望月哲也 Wanderer vol.3 @銀座王子ホール [コンサート/リサイタル]
お久しぶりの更新は、テノール望月哲也のリサイタルの感想です。
望月さんを聴いたのはこれで3回目でしょうかね。
数年前のリサイタルが1回目。いつだったか覚えていません(苦笑)。人の記憶はアテにならないから、ブログに記録しておくべきですよねぇ・・。
2回目は、ハイ、ちゃんと記録しております。二期会・日生劇場の《カプリッチョ》。
作曲家フラマン役で、出演者の中で最も印象に残ったものです。
その後は私もいろいろあって、望月さんの活躍を間近で見ることはなかったんですけど、私の休息中になんかますます有名なお方になっておられたようで・・(笑) 今年のNHKニューイヤーではボエームのロドルフォだし(仕事で観れなかったんですけど)、新国の《さまよえるオランダ人》では舵手役で出演予定です。
上り調子の歌手さんですから、キャリアの過程はちゃんと押さえておくべきだと思いますので、友人が誘ってくれたのを幸いに有給をもらって行ってきました。
バレンタインデーのリサイタルということで、第一部はベートーヴェンとシューベルトの歌曲、第二部は「愛」にちなんだフランスオペラのアリアでした。
リートとオペラ・アリア。
私は歌曲は苦手なんで、どちらかというと第二部のほうを期待していたんですが・・
自分でも驚いたことに、第一部のベートーヴェンで涙ボロボロになってしまったんです!
自他ともに認めるバリトン・フェチが、テノールさんの歌曲に涙するなんて・・!!
生アレンの歌曲でも、じ~んとはしたけど涙なんか出なかったのに・・!!
と、ちょっとフクザツな(笑)心境にさせられた今回のプログラムは以下の通りです。
----------------------------
ベートーヴェン: アデライーデ Op.46
:連作歌曲集 「遥かなる恋人に」 Op.98
:遠くからの歌 WoO.137
:きみを愛する WoO.123
シューベルト:「ゲーテ歌曲集」 より
野ばら D257/憧れやまぬ恋 D138/
恋しい人のそばに D162/秘密 D719/
最初の喪失 D226/月に寄せて D259/
ガニュメート D544
********** 休憩 **********
<フランスオペラにおける愛のかたち>
~恋の芽生えと愛への昇華~
グノー:「ファウスト」より この清らかな住まい
~恋焦がれる青年の愛~
グノー:「ロメオとジュリエット」より 太陽よ、のぼれ
~忘れがたき愛~
ビゼー:「真珠採り」より 耳に残るはきみの歌声
~拒絶されし愛~
ビゼー:「カルメン」より おまえが投げたこの花を(花の歌)
~喪われし愛(訣れ)~
グルック:「オルフェとエウリディース」より
エウリディースを失って(1774年パリ初演版)
~断ち切りがたき愛~
マスネ:「マノン」より ああ、消え失せろ! 優しい幻影よ!
-------------------------------------------------------
まぁ、私が泣けてしまった理由は、このプログラムを見れば一目瞭然。
「アデライーデ」と「遥かなる恋人に」。
トーマス・アレンがウィグモア・ホールで同じものを歌った、ランチタイム・コンサートのライブCDを思い出したからなんです。(←結局アレンの手柄になります。ほんと、ゴメン!!)
