《椿姫》＠新国立劇場６／１４（日）

　実は、初日の６／５（木）に会社を早退して行く予定だったのですが、あまりの激務で忘れてしまったという泣くに泣けない経緯あり。翌日、仕事中にハッと思い出して財布からチケットを取り出し、日付をチェックした時ほど情けなかったこともありません。こういうことが重なると、また真剣に転職を考えてしまいます。

　かなり落ち込んで自己嫌悪に浸っていたところ、またもやmixiから愛の手が。本日のチケットをリーズナブルなお値段で譲っていただくことができました｡･ﾟ･(ﾉ∀`)･ﾟ･｡

　行けなかった分のチケット代は取り戻すべくもないし、そこまでムキになるほどこの演目が好きなのかと問われればちょっと言葉に詰まりますが、いや、もうね、気分の問題ですよね。これは。

　「行くつもりだったのに、行けなかった」という暗い気持ちで６月をスタートさせるのと、「運よく行けた！」という嬉しい気持ちで始めるのとではえらい違い。なんてったってヴェルディだしね。ここ数週間ほど下降ぎみだった運気をの流れを変えることができたんじゃないかと思ってマス。

　ところで《椿姫》ですが、かつて私はヴェルディが嫌いで超バカにしておった時期がありまして、私を（一時的な）ヴェルディ嫌いに追いやった張本人こそがまさにこの演目だったのです。

　初めて（映像で）観たのは小学生の頃だったかと思います。ゼッフィレッリ監督のストラータスがヴィオレッタを歌ったアレですが、ラストの「私は生きるわ～♪」と言っておきながらバッタリ倒れる演出がどうも気に入らなかったし、乾杯の歌のズンチャッチャとかがあまりにも単純で大衆臭いものだから、

　「ヴェルディってバカじゃねーの？……(ﾟ益ﾟ)」

　なんて思っていたのでした。当時はモーツァルトのオペラが好きになったばかりで、完全にそっちに傾倒しておりましたから。生意気なガキだったんであります。

　今でこそヴェルディ大先生のこの単純明快さ、ワンパターンの美学、パチンコ屋か運動会のＢＧＭとしか思えないハイテンションに日々のエネルギーをいただき、ひいては生命礼賛、人間愛にまで思いを馳せておりますけれども。

　苦手だった《椿姫》も、ひとたび《リゴレット》や《イル・トロヴァトーレ》との音楽的類似点（というか、普通に楽譜の“使いまわし”してね？）に気づいてからは、楽しんで聴けるようになりました。-------------------------------------
　
　初めての３階席でした。
　お気に入りの深紅のカーテンが、今日は真っ黒。たまたま座った席がそうだったのか、暗すぎてうまく写真が撮れません。

　なので幕間のホワイエの様子もアップしときます。
　写真だと閑散として見えますが、今日のホワイエは常よりも賑わっていたように思います。まるで結婚式の二次会のように着飾っている若い女の子たちも多かったです。さすがは人気演目。

　さて、演奏の感想ですが、全体的に物足りなかったというのが正直なところ。
　ヴィオレッタのエレーナ・モシェクは姿も声も良いのですが、いまひとつ響いてくるものがありませんでした。キレイに歌いすぎているんでしょうか。

　３階席の影響もあるかもしれませんが、迫力が足りなかったのかもしれません。これは単に好みの問題でしょうが、私は「おめー、どこが病気やねん！」と後頭部を殴りたくなるほどデカ声のヴィオレッタが好きなので。だって、ヴェルディじゃん、これ。
　ピアニッシモが得意な歌手とのことで、それは確かに秀逸だと感じましたが、そればっかりアピールされても物足りない。だって、ヴェルディじゃん、これ。

　実際、１幕後の休憩中には、あちこちで「声はとってもキレイなんだけどね」「なんか物足りない」という声が聞こえてきました。　

　アルフレード役のロベルト・サッカも微妙だな。嫌いなタイプの声質ですし、あの声でずり上げ歌唱をやられると、ミュージカルかポピュラーを聴いているような気分になります。

　けれども、さすがはイタリア人というか、時たま思い出したように、ヴェルディ風味のハイテンション歌唱をやらかしてくれるのでして、そうなるとけっこう面白く聴けるんですよね。そっちの路線を伸ばしていって欲しいものです。

　そんなこんなで、最初のうちはあまりオペラを観ている気がしなかったのですが、流れを変えたのがこの方。パパ・ジェルモン役のバリトン、ラード・アタネッリ。
　体つきも“ラード”っぽくって、いかにもオペラって感じでGood!!

