボルストロード船長も、私のイメージとは違いました。アンソニー・マイケルズ=ムーアでしたが、彼ってボルストロードにしては若すぎやしないか? おまけにマスク、甘すぎやしないか?
もうちっと燻し銀的なオヤジ歌手のほうが、最後のセリフにぐっとくると思うんですけど。
反面、「おお、これはイメージにピッタリですよ?」と嬉しかったのが、ネッド・キーン役の歌手です。声もよかったし。あれは誰だったのでしょう(ご存知の方、教えてください)。
幕間の休憩時間に、少し特典映像などを流す時間もとってあって、歌手や指揮者のインタビューがあったりするんですけど、その中にグライムズを歌うピーター・ピアーズの姿もありました。
ほんの数秒でしたが、ゾクっとしてしまいました。
やはり、ピアーズのために書かれた作品なんですよね、このオペラは。ピアーズのグライムズはCDでしか聴いたことが無いんですが、これはやっぱり映像付きで観なければなるまい!! エレンはへザー・ハーパーだしのぅ。
グロ様のビリー・バッドの発売と同時にピアーズのグライムズも出ますので(詳細はコチラ)、追って手に入れるつもりです。
ところで。
会場のめぐろパーシモン大ホール、今回初めて行きましたが、なかなか立派な施設でした。キレイだし。
席が前のほうだったので画面に近すぎて、後半はちょっと頭痛に悩まされましたが……。
お客さんの数は以上に少ないように思いましたが(20名くらい?)、アンコール上映の夜の部だからだったのか、それともライブ・ビューイングのお客さんじたいが多くないのか、初めてなのでイマイチよくわかりません。
《ラ・ボエーム》だったらもう少し観客の入りもよかったんでしょうか???
客が少ないワリに係員の人数が多くて、全ての出入り口に立って中を監視しているので、座席からの写真の撮りにくいこと!! こういうところ、日本はおカタイなぁ;;;
まぁ、実演に比べて料金は安いし、チケットもさほど争奪戦にはならないように思いますので、気軽にオペラを楽しむにはもってこいですね。機会があったら、どなたか一緒に行きましょう。
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《ピーター・グライムズ》関連記事
■ジョン・ヴィッカーズの『ピーター・グライムズ』 with アレン
■R・ジョンソンの『ピーター・グライムズ』
■『ピーター・グライムズ』/ブリテン自作自演盤
■『ピーター・グライムズ』あれこれ
先日の読響のコンサートに引き続いてのブリテンです。特に《ピーター・グライムズ》は私がブリテンにハマるきっかけとなった記念すべき作品。
《ピーター・グライムズ》を聴かなければ《ビリー・バッド》にも手を出さなかっただろうし、ビリーを聴かなければピーター・グロソップの声に惚れることもなかったわけですから。これからも機会があったら、いろいろなグライムズに接していきたいです。
それに、オペラ作品としてのまとまりは、ビリーよりもグライムズのほうが上であると、ワタシ勝手に思っているんで。
実演鑑賞ではないですけれども、大音量と大画面での舞台にはかなり満足できましたよ。
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しかし、アレですねぇ、グライムズに限りませんけど、「これぞ理想!!」と呼べるような上演にはなかなかお目にかかれないものなんですね。不満というわけではありませんが、今回のMETのグライムズ、私的には少し物足りなかったです。
アンソニー・ディーン・グリファーのグライムズは外見的には気に入ったし、脆弱そうな声にしてキレ気味な歌唱もけっこういい感じだと思いました。この上演で初めて《ピーター・グライムズ》を観たのであれば、それなりに感動したかもしれないです。すごい好感はもてました。
ただ私の場合、ジョン・ヴィッカーズによる血まみれ歌唱がグライムズ・スタンダードになってしまっているので、クライマックスの狂気のカデンツァはもっと壮絶なのが好みなのです。完全にあっちの世界にイッちゃって欲しい。
グリファーの役づくりなんでしょうか。けっこう正気っぽかった。自分をきちんと保った上で、運命に挑みかかっている、というか……。
やっぱブリテンの最大の見せ場は、テノール狂乱。これに限る。
んー……“恋人”の悶えシーンを作って「萌え~!!」なんてやってたに違いないベンジャミン・ブリテン卿――想像すると怖いですが……(´;゚;ё;゚;`)
エレン・オーフォードのパトリシア・ラチェットも頑張っていましたけれども、なんか“アメリカ人女性”っぽさが目だったし。強すぎるのよね。
もちろんエレンは、一人でその他大勢の悪意からグライムズを守ろうとする“強い”女性なんだけど、だからといって希望を持っているわけではないんです。グライムズと同じく、絶望を抱えて生きているわけで。スカーレット・オハラみたいに果敢に運命に立ち向かっているのとは違うんですよね。
ボルストロード船長も、私のイメージとは違いました。アンソニー・マイケルズ=ムーアでしたが、彼ってボルストロードにしては若すぎやしないか? おまけにマスク、甘すぎやしないか?
