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トーマス・アレンのベックメッサー@《マイスタージンガー》ROH盤 [アレンの録音・映像鑑賞記]

ROH マイスタージンガー 夢にまで見た、トーマス・アレンの声がよく出ているベックメッサー@《ニュルンベルクのマイスタージンガー》、97年ROHライブ盤です。

 購入したのは5月ですが、例によってベックメッサーのシーンだけを拾い聴き。あとは放っておいたんですけど、このたび一週間かけて全曲聴き通しましたので、記念に感想記事を上げておきます。
 野望としては、このCDを聴き込んでアレンの声を耳に焼き付け、レヴァイン盤のDVDをミュートにして鑑賞することだったり(爆)

 それはそうと、《マイスタージンガー》を全曲制覇したのはやっと3作目になりますが、早くもこの演奏が私の“スタンダード”になりそうな予感。アレンだからというのもモチロンありますが、全体的に他のキャストも理想的な歌唱をしているから、というのが第一の理由です。

 特に、ジョン・トムリンソンハンス・ザックス!!

 なんてデカ声でスットコドッコイなオモシロ歌唱をしてらっしゃるんでしょう・:*:・(*´∀`*)ウットリ・:*:・

 ワタシ、真面目くさったカッコイイ系なザックスはイヤなのです。この人くらいKYな雰囲気を漂わせてくださらなくっちゃ。鍵はやっぱり歌唱にアリで、トムリンソンってばもー、そこかしこで盛大な#。笑える縦揺れ系のヴィブラート。
 これくらい愛嬌たっぷりな声であれば、何時間でも耐えられるどころか、耳が積極的にメロディラインを追ってくれるので、演目にどっぷりのめりこめます。

 普段からオモシロ歌唱@ヴェルディばかり追い求めている邪道リスナーなんで、許してネ。

 ヴァルターがイェスタ・ウインベルイなのもとっても嬉しい。私、この人の肉厚で力強い声が好きなのです。モーツァルトの印象が強かったのですが、ヴァルターも歌っていたんですね。

 初めて聴いた時は、「さすがウィンベルイだわっ!!」と耳がハートになりました。が、こないだのバイロイトのフォークトの後ですと、ちょっと声が篭って聞こえます。「朝日は…」の美しいメロディラインが際立たず、親方連中のバス声に埋没している感じ。
 また、要所で荒々しいアタックを多用していますが、モーツァルトでならそれも魅力的に聴こえますけど、この演目ではせっかくのメロディを潰してしまっているように思います。

 この演目でロマンティックで情熱的なメロディを受け持つのは、ほぼテノールのヴァルターのみですから、ちょっとくらいか細くても声に光沢のあるテノールが、親方連中のオモシロ歌唱にキレイに被ってきてくれると嬉しいんだけどなぁ。

 指揮もベルナルト・ハイティンクでしょう。ハイティンクの音づくりは、どんな曲であっても何か宗教的な、清らかな響きがあるから。
 まだ歌唱を追うのに精一杯で、オケになんて意識が向いていませんが、それでもところどころで「あ~、ハイティンクだなぁ」と感じます。例えば、透明感のある、雄大さを意識したような管楽器のフレーズは、たまにふっと浮上してくるヴァルターの旋律と似たような印象があるのです。狙ってそうしているのかはわかりませんが、だからこそヴァルター役のテノールは管のような澄んだ響きであって欲しい。
 
 ハイティンクのワーグナーの演奏が“ワーグナー的”であるのか否か。たぶん、違うんだろうなと思うのですが、基本ヴェルディアンな私が何を求めてワーグナーを聴くかと言えば、今のところは「洗練されたロマンティックさ」だったりしますんで、ハイティンクの上品な音づくりは心の琴線に大ヒットしています。----------------------------
 さて、アレンのベックメッサーですが、野獣ヴォレの後に聴くと、これまたエレガントで色男ちっくな声ですね。一瞬、ドン・ジョヴァンニかと思いましたw(←お約束)
 10年前の公演なので、高音の鼻声はまだヌルヌルして聞こえます。

 以前は、「あのか細い声でワーグナーだなんて、図々しい!!(*゚Д゚)」な~んて思ったものですが、慣れてくると、このか細さが「負け犬の遠吠え」ちっくで、彼のベックメッサーの味になっているんじゃないでしょうか。キャンキャン咆えて、音だけでじゅうぶんに笑えます。

 それにしても、2幕のお間抜けセレナーデ。これは私の偏見ですが、堅物ワーグナーにここまでのユーモア精神があったなんて驚きです。も~ぉ、やれば出来るじゃないの~!!(*゚Д゚)

 技巧たっぷりで古臭い、くだらないメロディもさることながら。ポロロ~ンッといちいち入るリュートの合いの手も間抜けすぎて笑いのツボです。
 つか、あの「ブンッチャッチャッ♪」って、まさか、ヴェルディを馬鹿にしてるんじゃないでしょうね~ぇ?(#^ω^)ビキビキ