　明るい声質で、深々と響く素敵なバリトンでございました。席から眺めていたときはもうちょっとハンサムっぽく見えていたのですが、近くで撮った写真で見ると、あれれ、大したことないですね（←失礼）。いや、だって、声が素敵だったからサ。

　外国人キャスト３人のうち、最も「ヴェルディらしい」歌唱をしてくれたのがこの人でした。
　レパートリーを見ますと、ああヤッパリね、という感じです。ＲＯＨにも出たことがあるそうなので、追っかけついでにまた聴くことができたら嬉しいな。

　日本人キャストで「おおっ!?」っと思ったのは、アンニーナの岩森　美里。太くて理想的なメゾ声。出番は少ないし地味な役ですけど、耳が釘付けになりました。

　ここ二週間ほど、睡眠時間を削ってのお仕事お仕事で、さすがに疲れていたんですね。２幕２場ではいちばん盛り上がりをみせるクライマックスで数秒ほど船を漕いでしまいました。のめりこめなかったのは肉体疲労のせいもあるかもしれません。リポＤでも飲んでおけばよかった。

　けれども３幕はそれなりに感動しました。ヴェルディらしさにこだわらなければ、もっとじいぃ～んとしたかも、です。後ろの席でも鼻をすすっている人がいたなぁ。

　上岡敏之の指揮はメリハリがきいていて、私は好ましいと感じました。
　ただ、やっぱり全体的に、美しすぎる演奏ですね。ヴェルディの「パチンコＢＧＭ」があんなに洗練された音になるなんて、びっくりでした。

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【指　揮】上岡　敏之
【演　出】ルーカ・ロンコーニ

【ヴィオレッタ】エレーナ・モシュク
【アルフレード】ロベルト・サッカ
【ジェルモン】ラード・アタネッリ
【フローラ】林　美智子
【ガストン子爵】樋口　達哉
【ドゥフォール男爵】小林　由樹
【ドビニー侯爵】東原　貞彦
【医師グランヴィル】鹿野　由之
【アンニーナ】岩森　美里

【合　唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

タグ：椿姫 新国

コメント 16

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しまさん、コメント＆TBありがとうございます。
＞忘れてしまったという泣くに泣けない経緯
それはショックでしたね。「今後のお出かけ予定」に入っていたので、いついらっしゃるのかしら・・って思ってました。でも、行けてよかったです^^+
私もすんでのところでそうなるところでした。何故か翌週だと思い込んでました。当日朝、同行者よりの電話のお陰で、無事感激→観劇できました。

＞アンニーナの岩森　美里
なんだか旧知のお方のような感じ・・とずっと思い続けてまして、今やっと確認しました。なんと1997年11月墨田区民オペラの「山賊の女親分風カルメン」だったのです^^+　ベテランですね・・さっすが！

TBします。よろしく！
by edc (2008-06-14 23:05) 

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ガーン！　後で気づいたときのショックわかりますよ。今後は、右サイドの「今後のお出かけ予定」に日にちも入れておくというのはどうかしら。
いえね、しまさんいつかなぁ...と11日に、和服姿の妙齢のお嬢さんを捜しちゃいました。
上岡さんは、ひと味違う音楽作りでしたね。
アタネッリは、ずいぶん拍手をもらってましたので、来シーズンもはりきって新国で歌ってくれるでしょう。
私もTBしますのでよろしくお願いします。
by keyaki (2008-06-15 09:41) 

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私も14日に行ってまいりました。

感想は「きれいなヴェルディ」という感じで少し物足りなさを感じました。

やはり私は生命力あふれるヴェルディが好きです。
by kazu (2008-06-15 10:13) 

TITLE: edcさん
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■edcさん
コメント＆ＴＢありがとうございます。
本当に、行けてよかったです。edcさんの記事で「すんでのところで忘れるところだった」と拝読して、「実は忘れました」とコメントしようかと思いましたが、あの時はあまりにも悲しすぎてできませんでした。
まったくmixiのお陰さまです。私も事前にいけないとわかっていたら、自分のチケットを放出したんですが、それもできず。
まぁ、結果オーライ。次回は気をつけます。
by しま (2008-06-15 11:45) 

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観劇忘れ…私も経験あります。人気の演劇だったので、結局見ないまま…悔しかったですねぇ。しまさんは何とかチケットが入手できたのですね。よかった～。

>アタネッリ
>近くで撮った写真で見ると、あれれ、大したことない
ヴェルディに似合う声ですよね。私は密かに「陣内さん」と呼んでおります（＾＾）だって似てるから。
（参考↓）
http://www.amazon.co.jp/Opera-Arias-Lado-Ataneli/dp/B0009UBXPM
by Sardanapalus (2008-06-15 11:50) 

TITLE: keyakiさん
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■keyakiさん
ハハハ。もう40も間近ですので、“妙齢”グループの中にはいないと思います（笑）

当初はお出かけ予定に日付も入れていたんですが、私ネットで顔を晒しておりますので、ちょっと危ないかなっと思って、今はやめてるんです。ネタやってるといつ刺されるかわかりませんしね（笑）
隠しているわけではないので、お知り合いの方でしたらお問い合わせいただければお答えはしてます。

アタネッリのリゴレット、楽しみです♪
by しま (2008-06-15 11:51) 

TITLE: kazuさん
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■kazuさん
同じ14日だったんですね。それは奇遇。どこかですれ違っていたかもしれないですね。

＞きれいなヴェルディ

同感です。
あまりに美しい演奏なので、一瞬「これはプッチーニか？」と思ったりしました。

私は「ガタイの良いヴィオレッタがドスーン…!!」のほうがオペラを観た気がするという人間なので、物足りなさを感じましたが、現代はこれでも良いのかもしれません。おおむね好評なようですから、ニーズがあるんだろうと思います。

やっぱヴェルディは笑えなくちゃっ♪
by しま (2008-06-15 11:57) 

TITLE: ■サルダナさん
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■サルダナさん

＞観劇忘れ

ほんっとに悔しいですよね。すごい自己嫌悪に陥ります。
職場で人前で手帳を開くことが多いので、プライベートの書き込みはやめていたんですが、頭にきて今後の全日程を記録しました。
アレンの分はハートマーク付き!!
ええい、笑うなら笑いやがれ～～っ!!

