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聴きました!! -- アレンのファニナル in ROH 《ばらの騎士》 [アレンの録音・映像鑑賞記]

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 NYメトロポリタン歌劇場(Met)に引き続いて、こんどは英国ロイヤル・オペラ(ROH)での《ばらの騎士》です。6/5(土)18:00から(日本時間では6/6、02:00)、BBC Radio3で放送されました。

 「ああ~アレンのファースト ファニナルを聞き逃した~ッ!! ヽ(`Д´)ノ」という方、どうぞご安心くださいませ。
 少しでも臨場感を味わいたい私は真夜中にPCの前に怪しく座り込みましたが、上記放送はBBCのiPlayerで7日間、いつでも視聴可能です。(⇒こちらをクリック
 こういうサービスがあるから、BBCはありがたいですね。
 私も1幕の録音が少し欠けてしまいましたので、今週中に録り直しするつもりです。

 そうそう。今回放送された《ばらの騎士》。
 サー・トーマス・アレン(Sir Thomas Allen)の50役@ROH達成!! という記念すべき公演でもあります。
 当時の批評をこちらの記事にまとめてありますので、ぜひまたご覧になってください。

roh der rosenkavalier1-1.jpg iPlayerで聴けるうちは、恒例の音源アップはちょっと自粛することにして...。
 ざっと感想だけ、記録します。

 どうしても先に聴いたMetバージョンと比較してしまいます(時系列的には、Metのほうが後なのですけど)。重低音がスカスカな音質の影響もあるのでしょうが、全体的に地味地味な印象。

 キャストのネームヴァリューの差も聴く耳に影響しちゃっていたのかもしれません。
 ROHの元帥夫人はソイレ・イソコスキ(oile Isokoski)、オクタヴィアンはソフィー・コッホ(Sophie Koch)。
 コッホはともかくとして、イソコスキは初めてでしたし。

 かたやMetでは、フレミングの元帥夫人にグレアムのオクタヴィアン。特にグレアムの声に私、完全にヤラレちまっています。
 アレンがファニナルを歌っているという点(これ重要!!)でも合格だし、Metバージョンが理想的な《ばら》のキャスティングとしての刷り込みが完了しています。きちんと聴く前からROHバージョンの分が悪いのはもう致し方なかったと思います。

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roh der rosenkavalier2-2.jpg 実際、イソコスキもコッホも主役としてのインパクトに欠けていたと思います。

 イソコスキは「きちんと歌えてはいる」のでしょうけど、モーツァルトならこれでいいんでしょうけど、R・シュトラウスのヒロインを演じるのであればもっと女性としてのリアルさが欲しいところ。

 コッホは逆に、「女性が演じている」というのがバレバレでした。歌唱の線が細すぎるのです。
 オクタヴィアンは初々しい少年ではありますけど、ケルビーノのような思春期のガキではなく、もっと成熟した青年として演じるべし!!というのが私の持論でありまして。

 まぁなかなかそういうふうに歌えるメゾはいないのですが、オバさんパワーがうまく発揮されたからか、スーザン・グレアムがそれをやってくれたと思っています。彼女の株価が鰻上りに上がっているのはそういう理由があるからなんです。

 見た目ではコッホは理想的なオクタヴィアンではありますが、歌唱としてはどうなんでしょう? 悪いとは言いませんが…。

 そんな中、ゾフィーのルーシー・クロウは健闘していたと思います。
 しかし、声がオバさんっぽいですね…。聴いているうちに気にならなくはなるのですが、第一声は(もっと娘役らしい声を期待していたので)ちょっとギョッとしました。

roh der rosenkavalier2-3.jpg ピーター・ローズは、歌唱を聴く限りでは愛嬌があって下品すぎず、憎めないセクハラおじさんを好演していたと思います。模範的なオックス男爵といったところでしょうか。

 Metでオックスを演じたジグムンドソンは、ちょっと野卑なところがありましたので。体格が大きすぎたからでしょうか? ローズのほうが小物っぽい感じがしてとっつきやすいイメージです。

 ただ、バスにしては高音がリリックすぎるローズの声は、あまり好みではありません。1幕の元帥夫人の部屋の外で召使いとやいやい言い合っている声が、「バリトンか?」と疑ったくらい軽い音色で、ちょっと違和感。
 それでいて、low C音などもちゃんと…というか、ギリで…聴かせるので、まぁそこはすばらしくバス歌手なんですが、高音域と低音域でこうも音色が変わるのでは聴いていてちと疲れます。

 ローズもコッホと同じく、キャラ的にはオックスでいいけど、声としては理想的ではない。
 モーツァルトのバス役で例えるなら、レポレッロならOKだけど、ザラストロは歌わせたくないと思わせる声なんですね。

roh der rosenkavalier2-5.jpg と、ここまで辛口で進めてきましたが、トーマス・アレンのファニナルについては、MetよりもROHのほうがよかったです。

