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アレンの“ドン” -- イントロダクション [アレンのドン・ジョヴァンニ]

*2012/2/22 ようやく'88年ROHの映像について記事にしました。こちら

don.jpg トーマス・アレンが初めてドン・ジョヴァンニを歌ったのは、1977年のグラインドボーン・フェスティバルでした。それから30年近くもの間に、300回以上ものパフォーマンスをこなしてきたそうです。

 この数字だけでも「誰もが認めるドン・ジョヴァンニ歌い」と言えそうですが、実はワタクシ、ファンのくせに、あんまりピンとこないのです。

 アレンのドンを聴いてファンになったわけではありませんし…(な、なはは…じーちゃん、ごめんね;;;)

 そもそも《ドン・ジョヴァンニ》は幼い頃から繰り返し聴き続けているオペラでして、原体験としての父ちゃんの歌唱に始まり、その後はチェーザレ・シエピ様と、刷り込みが完了してしまっております。今更ニュータイプのドンを受け入れる余地はないので、大好きなオペラとは言いながら、正直に言えば、誰がドンをどう歌おうとあまり興味がないのですね。

 キモかったり、ドベタクソだったりすれば、そりゃまぁブツクサ言いますけれども、それなりのバリトン・バス歌手がそれなりに歌ってくれれば、それなりに楽しめちゃうのです。

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 アレンがドンを歌っているCDも好きですし、シュテキ~(*´Д`)!!なんて聴いていますが、「これで天下をとった」とはちょっと思えない、かな。私の中の理想のドンは、あくまでもシエピ様ですから。

 加えて、世に出回っているアレンの正規映像、ね。歌唱が絶不調なのは大目に見るとしても、なんなのでしょう、あのワケワカランなキモキャラは(゚益゚) ("ドラキュラ篇"と"狼男篇"ですからねぇ;;;)

 他の演目なら、ハマリ役であろうとミスキャストであろうと、それなりに納得のいく自然な演技をする人なのに、ドンだけはいけません。ぎこちないというか、作りすぎというか、大袈裟というか、イタイというか――。

 もちろん、いろんなドンがあっていいのですけど、少なくとも正規で出回っているアレンのドンは、私が彼に求めたものとあまりにかけ離れていましたもので、ちょっと――いや、かなり――ショックだったわけです。既にトラウマのレベルよ。

 なので、アレンの過去の情報を収集する際にも意図的にそれは避けてしまったりして…。

 けれども、どうしても目に飛び込んできてしまう、アレンのドン。
 彼の最後の《ドン・ジョヴァンニ》がいつだったのかは知らないのですが、さまざまなインタビューで「ドンジョ」「ドンジョ」と自慢げに――というか、未練がましく――発言しているのを読んでいるうちに、こちらも「無視しちゃって悪かったかなぁ」ってな罪悪感にかられてきましてですね(笑)

 今年2月にロンドンに遠征した際、サルダナさん繋がりであちらのファンの方々と交流する機会を持てたのですけど、皆さん「アレン」と聞くと一様に「ドン・ジョヴァンニ、観たことある?」って仰います。

 日本でも、'92年のロイヤル・オペラ来日時に《ドン・ジョヴァンニ》を歌っており、それなりに"ドンジョ歌い"として知られているとは思うのですが、ヨーロッパ、特に彼の母国イギリスでは(当然のことながら)扱いが大きく違っていた。日本では「ドンジョも歌った人の一人」という感じですが、あちらでは「アレンと言ったら"ドン"」、みたいな。日本と英国でのアレンに対する認識の差に今更ながら気付かされたわけです。

 日本では、アレンは既に過去の人。でも実際は、欧米ではまだまだ元気に舞台に立って、ちょこちょこと話題を提供してくれています。最新のCDでも、頑張ってドンジョ歌ってますし(笑) そういうことを少しでも日本の人に伝えたいという思いから、こういうブログや「まとめサイト」をやっているわけですし、だったら彼がイタタなまでに入れ込んだドン・ジョヴァンニについても、語ってやらねばなんねーべ…。

 というわけで、ようやく重い腰を上げてみようという気持ちになりつつあります(←まだエンジン全開ってわけでもないのヨ;;;)。

 何年かかるかわかりませんけど。ひょっとしたら数ヶ月で投げ出してしまうかもしれませんけど。アレンが追い求めた"ドン"の姿の断片を拾い集めていきますので、気長にお付き合いいただければ。

 イントロダクションにかえて、遅くしてファンとなった者の心情を吐露してみました。

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トーマス・アレンのドン・ジョヴァンニ -- '88 ロイヤル・オペラ
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コメント 6

ヴァランシエンヌ

私はしまさんとは逆に(前にも少し話したかもしれませんが)モーツァルトのダ・ポンテ3部作の中で、DGが一番とっつきにくかったのです。

ゴヒイキさんが「タイトルロールは憧れの役なんだ」とか言うし…で、仕方なく(こういうことばっかり^^;;;)、少しずつ馴染んで来たんですが、いくつかCDや映像を見聞きした結果、好きなドンの嗜好は、はっきりしましたね。

ずばり、私もシエピが一番だと思います。CDだけしか聴いてないけど、ギャウロフのも結構気に入っているので、やっぱり本格的、正統的な、重心が低いバスのDGが好きですね。
ゴヒイキさんに合わせたつもりではないんですが(ほんとですってば^^;)
こういう結果になってます。これについては近いうちに、私も何か書いてみますね。

