アレンのパングロス博士 -- 《キャンディード》04年NY (11/1 加筆再掲) [アレンのミュージカル]
レナード・バーンスタインの《キャンディード》。原作は18世紀の啓蒙思想家ヴォルテールによる小説、『カンディード或は楽天主義説』です。
風刺に満ちた悪漢小説で、冒頭で問題提起される格言は、「この最善なる可能世界においては、あらゆる物事はみな最善である」(The Best of all possible world)というもの。
主人公の天真爛漫な青年キャンディードは、家庭教師のパングロス博士からこの思想を徹底的に叩き込まれ、メチャクチャに破綻した冒険の道程にあっても(例え恋人が殺されたと知らされても)、「全ては“ベスト”な方向に導かれているんだ!!」と自分に信じ込ませようと努力します。
こんなふうに解説すると小難しく感じますが、ミュージカルに移し替えるとこんなに楽しいシーンになります。
題して、パングロス博士の“プライベート・レッスン”。
パケットのお尻を追いかけ回して、
「授業は終わり。マドモアゼル・パケットは“物理”の補習で残りなサイ。ほれ、行った行った!」
と、キャンディードたちを追い払うアレンじーちゃんがお茶目。
そして、“実験物理学”にハゲみます。
エロの中にもエレガンス。
こういう「枯れてない」じじい役、アレンってぴったりだと思うんですケド。
(でもチョット、腰がつらそう・・・w)
-----------------------------------------------
恋人クネゴンデの死を悲しむキャンディードに、さらに「教え」を叩き込むパングロス。
"Dear Boy"
"甘いハチミツだって針を持つミツバチが運んでくるじゃないか"
自分はパケットから性病をうつされ、お鼻も指もモゲちゃっていますが、これも恋の原因と結果の法則がゆえ。“何と完璧な世界なんだ!!”というわけ。
軽く歌っていますが、決して歌い崩したりはしないところに、じーちゃんらしさを感じたりします。
(大したアジリタでもないくせに、“咳払い唱法”やってます。も~ぉ、最近のじーちゃん、ラクし過ぎ;;;)
博士のこの「楽天主義説」は、ヴォルテールの時代の支配階級に蔓延しており、ヴォルテールはこれを痛烈に批判をするために『カンディード』を著したのでした。
この後もキャンディードは、博士の教えを守りながら数々の理不尽な事件に巻き込まれます。が、やがて、この世は完璧ではなく、幸せも苦難も平等にやってくるのだということに気付くに至ったキャンディードは、楽天主義にも悲観主義にも偏らない自分の生き方に目覚めるのです。
「幸せを捜し求めるなかれ。人がこの世で為すべきことは、ただ一心に畑を耕し、昨日の自分を省みて、明日に希望を持つことである」
キャンディードにこの真理を授けたのは、「世界でいちばんの賢者」の「弟子」と名乗る、
パングロスじーちゃん(?)だったりするわけですが。
アレンって、カツラや被りモノが似合うんですよ(←ご贔屓自慢)
パングロス博士の「楽天主義」は、つまるところ、どんな悲劇の中でも「これは最善だ」と気の触れたように言い張り続けること。現実にきちんと向き合おうとしない無責任な態度です。トーマス・アレンの浮わついたじーちゃんぶりは、地に足のついていない哲学者を風刺する博士の役柄にけっこうハマっていると思いました。
この《キャンディード》の批評を集めた、それこそ「まとめサイト」のお手本のようなページがあります。⇒Candide/Selected Writings
アレンについて言及している部分のみ、ピックアップしておきましょう。
_, ,_ パーン
( ‘д‘)
⊂彡☆))Д´) ← ピーター・G・デイヴィス
パパパパパーン
☆))Д´)
_, ,_ ∩☆))Д´)
( ‘д‘)彡☆))Д´)
⊂彡☆))Д´)
☆))Д´)
おおむね好評のようですネ。
アメリカの皆さん、ありがとー。
アレンはこの後、2005年2月にロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで演奏された《キャンディード》でも、ナレーターとパングロス博士と、悲観主義者のマルティンを演じています。
キャンディードは、マイケル・スラットリー。クネゴンデはカルラ・フータネンでした。