 このくだらんセレナーデを、むちゃくちゃ気取った声で歌うアレン。キレそうになりながら必死で気取りを保つ様子も、声だけで生き生きと伝わってきます。
 ライブ録音なんで、客席から爆笑の声も聞こえてきて、「いったい何をやってるんだぁぁぁ!!!」とジタバタ。
 ザックスのハンマーもガンガンうるさい(笑)
 このあたり、二人の掛け合いのテンポが良く、素晴らしいライブだったのだなぁと思います。

 3幕の歌合戦も面白い。
 焦って倍速で歌うところなんて、オホホホ唱法全開で、ベックメッサーの小者っぷりを存分に表現していますよ!

 兄さん、ヒーロー的な役柄よりも、こういう小者っぽい三枚目のほうが上手いんよね。ご本人も「オレ様はコメディアンなのよ」なんて言ってますし。(その言葉の裏には「本来は二枚目だけど」という勘違い的な自負があるとみた)

 2010年にシンシナティで本当にベックメッサーを歌うとしたら――年齢的にそれが最後かもしれませんし、やっぱり観に行きたいな~なんて思いますねぇ。追っかけ心に火をつけてくださるという意味では、ありがた迷惑なCDであります(笑)


 ※恒例、こっそり視聴のコーナー♪

 注)クリックすると音が鳴ります。
お間抜けセレナーデ with ザックスのハンマー乱れ打ち


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ザックス : ジョン・トムリンソン
ワルター・フォン・シュトルツィング : イェスタ・ウィンベルイ
エーファ : ナンシー・グスタフソン
マグダレーネ : カスリーン・ウィン・ロジャース
ダーヴィッド : ヘルベルト・リッペルト
ベックメッサー : トーマス・アレン
ポーグナー : グウィン・ハウエル

コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
指揮 : ベルナルト・ハイティンク

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《ニュルンベルクのマイスタージンガー》とワーグナー関連記事リンク

バイロイト《マイスタージンガー》完聴! -- ミヒャエル・ヴォレのベックメッサー
2010年 アレンのベックメッサーが観られる!!@シンシナティ ……って、ドコなのさ!?
続・オペラの音楽に求めるもの/ワーグナーの重唱の感想
オペラの音楽に求めるもの
アレンのベックメッサー@『ニュルンベルクのマイスタージンガー』
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ヴァランシエンヌ

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ありがとうございます。こそっと聞かせていただきました。
マイジンおたくとしては、非常に気になる録音、やはり買わねば、と思っちゃいました(笑)
音質ももいいですねぇ
(ここだけ聴いても、確かにアレンはメトのDVDよりも、遥かにいい感じですね[絵文字:v-221])

実はトムリンソンのザックス、2002年にドレスデンで聴いてます。もう6年前ですね。

腕っ節の強い、荒くれザックスって感じで、すっごくヨカッタんですよ。今まで実演で聴いた歌手の中でも、最も実力のある歌手…という観点に絞ると、この人がNo.1だと思いますもの。
あまり背は高くない方なんですが、どこからあの声、出てくるの?って感じでしたよ。床にビンビン響いて。

で、この人は、実力の割に録音が少ない人(だと思う)ですし、なんというか、録音では収まりきれない感じの声なんですよ。多分、実演で聴いた方が、より魅力的だと思います。

その理由が、しまさんの

>なんてデカ声でスットコドッコイなオモシロ歌唱をしてらっしゃるんでしょう・:*:・(*´∀`*)ウットリ・:*:・

で、生鑑賞から6年を経た今、明らかになった気が(笑)

>心の琴線に大ヒット

それが大事ですよね。オペラのガイドブックに「名盤」と書いてあっても、自分の心に響いてこなかったら、何の意味も持たないですもの。
いいな、と思える演奏に出会えれば、食わず嫌いでいた作品にも馴染みや愛着が湧いてきますしね。

>シンシナティで本当にベックメッサー

だ~か~ら~ぁ、言ってるじゃないですか(^^ゞ
こういう録音が、このタイミングで出てきたのも、何かのお達しかもしれませんよwww
by ヴァランシエンヌ (2008-08-11 01:12) 

Sardanapalus

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おおっ、トムリンソンのザックスにアレンのベックメッサーですか!それは楽しそうだ!!(笑)ということで音源も聴きました~。ハンマー乱れ打ちとピキピキきてるヒステリックな歌唱に爆笑です!2人ともお茶目な演技が上手いですよね~。今度探してみようかしら。

>なんてデカ声でスットコドッコイなオモシロ歌唱をしてらっしゃるんでしょう・:*:・(*´∀`*)ウットリ・:*:・
あはは、正にトムリンソンの声を言い現している言葉ですね!生で聞くと、更にオモシロ歌唱ですよ(^^)いつ聴いてもオケに負けず劇場中に響き渡る声と、充実した演技力の持ち主です。そうそう、彼は顔も大きいですよ♪(重要)
by Sardanapalus (2008-08-11 21:05) 