もうちっと燻し銀的なオヤジ歌手のほうが、最後のセリフにぐっとくると思うんですけど。
反面、「おお、これはイメージにピッタリですよ?」と嬉しかったのが、ネッド・キーン役の歌手です。声もよかったし。あれは誰だったのでしょう(ご存知の方、教えてください)。
幕間の休憩時間に、少し特典映像などを流す時間もとってあって、歌手や指揮者のインタビューがあったりするんですけど、その中にグライムズを歌うピーター・ピアーズの姿もありました。
ほんの数秒でしたが、ゾクっとしてしまいました。
やはり、ピアーズのために書かれた作品なんですよね、このオペラは。ピアーズのグライムズはCDでしか聴いたことが無いんですが、これはやっぱり映像付きで観なければなるまい!! エレンはへザー・ハーパーだしのぅ。
グロ様のビリー・バッドの発売と同時にピアーズのグライムズも出ますので(詳細はコチラ)、追って手に入れるつもりです。
ところで。
会場のめぐろパーシモン大ホール、今回初めて行きましたが、なかなか立派な施設でした。キレイだし。
席が前のほうだったので画面に近すぎて、後半はちょっと頭痛に悩まされましたが……。
お客さんの数は以上に少ないように思いましたが(20名くらい?)、アンコール上映の夜の部だからだったのか、それともライブ・ビューイングのお客さんじたいが多くないのか、初めてなのでイマイチよくわかりません。
《ラ・ボエーム》だったらもう少し観客の入りもよかったんでしょうか???
客が少ないワリに係員の人数が多くて、全ての出入り口に立って中を監視しているので、座席からの写真の撮りにくいこと!! こういうところ、日本はおカタイなぁ;;;
まぁ、実演に比べて料金は安いし、チケットもさほど争奪戦にはならないように思いますので、気軽にオペラを楽しむにはもってこいですね。機会があったら、どなたか一緒に行きましょう。
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《ピーター・グライムズ》関連記事
■ジョン・ヴィッカーズの『ピーター・グライムズ』 with アレン
■R・ジョンソンの『ピーター・グライムズ』
■『ピーター・グライムズ』/ブリテン自作自演盤
■『ピーター・グライムズ』あれこれ
タグ:ピーター・グライムズ MET
2008-05-29 22:35
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>ネッド・キーン役の歌手
Teddy Tahu Rhodes(テディ・ローズ)
全然知らないんですけど、メトのデータベースで調べました。
画像検索で吃驚、いやぁ、これはオーストラリアのネイサン・ガンか、はたまたキーンリサイドか.....
さすが、しまさん、お目が高い!
MET ライブビューイングは、アンコール上映だと、映画並のお値段になるのかしら。
>席が前のほうだったので画面に近すぎて
20名くらいだったら、後の席に移ればよかったのに....ダメ?
by keyaki (2008-05-30 00:21)
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夜はそんなに少なかったですかぁ…。まさに閑古鳥状態じゃあないですか。昼の部はもう少しいたと思いますよ。でもある一部分だけ固まっていて(おそらく売れたのはパーシモン分のみか?)異様でした。始まるころにはみんなバラけて行きましたが(笑)。
歌手の印象,私も全く同感です。やはり最初の印象は大きいですね。グリフィーは数年前のサイトウ・キネンでも観ましたが,あのときはもっと声が細かったですヨ。見かけとの違いにかなり違和感がありました。
by KINCHAN (2008-05-30 00:21)
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METのライブビューイングというものは始めて知りました。映画感覚なのでしょうか?