アレンのベートーヴェンもほんと、泣ける。
実際に涙は出なかったですけど。
でもそれだけじゃなくて・・。
盲目的にアレンの音源をコレクションして、挙句の果てにご本人の追っかけまでして、アレンの声とオペラに没頭していたあの頃の自分はなんて幸せだったんだろうと、いろいろな感情が一気に押し寄せてきてしまった。
ここしばらくの間、心の奥に閉じ込めてきたものが鷲づかみされ引きずり出されたような感覚でした。
生きていくのって基本的に辛い。もちろん楽しいこともいっぱいあるけれど、軟弱な私はどうしても残酷な現実から目をそむけて夢の中に逃げ込もうとする傾向があります。眠ったまま死を迎えられたらどんなに良いかと思うこともしばしば。
そんな私に幸せな夢をたっぷり見せてくれたのがアレンで・・。
夢と現実の違いをはっきりと突きつけてきたのが今日の望月さんの歌唱だったのでしょう。
歌曲とオペラ・アリアとの違いもそこにあるのだと思います。
歌曲は“真実”であり、オペラは“虚構”。
そして私は、オペラが好きです。
特に“虚構性”の高い、「あり得ない~!!」なヴェルディに救いを求める(笑)
ま、それはそれとして・・。
アレンの湿った声バリトン声で聴きなれた歌曲を、望月さんの透明感のあるテノールで聴くのはなかなか新鮮でよかったです。
やはりテノールですとキーが高いので、とたんに華やかに聞こえますね。
アレンは全体的に優しくなまめかしく、ビブラートをたっぷりきかせて歌っていましたが、望月さんはビブラートは控えめに、そして力強く。
こういう歌唱の差は解釈の違いから生じるんでしょうが、歌手の年令もあるなと思ったり。
まだ30代の望月さんの歌唱は、じーさんアレンのようなエロさはなく、一途で真っ直ぐで素敵でした。
そして第二部のオペラ・アリア。
前半のリートですっかり心が清らかになっていた私ですが、いけませんねぇ、ピアノが「この清らかな住まい」の冒頭を奏で始めたとたんに「ヒャッホウ!!」なお祭り気分になってしまいました。
望月さんもノリノリ大熱唱(笑)
やはりこの方はオペラ歌手です。ナヨっちい歌曲も悪くはないけど、この人の真価が味わえるのはコテコテなオペラの舞台でしょう。
ロメオとジュリエットもハイテンションで良かったわ~!!
そして《真珠採り》の「耳に残るはきみの歌声」ですが、実はコレ、私のリクエストで歌っていただけたのですよ(*´艸`*) キャッ
この歌を初めて聴いたのはニコライ・ゲッダの録音。そのせいでゲッダのクリーミーな声音が私のスタンダードになってはいますが、本来はもっと硬質で透き通った声で歌われるべき。それにはアジア人、特に日本人テノールがぴったりなんじゃないかと。
ぜひ望月さんの声で聴きたいと思っていましたので、望みが叶って大満足です。
ちなみに、最高音の“Folle ivresse,”の部分はソトヴォーチェかフォルテか個性が分かれると思いますが、望月さんはとても力強いほうでした。
ゲッダはこれみよがしにソトヴォーチェですが(笑)
YouTubeで検索したら、ドミンゴなんかはグワーッとフォルテで押し上げていますね。
アルフレード・クラウスやビヨ様ことユッシ・ビヨルリンクもピーンと張ったフォルテで歌っていたのはちょっと意外でした。
二人とも鼻歌でいけると思っていたので(笑)
あと良いなと持ったのは、グルックの《オルフェとエウリディース》。
望月さんは宗教曲も歌うようなので、グルックのような古典によく合う声だなと思いました。
フランスづくしのオペラ・アリア。
アンコールでは、ベートーヴェンとシューマンに続いて、《ウェルテル》の“Pourquoi me reveiller”、いわゆる「オシアンの歌」を。
これがまたびっくりするほど良かった!