しま

TITLE: ヴァランシエンヌさん
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■ヴァランシエンヌさん
興味を持っていただけて何よりです♪
音質も悪くないですし、とにかくライブの臨場感がたっぷりですんで、コレクションの一部に加えて損はないかと。

トムリンソンのザックスを生で体験されたとは、なんて羨ましいことでしょう!!!
私はもう、この人以外のザックスを聴けません(笑) 私のイメージにぴったりなんですものー。

>録音では収まりきれない感じの声なんですよ。

わかるような気がします。トムリンソンの録音はいくつか聴いているんですが、今まではイマイチその魅力をつかみきれなくて。今回も聴いてみるまでは「どうかなー」なんて思っていたんです。
言われてみれば、今までのはどれも「スタジオ録音」だったかな? 多分。
by しま (2008-08-11 23:19) 

しま

TITLE: Sardanapalusさん
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■Sardanapalusさん

>トムリンソンのザックスにアレンのベックメッサーですか!

この二人のどちらが欠けても、一気にテンションが下がるでしょう。METのでベックメッサーだけが浮いているのは、ありゃザックス役のせいだわよ~ヾ(゚д゚)ノ゛(←アレンを守る会)

というわけで、音源、楽しんでいただけてよかったです。
次回はプライのベックメッサーとガチンコ対決させようかなー。

>彼は顔も大きいですよ♪

そうでしょう、そうでしょう(*´∨`) ←なぜか偉そう
小顔歌手からああいう声が発せられるなんて在り得ません。(例外があったら教えてください)
by しま (2008-08-11 23:37) 

yokochan

TITLE: ハイティンク
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おっ、手に入れましたね。
ハイティンク好きの私は、この演奏、やはりオケの素晴らしさに耳が行ってしまいます。
以前の彼のワーグナーは、スコアをきっちり追っているだけの部分もありましたが、このマイスタージンガーは全編にドラマを感じさせる息遣いがあるように思います。
そして、しまさんご指摘のとおり、上品でふっくらした響きもハイティンクの特徴かと。
ハイティンクのヴェルディもいくつか出てますが、是非聴いてみたいもんです。そしてブリテンも上手なリーブ・ハイティンクであります。

 トムリンソンは、ウォータンを舞台で見たことがありますが、大柄な米人ポラスキのブリュンヒルデとともに、舞台をどしんどすんと駈けまくり、ごろんごろん抱き合って(親娘なのに)転がりまくる大迫力でした。当然、耳にビンビン響く声の威力はすげぇもんでした。
この人はライブの人ですね。

 あと、肝心のアレン卿、ほんとに上手いもんですね。
もうお腹一杯でしょうけど、カラヤン盤のエヴァンス卿のベックメッサーもなかなかにイヤラシぶりを発揮してますよ。
それらと正反対の悩める紳士を演じたのが、ヘルマン・プライです。シュタインのDVDで観れますが、全員が真面目くさってますので、しまさんのお好みではないかもしれませぬね。
by yokochan (2008-08-12 10:36) 

しま

TITLE: yokochanさん
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■yokochanさん
こんばんは。yokochanさんの記事のお陰で、アレンの貴重なコレクションがまた充実いたしました。ありがとうございます!!

>上品でふっくらした響き

まさに「ふっくら」という感じですよね。ワーグナーにはどこか男性的ないかついイメージを抱いていたのですが、このハイティンクの演奏はまろみと柔らかさを感じます。
ピーター・グライムズでもそうでした。

>ハイティンクのヴェルディ

……(*゚Д゚)
それは……是非検証してみたいものです!!!!

>どしんどすんと駈けまくり、ごろんごろん抱き合って(親娘なのに)転がりまくる

ト、トムリンソンって……(*゚Д゚)
まさに理想的な歌手です!

>エヴァンス卿のベックメッサー

(*゚Д゚)!!!!
それは……プライよりも先にチェックしなくてはっ!!!!
by しま (2008-08-12 22:49) 

kazu

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トムソンのワーグナーはMETでのラインの黄金、ワルキューレ、ジークフリートで見ることが出来ます。(すでにご存知かな?)ただし、ここでもレヴァインのマッタリ演奏ですが(笑)

しかもワルキューレはジークリンデがジェシー・ノーマンでどう見ても彼女が一番強そうで笑えます。、
by kazu (2008-08-18 00:44) 

しま

TITLE: kazuさん
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■kazuさん
ありがとうございます。ワーグナーは常にノーチェックですので、もちろん存じませんでしたよ~。
今のトコロ、マイスタージンガーとローエングリンで精一杯なので、見るのはもう少し先になりそうですが、せっかくならトムリンソンで鑑賞したいですね。
ジェシー・ノーマンも好きですし。
by しま (2008-08-18 01:54) 

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