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[再掲] 聴きました! 《キャンディード》@ロイヤル・フェスティバル・ホール [アレンのミュージカル]

 ※11/22 :試聴ファイル追加しました。

rfh.jpg 05年ロイヤル・フェスティバル・ホールでの《キャンディード》。BBCで放送された音源の情報をこちらの記事で募りましたところ、keyakiさんが真っ先にご連絡をくださったのですが、他の複数の方々からもご提供をいただきました。皆さん、本当にありがとうございます。(ワタシのファン道は、皆サマの生温かい励ましと通報、“施し”によって成り立っております)

 めでたく聴くことができましたので、かる~く感想などを。(もちろん、じーちゃん中心です。あしからず)

 演奏会形式だったこともかなり影響していると思いますが、ざっと聴いたところでは、「まぁ、こんなものかナ」という印象です。

 やはり歌だけじゃなくて、合間合間に芝居がないと、この作品の魅力は伝わりにくいんだと思います。バーンスタインの音楽だけでもとても魅力的なんですけれども、同じフレーズの繰り返しも多いので、音楽だけだとワンパターンに感じちゃいます。

 メロディラインが同じなのは、ストーリー上そうでなければならない理由がちゃんとあるからで、それこが芝居で表現されるべきポイントなんですよね。もちろん「語り」が入りますけど、それだけだとつらいです。(まぁ、ところどころで観客の笑い声が入っていますので、棒立ちではなく、何かカンタンな小芝居をしていたことは間違いないと思いますけど)



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rfh candide sirthomasallen.jpg そんなわけで、サー・トーマス・アレンの「語り」には、お芝居形式でのナレーター以上に負荷がかかったと言いますか、公演が成功するか否かを左右する責任が重かったことと思います。

 アレンは上手くやっているんじゃないでしょうか。演奏そのもののレベルは決して「最高!!」とは言えないし、芝居形式のようなドキドキワクワク感もありませんが、それなりにストーリーに引き付けられますし、テーマについて深く考えさせられ感動もできます(これは「スコティッシュ・オペラ版」を採用していることによる影響も大だと思いますが)。

 というか、最初から最後までアレン一人が出ずっぱりなので、完全にアレンの色に染まっていますよね。他の登場人物に「深みがない」という評もありましたけど、アレンの語りに引っ張られて、それに合わせて歌っているようなものですから、キャラクター性なんて出しようがない(^^;

 幸い、アレンの語りもオモシロいからいいですけど、でも、サーの「オレ様がやるとくだらないジョークもお上品に聞こえちゃうのよ」とでも言いたげなノリが苦手な人には、逃げ場がないので気の毒、かも(笑)

ナレーションの始めの部分。

 紳士淑女の皆さん、今晩は。
 お聴きいただきましたのは、レナード・バーンスタインの《キャンディード》序曲です。
 どうかヴォルテールの《キャンディード》と混同しないでいただきたい。あちらは短い風刺小説で歌なんぞはありません。ですが、バーンスタインの《キャンディード》は大規模なオペレッタでありまして、登場人物のほとんどは否応なく歌わなきゃならんのですよ。
 “レナード・バーンスタインの《キャンディード》”と言っていますが、実はこれも正しくはないのでして、厳密に言えば“リリアン・ヘルマンとマイケル・スチュアートと……@#%¥#$?&☆÷♂£※……とレナード・バーンスタインの《キャンディード》”、であります。

 まぁ、なんというか、キャンディードやクネゴンデではなく、良くも悪くもサー・トーマスが主役のコンサートなんですネ。

 マイケル・スラッテリーカルラ・フータネンもよく頑張っているのですけれども、ちょっと陰が薄いです。「若い」というか、「青い」というか。じーちゃんもその辺、二人に合わせてセーブしているようにも感じます。
 が、いかんせん、大人と子ども。これはもう仕方がないことだと思うんですけど。

 キャリアの差、というのも当然あるかと思いますし、何よりもアレン自身が守りに入っちゃっていますからねぇ、近年は。得意なこと以外にはやらないし、絶対に「オレが王様」状態になれるシーンで、若いのを懐に取り込んじゃっているって雰囲気があります。若い衆も若い衆で「このじーさんを食ってやるぜ、ゴルァ~!!!」ってな気概の感じられるパフォーマンスをしていないので、全体的にな~んか生ぬるいのよねぇ・・・。

 そういう意味で、04年NYでの舞台のほうが、異業種混交の相乗効果か、おフザケの中にもピンと張り詰めた空気感が確かにあって、観る側にも良い緊張感がみなぎっていたかも、です。

 なので、アレンの歌唱も「可もなく、不可もなく」ってな感じなのですが、マルティンの“Words, Words, Words”を聴けたのはかなりの収穫♪ とんがった雰囲気のオモシロい歌で、嘲った笑い声やboo!!が入ったりして。アレンってこういうの、お得意ですよネ。

 楽天主義者のパングロス博士と対をなす役なので、中間部で博士の“レッスン・ソング”と同じメロディが出てくるのですけれども、完全に声色を変えて対極であることを強調しています。

マルティンの"Words, Words,Words(laughing song)"
 直前のナレーションの「さて、私がマルティンを歌いますが...」から、声音とアクセントをガラリと変えてのマルティンのセリフ部分も入れました。