でも、本来DGは貴族の役なので、バリトンが歌うのがまっとうだ…という説もあるそうですよ。
(レポレッロは従者だから、バスなんですって。フィガロと伯爵の関係もそうですものね)
アレンのDGは、幸か不幸か?!まだCDも映像も見聞きしてないので、しまさんの語りを楽しみにしてますo(^^)o
by ヴァランシエンヌ (2008-11-26 21:07) 

しま

ヴァランシエンヌさん>
こんばんは。
貴族であるドンジョはバリトンが歌うべき云々というのは、私もどこかで聞いたことがあります。従者=バスというのは初耳でしたが、面白いですね。モーツァルト時代にはそんな考え方があったんでしょうか。

私は(前のブログで書いたように思いますが)基本的にはドンはバリトンに歌ってもらいたい派なんです。でもなぜか理想はシエピ♪
バスなのに高音が痩せず、とてもまろやかな声音でしょう。私、昔はシエピのことをバリトンだと思い込んでいて、その後スパラフチーレとかを聴いてびっくり仰天しました(笑)

>幸か不幸か?!
ノーコメントにしておきます;;;
な~んて斜に構えているくせに、本人を目の前にすると「アナタのドンが最高です!!」なんてことになっちゃうんですけどネ~(笑)

>憧れの役
ヴィノ君が歌ったらどんなドンジョになるんでしょうね。是非とも聴いてみたいです。
アレンが初めてドンを歌ったのは今のヴィノ君の年齢くらいですし。
by しま (2008-11-26 23:22) 

Sardanapalus

>皆さん「アレン」と聞くと一様に「ドン・ジョヴァンニ、観たことある?」
イギリスでは正に「伝説の」ドン・ジョですから!(^^)今回アップしてくださった演出と次の演出(人気の演出でした)の10年以上に渡ってROHでドン・ジョを歌い続けていますからね。80年代90年代にROHでドン・ジョを見た人は皆アレンを見ていると言ってもいいくらいですもの。イギリス人のオペラファンに「ドン・ジョといえば?」ときけば間違いなく「アレン!」と答えると思いますよ~。正規の映像で残っているものがしまさんの好みに合わないのは残念なことですが、ROHのJohannes Schaaf演出の映像がどこかに転がっていないですかね?私も興味あるんですよ、声の調子が良くて、年寄りじゃない、バリトンのジョヴァンニ(笑)

シエピ様は別格ですが、私もドンはバリトンに歌ってほしい派です。レポレッロと声の差があるほうが楽しいですし、高音に伸びと艶があるほうが貴族っぽいと思います。なぜか最近はバリトン歌手の方が演技上手いですしね(^^)そんな私が今後聴いてみたいバスのドンは、ずばりヴィノグラドフだったりします。あの顔と声のギャップがどう出るか、なんてところも楽しみなんですけど、予定はまだ先でしょうか?>ヴァラリンさん
by Sardanapalus (2008-11-30 11:12) 

ヴァランシエンヌ

しまさん、サルダナさん:

>ドンはバリトンに歌ってもらいたい派

ありゃ(笑)分が悪いわ(^^ゞ
確かに声の対比という意味では、バリトンが歌った方がはっきりしますよね。
単に好みの問題と割り切ってしまってもいいんですが(笑)近いうちに、私も自分のところで書いてみますね。

>アレンが初めてドンを歌ったのは今のヴィノ君の年齢くらいですし
>予定はまだ先でしょうか?

私も「勿体つけてないで、はやくぅ~~」と言いたいのを、ぐっとこらえているんですが(^^ゞ
やっとレポレッロを歌い始めたところですし、たぶんまだ先です(笑)

まあ、待つのも楽しみのうちですし、歌うことが決まったら、それこそほおっておいても?皆さんが唖然とするほど大騒ぎしますから、気長に待ってて下さい(^^ゞ
by ヴァランシエンヌ (2008-11-30 22:03) 

しま

Sardanapalusさん>
そんなに有名なら、なぜ映像の一つでも正規で商品化しなかったのかと小一時間…(´・ω・`)ブツブツ

来日した時はヨハネス・シャーフの演出でしたよね。当時、雑誌か何かで寸評を読んで、「ワタシの理想の"ドン像"を壊しやがってー」とムカついたことを思い出しました。
いやはや、勿体無い。当時はアレンなんて全然興味なかったのですよ。モロにシエピを引きずっていた頃でした。(おまけにクラシックなんて聴いてなかったw)

>声の調子が良くて、年寄りじゃない、バリトンのジョヴァンニ

ははは;;; 
てか、サルダナさんが羨ましい。サイモンの納得のいくドンジョを実演でご覧になっているんですから~。
by しま (2008-11-30 23:45) 

しま

ヴァランシエンヌさん>

>分が悪いわ(^^ゞ
フフフ…。サルダナさんもワタシも、贔屓がバリトン。しかもドンジョ歌いですからねぇ♪
でも、ちょっと前の有名指揮者さんたちは、けっこうバスで録音残してません? 最近はわりとバリトンが復活してきたような気もしますけど。時代によってドンジョに求めるものも変わるのかな。

>ヴィノ君のドンジョ
サルダナさんも仰っていますが、あの顔と声のギャップが魅力ですよね。
以前書いたこちらの記事で
http://benjoshua.blog64.fc2.com/blog-entry-70.html
「新しいドンジョ像はなかなか生まれないんじゃ…」みたいなことを言いましたけど、ヴィノ君のキャラならもしかして、その壁を打ち破るんじゃないかって、ちょっと期待してるんです♪

もちろん、生真面目なレポレッロも素敵と思います。まだ若いし、気長にお待ちしますよ。
出世魚コースを見守るのも楽しいですね。アレンのレポレッロ(というか、カタログの歌)はアリア集では聴けますけど…。
by しま (2008-11-30 23:59) 

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