 な~んて言っても、実はどちらもたいして変わりません(笑)

 ROHのほうが記念すべき初役ですし、ホームグラウンドですし、ファニナルの衣装も演出もMetに比べてやや派手め…ということで、より気合いが入っていたという程度でして、どちらも特に失敗はナシ。歌唱プランもほぼ同じです。

 さすがのアレンも緊張していたのかな、2幕の頭、“Ein ernster Tag~!!”の部分が、微妙に上ずって聞こえましたが、"has any other singer ever made quite so much of his first phrase?"とのお褒めの言葉は納得がいきました。

 ほんと、アレンの最新の声を聴くたびに「おじーちゃん声になったなぁ…」とは思うのですが、そして今回も同じように思い、微妙に寂しかったのですが、だからこそ、その年季の入った声で聴く2幕冒頭はとても感動するのです。

 その感動のフレーズを、↑の写真のようなトンデモナイ扮装でお歌いになっているのですけどね…(爆)

 声の演技もMetのファニナルよりもオーバーで、面白がらせようとしているのが伝わりますから、この衣装の効果が大きいものと思われます。

 出番の短い小さな役ですが、自らを"コメディアン"と称するアレンのこと。《ばら》のファニナルは、アレンのキャリア末期の大切な役として、この先も何回か歌う機会があるかもしれません。


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Strauss's Der Rosenkavalier
From the Royal Opera House, Covent Garden, Presented by Christopher Cook

Octavian ..... Sophie Koch (mezzo-soprano)
Marschallin ..... Soile Isokoski (soprano)
Sophie ..... Lucy Crowe (soprano)
Baron Ochs ..... Peter Rose (bass)
Herr von Faninal ..... Thomas Allen (bass)
Valzacchi ..... Graham Clark (tenor)
Annina ..... Leah-Marian Jones (mezzo-soprano)
Marianne Leitmetzerin ..... Elaine McKrill (soprano)
Notary ..... Lynton Black (bass-baritone)
Italian Singer ..... Wookyung Kim (tenor)
Noble Widow ..... Glenys Groves (soprano)
Noble Orphans ..... Tamsin Coombs, Deborah Peake-Jones (sopranos),
Andrea Hazell (mezzo-soprano)
Major Domo to Marschallin .....Robert Anthony Gardiner (tenor)
Major Domo to Faninal ..... Steven Ebel (tenor)
Doctor ..... Alan Duffield (tenor)
Inkeeper ..... Robert Worle (tenor)
Police Commissioner ..... Jeremy White (bass)
Kirill Petrenko ..... Conductor
Royal Opera Chorus
Orchestra of the Royal Opera House.

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関連記事リンク

《ばらの騎士》@METライブビューイング
聴きました!! -- アレンのファニナル in Met 《ばらの騎士》
50役 記録達成!! -- アレンのファニナル in 《ばらの騎士》@ROH
父ちゃん役です -- 《ばらの騎士》@英国ロイヤルオペラ


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clevelander

こうして、ROHとMetの公演を聴き比べることが出来るのもネットの恩恵ですよね。
そして、その恩恵を受けながら今回はメンデルスゾーンの"真夏の夜の夢"です。えっ?ブリテンのオペラでもないのに"真夏の夜の夢"でなぜアレンが?と思われるかもしれませんが、普段あまり演奏する機会のない語り付きの全曲で、その語りになんとアレンが出演しているのです。
ハイティンク指揮シカゴ響による昨年の演奏会で、先週から全米各局で放送中です。
語り付きの演奏は、以前TVで中井貴恵さんの語りを観た記憶があるくらいなんですが、CDを調べてみるとやっぱり少ないですね。
小澤/ボストンのジュディ・デンチと吉永小百合。
マズア/ライプツィヒ・ゲヴァントハウスのフリードヘルム・エバール。
アバド/ベルリン・フィルのケネス・ブラナーとバーバラ・スコーヴァ。
アーノンクール/ヨーロッパ室内管のクリストフ・バンツァー。
…って、皆俳優さんじゃないですか!
やっぱりこの語りには芝居気が無いとつまらないということなのでしょう。
そこでアレン、適役だと思います!
バックのハイティンクは巨匠然とした大変恰幅の良い演奏でとてもよかったです。

この演奏はCSOのサイトでストリーミング配信され、リリースは6/10となっていますが、今現在、解説しか聴かれません。
http://cso.org/ListenAndWatch/Details.aspx?id=12026

放送も始まったので、まもなく配信が始まると思います。

***
先週放送の録音も置いておきます。
http://xfs.jp/MdhKf
by clevelander (2010-06-21 23:35) 

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