 じーちゃんのこーゆー器用さにメロメロな私。「イヤ~ン、さすが~(*´艸`*) 」なんて、この歌の部分で心拍数がマックスに上がったんですが、観客の反応はいまひとつ。ドン引きな拍手がパラパラと聞こえただけでした…(*゚Д゚)

 (大したことねーなと私が思ったパングロスの“Dear Boy”の時には「ぶらぼー!!」「ぶらぼー!!」スゴかったのにィ…。オイラの耳が悪いのか…?orz


rfh candide michaelslattery.jpg さて、マイケル・スラッテリーのキャンディードは、キャラ的にも技術的にも青臭さは残りますけど、印象はけっこう良かったです。思うに、あんまり上手く歌われると、かえって面白味が減るのかもしれません。あまりドベタクソでも困るけど(もちろんスラッテリーは上手です)、有名じゃなくても、若くてこれからが伸び盛りなテノールに歌わせると、キャラにぴったりハマるんでしょう。

 声量はありませんが、明るい声音で、裏表のないストレートな歌唱をしていますし。私、バリトンはちょっとくらいジメジメ、ヌルヌルした声が好きですけど、テノールの場合は声音の明るさが命なんです。その辺、スラッテリーは好みの範疇なんでしょうね。

 ちょっと上がっていたのでしょうか、あちこちでメチャクチャになってましたが、そこも好印象でした。

"The ballad of Eldorado"
 キャンディードの歌の中で私が最も好きな曲。



rfh candide carlahuhtanen.jpg それに比べると、カルラ・フータネンのクネゴンデはちょっと魅力に欠けるかも。楽譜どおりに歌っているという域から抜け出せていない、というか。クネゴンデのキャラクターがいまひとつ伝わってきません。

 “Glitter and be gay”では頑張ってハジケている様子でしたが、それ以外が真面目な女子大生風なのに、いきなり蓮っ葉になられても…。コロラトゥーラもちょっと大変そう。

 ただ、歌っている時から観客の笑い声が絶え間なく入っていますし、大喝采を浴びていましたから、何かオモシロい演技をはさみながらのパフォーマンスだったのかも。生で鑑賞したのであれば、感想は変わっていたかもしれないですね。

"Glitter and be gay"
 



 指揮はラモン・ガンバ。NY版を振ったオールソップのいかにもアメリカらしい解りやすい演奏とはちょっと雰囲気が違っていて、インテリジェンスと良い意味での大衆っぽさがうまく融合されていると思います。

 今月ラジオ放送されるENO《キャンディード》の指揮も彼なので、いい予習になりました。
 そういえば、タイトルロールは“飛男くん”ことトビー・スペンスなのですよ!!!
 今からとっても楽しみ。週末の徹夜にむけて、体調を整えておかなければ。



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◇《キャンディード》関連記事リンク
じーちゃんブロードウェイへ行く -- 《キャンディード》04年NY
アレンのパングロス博士 -- 《キャンディード》04年NY
07年にもやってます -- 《キャンディード》@エジンバラ・フェスティバル
Royal Festival Hallの《キャンディード》 -- 05年ロンドン

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コメント 4

straycat

>オイラの耳が悪いのか…? 
いんや、私はじーちゃんは歌で芝居をしていて、さすがと思いますですよ。

このキャンディードは私も好きです。元々青臭いのがキャンディードなので、これである意味正解ではないでしょうか。声も明るくて屈託がないし。でも私はあちこちで♯っていうのがよく分かりません。しまさんさすがですね。(でも♭よりはマシですよね・笑)

グネゴンデはおっしゃる通り、ちょっと重いですね。姉さん女房という感じ。

音声がUPされて、しまさんのレポがさらによく理解できました。やっぱりこういう一ひねりしたテーマ性のあるものってコンサート形式の方が伝えやすいのでしょうか。
by straycat (2008-11-22 22:33) 

しま

straycatさん>
じーちゃんの歌、聴いてくださってありがとうございます(*´∨`)
こーゆーのが好きなんですよね~。

>スラッテリーのキャンディード
最初は青臭すぎてドン引きだったんですが、聴けば聴くほど好感度大なんです。
数多く聴いてないですけど、今のところはミスキャストなキャンディードには出会ってないですね。(07年のポレンザニがなにげにミスキャストなんじゃないかと睨んでいるんですがw)

さぁ、いよいよ大本命のトビー君のキャンディードまで2時間を切りました。ちゃんと録音できるかな。それよりも何よりも、私は起きていられるんでしょうか…。
by しま (2008-11-23 01:05) 

keyaki

グリ君の一人三役のキャンディードのライブ録音がなんと、なんと手に入りました。なんとタイミングのいいこと。
歌の部分より、イタリア語のしゃべくりが面白くて、なんかはまってます。グリ君は役者ですわ。
キャンディードとクネゴンデは、同じ部分をアップしました。
TBしますので承認お願いします。
by keyaki (2008-11-23 08:35) 

しま

keyakiさん>
すご~い、手に入ったんですね!! さすがはkeyakiさん。
私はENOキャンディードの録音に疲れ果てて、さっき目が覚めたところです(笑) 本当にいいタイミングですね。

音源、聴かせていただきました。
脇役を歌わせるのが勿体無いくらいの立派な声ですが、あんな芸達者ぶりを知ってしまうと、やっぱりキャンディードじゃ物足りないと思います。
TBありがとうございます。承認させていただきました。

>グリ君
ついにkeyakiさんもこんなふうに呼ぶようになりましたか♪
by しま (2008-11-23 14:48) 

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