＞陣内さん

うーむ、濃い……。濃すぎです……。
おまけに黒い革ジャン似合わなすぎ……。
by しま (2008-06-15 12:03) 

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ええ？！わすれちゃったの？そんなこと、あるの・・・？！[絵文字:v-12]
いやしかし、行けてよかったね♪

写真のおじ様はいかにもボッテリして、しまたん好みだと思うけど・・・違うのね（＾＾；）やっぱりどうもわからんなあ、アナタの美の「定義」が・・・

ところで新国立って初台？だっけか？？？
by いちこ (2008-06-15 22:33) 

TITLE: No subject
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自分も忘れないようにブログのサイドバーにオペラの日時を書いてます。顔は後悔してないし多分シアトルで読んでる人がいるとも思ってないので刺されることはないでしょう（＾＾）。それにシアトルオペラで日本人らしき人間にあったことは殆どないのです。

ラード・アタネッリの評判は良いですね。来年彼のスカルピアを聴く予定なので今から楽しみです。
by 蘭丸 (2008-06-16 16:38) 

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同じ日に、私も３階席で観劇です。
やはり舞台が遠いですね。歌手の表情はほとんど想像力をふくらませつつ、動きや体型のみで判断せざるをえません。
声やいずれもよく通っていたかと思います。
アタネッリは、評判いいですね。来シーズンのリゴレットも考えねばなりませぬ。
幕間①は、１階ホワイエでワインを飲みつつ観察、幕間②は、３階からジントニックを飲みつつ見下ろしておりましたが、確かに着飾った女性がたくさんいらっしゃって、おじさんトテモ楽しかったデス。
by yokochan (2008-06-16 17:43) 

TITLE: いちこさん
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■いちこさん

＞そんなこと、あるの・・・？！
あるんですっ(`･ω･´) ｼｬｷｰﾝ 　放っといてクダサイ…(つД｀)

＞アナタの美の「定義」
待て待て。アタネッリを「美しい」とは申し上げておりませんぞよ？
「美」とは、グロ様の寝顔と胸毛デス(｡+･｀ω･´)ｼｬｷｨｰﾝ☆

新国は、そう、初台ざます♪　千葉からだと遠いかな？
by しま (2008-06-16 23:23) 

TITLE: 蘭丸さん
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■蘭丸さん
海外でも日本語のブログであれば、読者のほとんどは日本在住でしょうね。ウチもまぁ、アクセスの少ないブログだし、私も普通にオバハンなんで、ストーカーとか痴漢とかには全然縁がありませんが（若い頃から無かったしｗ）、こういうご時勢なので少しは用心しておこうかな、と。
シアトルに日本人は多そうなイメージですが、オペラにはあまり行かないんでしょうか。

アタネッリはスカルピアも似合いそうです。いいなぁ、聴いてみたい♪
by しま (2008-06-16 23:29) 

TITLE: yokochanさん
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■yokochanさん
幕間①は１階にいらっしゃいましたか。それは残念。私は３回の喫煙所に出ようとしてドアが開かず、怪しくジタバタ暴れていましたので、その時にいらっしゃったら絶対にお目にとまったかと思います。
（ちなみに洋装でした）
シュークリームを食ったのは幕間②ですが、その後すぐに３階に戻って上の写真を撮っていましたよ。絶対にニアミスしてましたねｗ

３階からだと、歌手の姿って豆粒みたい。音はきれいに聴こえますけど。
そんな中、私の視線をとらえたアタネッリ。やはり歌手として理想的な体型なんだと思います。やっぱり声もお顔もデカくなくちゃ♪

リゴレットでもニアミスを狙いましょう(｡+･｀ω･´)ｼｬｷｨｰﾝ☆
by しま (2008-06-16 23:40) 

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しまたん

初台のオペラシティに大好きなレストランが入ってるから反応しただけよ（＾＾；）場違いな発言でごめんなさいまし。

初台・・・千葉からは遠いが、都営新宿線を使うと楽に行けるんだよ♪
こんどつれてってね～
（もちろんワタクシ好みの骨皮長髪様が出るプログラムで・・・♪ふふふ）
by いちこ (2008-06-18 19:52) 

TITLE: いちこさん
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■いちこさん
ウン、行こう、行こう♪

＞骨皮長髪様が出るプログラム

ちょうどお薦めの人がいるわよ～。来日もします。オペラじゃないけど。
別途連絡しますねん。
by しま (2008-06-20 07:23)