もしかしてポップコーンを食べている人がいるとか・・・
結構面白そうですね、今度行って見ようかな。
by kazu (2008-05-30 10:02)
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■keyakiさん
>>ネッド・キーン役の歌手
>Teddy Tahu Rhodes(テディ・ローズ)
あ、そうでした、そんな名前でした(クレジットに出てた)。
けっこういいカラダしてますね。
http://www.andante.com/article/article.cfm?id=26163
細面な時点でワタシの好みの範疇ではありませんがw、声はなかなかよかったです。
>20名くらいだったら、後の席に移ればよかったのに
ですよね。今、気づきました(←鈍)
お値段は映画+αくらいでした。
by しま (2008-05-31 13:21)
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■KINCHANさん
30人くらいだったかな…;;; とにかく、閑古鳥状態だったのは確かです。盛り上がりに欠けました。
昼間はもうちょっと多かったんですか?(平日だから、逆に少ないと思っていたんですが)
>見かけとの違いにかなり違和感がありました。
体格はあんななのに、か細いですもんねぇ、声。ヴィッカーズに慣れているとギョッとします。
ピアーズの声も細いけど、響きは深いからなぁ~。
でもか細い声のグライムズも、逆ギレ度が高ければけっこう「萌え」だなって気づきました。良かったですよ、グリファーのグライムズ。
by しま (2008-05-31 13:27)
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■kazuさん
映画感覚、ですね。アンコール上映だったから余計そうなのかもしれないですが。
さすがにポップコーンは無しです。飲食禁止の会場ですんで。
キャストや演目が興味があるものであれば、行ってみると楽しいと思います。でもやっぱ、オペラは「生」がいいですね。お客さんの気合いの入れ方も違いますしね。
by しま (2008-05-31 13:32)
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MET ライブビューイング、行かれたんですね~。
私は「連隊の娘」に行きましたが、これは史上最強じゃないかってぐらいすごい舞台でした。
生で見られたらなあ、と思う反面、大画面のどアップ字幕付き、だったからこその感激かも、とも思わないでもなく・・・。ド近眼ですから。
侯爵夫人をやっていたフェリシティ・パーマー、「ピーター・グライムズ」にもミセス・セドレー(確か)役で出てたそうなんですが、いかがでした?
そういえばインタビューアーもナタリー・デセイでしたっけ。
私はほんとに映画館で見たのですが、ほとんど席が埋まっててびっくりでした。
楽しい場面、こちらの客席も一緒に沸いて、楽しかったですよ。
ポップコーンやビール持った人が目の前通過してくのには少々びびりましたが、音が気になったとこは無かったです。
しかし感想書かれるのが早くて羨ましいです。当方2週間かかりました。大したこと書いてないのに。
やっぱりブログ向きじゃないわ、私・・・。
by 彩 (2008-05-31 19:25)
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■彩さん
>ミセス・セドレー
いい味出してたと思いますよ。要所で笑いもとっていたし。
>ポップコーンやビール
映画館なら普通に売っていますもんね。無理もない。
食べながら見ると、自分の咀嚼音で音楽が聴こえなくなっちゃいますね。パンとか、なるべく柔らかいものにしましょう(←違?)
by しま (2008-06-01 00:23)
TITLE: ピーター大好き
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こんばんは。ピーター大好きといっても、ブリテンのピアーズではありませぬよ。
目黒のアンコール上演行かれたのですね。
そして、案の定の寂しい入りでしたか。
私の行った六本木も散々の入りでしたので、もう自由自在に振る舞いました。
トリスタンの巻では、ワインの水割りなんぞ、チビチビと飲ってしまいました。
パーシモンは、本格ホールの様子で、そんな気楽な鑑賞は不可能でしょうが。
グリファーのピーターは、確かにイキかたが、まだまだなのかもしれませんね。
でも、歌は大いによかったです。
舞台ともに初ピーターでしたので、大いに楽しみました。いやはや、しまさんの、ピーター好きと鋭い視線には感服です。
by yokochan (2008-06-02 23:38)
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■yokochanさん
ピーターと言ったら、ウチではまず最初に「グロソップ」、次に「グライムズ」、そして最後に「ピアーズ」です。
でも今回は、ピアーズの偉大さを思い知りましたねー。良い歌手です。ブリテン繋がりで語られることが殆どなので、それがちょっと気の毒かなぁ。
グリファーも違った魅力でよかったですけど。あれでもう少しブチキレてくれれば。まだ若いので、今後に期待です。
by しま (2008-06-07 22:10)