※ロンドンでの音源も探しております。見つけた方、通報ヨロシク。
⇒見つかりますたヽ(´ー`)ノ 有志の皆さん、ありがとー。(11/9)
風刺に満ちた悪漢小説で、冒頭で問題提起される格言は、「この最善なる可能世界においては、あらゆる物事はみな最善である」(The Best of all possible world)というもの。
主人公の天真爛漫な青年キャンディードは、家庭教師のパングロス博士からこの思想を徹底的に叩き込まれ、メチャクチャに破綻した冒険の道程にあっても(例え恋人が殺されたと知らされても)、「全ては“ベスト”な方向に導かれているんだ!!」と自分に信じ込ませようと努力します。
こんなふうに解説すると小難しく感じますが、ミュージカルに移し替えるとこんなに楽しいシーンになります。
題して、パングロス博士の“プライベート・レッスン”。
パケットのお尻を追いかけ回して、
「授業は終わり。マドモアゼル・パケットは“物理”の補習で残りなサイ。ほれ、行った行った!」
と、キャンディードたちを追い払うアレンじーちゃんがお茶目。
そして、“実験物理学”にハゲみます。
エロの中にもエレガンス。
こういう「枯れてない」じじい役、アレンってぴったりだと思うんですケド。
(でもチョット、腰がつらそう・・・w)
ランキング:にほんブログ村 ミュージカル
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恋人クネゴンデの死を悲しむキャンディードに、さらに「教え」を叩き込むパングロス。
"Dear Boy"
"甘いハチミツだって針を持つミツバチが運んでくるじゃないか"
自分はパケットから性病をうつされ、お鼻も指もモゲちゃっていますが、これも恋の原因と結果の法則がゆえ。“何と完璧な世界なんだ!!”というわけ。
軽く歌っていますが、決して歌い崩したりはしないところに、じーちゃんらしさを感じたりします。
(大したアジリタでもないくせに、“咳払い唱法”やってます。も~ぉ、最近のじーちゃん、ラクし過ぎ;;;)
博士のこの「楽天主義説」は、ヴォルテールの時代の支配階級に蔓延しており、ヴォルテールはこれを痛烈に批判をするために『カンディード』を著したのでした。
この後もキャンディードは、博士の教えを守りながら数々の理不尽な事件に巻き込まれます。が、やがて、この世は完璧ではなく、幸せも苦難も平等にやってくるのだということに気付くに至ったキャンディードは、楽天主義にも悲観主義にも偏らない自分の生き方に目覚めるのです。
「幸せを捜し求めるなかれ。人がこの世で為すべきことは、ただ一心に畑を耕し、昨日の自分を省みて、明日に希望を持つことである」
キャンディードにこの真理を授けたのは、「世界でいちばんの賢者」の「弟子」と名乗る、
パングロスじーちゃん(?)だったりするわけですが。
アレンって、カツラや被りモノが似合うんですよ(←ご贔屓自慢)
パングロス博士の「楽天主義」は、つまるところ、どんな悲劇の中でも「これは最善だ」と気の触れたように言い張り続けること。現実にきちんと向き合おうとしない無責任な態度です。トーマス・アレンの浮わついたじーちゃんぶりは、地に足のついていない哲学者を風刺する博士の役柄にけっこうハマっていると思いました。
この《キャンディード》の批評を集めた、それこそ「まとめサイト」のお手本のようなページがあります。⇒Candide/Selected Writings
アレンについて言及している部分のみ、ピックアップしておきましょう。
Review by Terry Teachout in the Wall Street Journal
サー・トーマス・アレンのパングロスは、これ以上望めないほど素晴らしいものだった。
Review by Anthony Tommasini in the New York Times
有名な英国人バリトンのトーマス・アレンをナレーター/ヴォルテール/パングロス博士の3役に選んだのは良い試みであったと思う。もっとも、エレガントなトーマス卿も、くだらない時事ジョークをかますところは明らかにやりにくそうに見えたものだが。
Review by Peter G. Davis in New York Magazine
歌以外にはほとんど何も特徴のないパングロス博士。存在感は全くないし、ナレーションも笑えない。サー・トーマス・アレンのパングロスは全く無用の長物。
Review by Steven Winn in the San Francisco Chronicle
アレンは安定した演技力でパングロス博士を演じていた。
Review by Marc Shulgold of Scripps Howard News Service
エレガントなサー・トーマス・アレンと、澄んだ美声のMetのテノール、ポール・グローブズがこのショーを一流としての信頼に耐えうるものにした。
グローブズとアレンはどちらも等しく素晴らしかった。
_, ,_ パーン
( ‘д‘)
⊂彡☆))Д´) ← ピーター・G・デイヴィス
パパパパパーン
☆))Д´)
_, ,_ ∩☆))Д´)
( ‘д‘)彡☆))Д´)
⊂彡☆))Д´)
☆))Д´)
おおむね好評のようですネ。
アメリカの皆さん、ありがとー。
アレンはこの後、2005年2月にロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで演奏された《キャンディード》でも、ナレーターとパングロス博士と、悲観主義者のマルティンを演じています。
キャンディードは、マイケル・スラットリー。クネゴンデはカルラ・フータネンでした。
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2008-11-01 21:04
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コメント(4)
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やー これ楽しいですね!ウイットに富んでて。チェノウスさすが。
>軽く歌っていますが、決して歌い崩したりはしない
そうなんですよね、こういうオペレッタというかミュージカルっぽいものは、歌い崩して歌われると満足できないし、かと言って様式っぽく歌われても良さが出ないし、そのさじ加減が難しいと思います。そういう意味でも、じーちゃんてそのバランス加減がよく分かってると思います。
それにじーちゃんて英語がキレイではありませんか?発音がハッキリしてるし。私は英語の事はよく分かりませんが、すごくイギリス英語かな?っていうのを感じます。ノーブルというか。このパングロス私好きです~。
このBS-ハイビジョン(?)は放映されるって知ってたんですけれど、うちはマンションの立地の関係で映らなくて、すごく悔しい思いをしたんです。こんなに楽しいのだと益々観たいですね。(日本のはちょっと・・でした;;)
それからスィーニートッドにも出てるんですか?何の役かしら?それも興味津々。
by straycat (2008-10-29 23:43)
straycatさん>
またまた褒めていただけて嬉しいです♪
>歌い崩して歌われると満足できないし、かと言って様式っぽく歌われても良さが出ないし
そうなんですよね。オペラ歌手がポップスを歌うと途端につまらなくなったりしますし。最近の若い歌手は普通にロックやポップスを聴いて育っていますから、さじ加減ができる人は増えたんじゃないかと思いますが。
>すごくイギリス英語かな?
ですねぇ。私も英語ができるほうではないし、どちらかというと米語耳なんですけど、じーちゃんのはキレイなんで助かります。
>スィーニートッド
>何の役かしら?
ジョニー・デップと同じ役です(爆)
by しま (2008-10-30 01:09)
キャンディードってなかなか深い内容なんですね。
じーちゃん2役ですか。
あのモコモコ・・・おもしろいですね・・・( ̄ー ̄)
by ぶどう (2008-11-02 09:12)
ぶどうくん>
小難しく語ろうとすればいくらでもできそうなんだけど、音楽はキャッチーでカッコ良いし、ストーリーも面白いからね。(演出で失敗するとシラケそうだけど)
>あのモコモコ
あったかそーでしょw
こういうの被ってるじーちゃん、妙に生き生きしてるんですよ。スイッチが入るのかもね。
by しま (2008-11-02 16:32)