望月哲也はオペラの人だと確信したリサイタル。普段はドイツやイタリアものが多いそうですが、「意外とフランスオペラも似合うのでは?と、ちょっと期待したくなっちゃったのでした。
もっちぃとの記念写真。
ファンの皆さんを押しのけて、恐れ多いことにこんな良いポジションです(笑)
望月さんはフライヤーの写真はちょっとアレなんですが(失礼)、実物はおヒゲを生やして精悍な感じ。お髪もふさふさで、若き日のグロ様を髣髴とさせます。
望月さんを聴いたのはこれで3回目でしょうかね。
数年前のリサイタルが1回目。いつだったか覚えていません(苦笑)。人の記憶はアテにならないから、ブログに記録しておくべきですよねぇ・・。
2回目は、ハイ、ちゃんと記録しております。二期会・日生劇場の《カプリッチョ》。
作曲家フラマン役で、出演者の中で最も印象に残ったものです。
その後は私もいろいろあって、望月さんの活躍を間近で見ることはなかったんですけど、私の休息中になんかますます有名なお方になっておられたようで・・(笑) 今年のNHKニューイヤーではボエームのロドルフォだし(仕事で観れなかったんですけど)、新国の《さまよえるオランダ人》では舵手役で出演予定です。
上り調子の歌手さんですから、キャリアの過程はちゃんと押さえておくべきだと思いますので、友人が誘ってくれたのを幸いに有給をもらって行ってきました。
バレンタインデーのリサイタルということで、第一部はベートーヴェンとシューベルトの歌曲、第二部は「愛」にちなんだフランスオペラのアリアでした。
リートとオペラ・アリア。
私は歌曲は苦手なんで、どちらかというと第二部のほうを期待していたんですが・・
自分でも驚いたことに、第一部のベートーヴェンで涙ボロボロになってしまったんです!
自他ともに認めるバリトン・フェチが、テノールさんの歌曲に涙するなんて・・!!
生アレンの歌曲でも、じ~んとはしたけど涙なんか出なかったのに・・!!
と、ちょっとフクザツな(笑)心境にさせられた今回のプログラムは以下の通りです。
----------------------------
ベートーヴェン: アデライーデ Op.46
:連作歌曲集 「遥かなる恋人に」 Op.98
:遠くからの歌 WoO.137
:きみを愛する WoO.123
シューベルト:「ゲーテ歌曲集」 より
野ばら D257/憧れやまぬ恋 D138/
恋しい人のそばに D162/秘密 D719/
最初の喪失 D226/月に寄せて D259/
ガニュメート D544
********** 休憩 **********
<フランスオペラにおける愛のかたち>
~恋の芽生えと愛への昇華~
グノー:「ファウスト」より この清らかな住まい
~恋焦がれる青年の愛~
グノー:「ロメオとジュリエット」より 太陽よ、のぼれ
~忘れがたき愛~
ビゼー:「真珠採り」より 耳に残るはきみの歌声
~拒絶されし愛~
ビゼー:「カルメン」より おまえが投げたこの花を(花の歌)
~喪われし愛(訣れ)~
グルック:「オルフェとエウリディース」より
エウリディースを失って(1774年パリ初演版)
~断ち切りがたき愛~
マスネ:「マノン」より ああ、消え失せろ! 優しい幻影よ!
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まぁ、私が泣けてしまった理由は、このプログラムを見れば一目瞭然。
「アデライーデ」と「遥かなる恋人に」。
トーマス・アレンがウィグモア・ホールで同じものを歌った、ランチタイム・コンサートのライブCDを思い出したからなんです。(←結局アレンの手柄になります。ほんと、ゴメン!!)
アレンのベートーヴェンもほんと、泣ける。
実際に涙は出なかったですけど。
でもそれだけじゃなくて・・。
盲目的にアレンの音源をコレクションして、挙句の果てにご本人の追っかけまでして、アレンの声とオペラに没頭していたあの頃の自分はなんて幸せだったんだろうと、いろいろな感情が一気に押し寄せてきてしまった。
ここしばらくの間、心の奥に閉じ込めてきたものが鷲づかみされ引きずり出されたような感覚でした。
生きていくのって基本的に辛い。もちろん楽しいこともいっぱいあるけれど、軟弱な私はどうしても残酷な現実から目をそむけて夢の中に逃げ込もうとする傾向があります。眠ったまま死を迎えられたらどんなに良いかと思うこともしばしば。
そんな私に幸せな夢をたっぷり見せてくれたのがアレンで・・。
夢と現実の違いをはっきりと突きつけてきたのが今日の望月さんの歌唱だったのでしょう。
歌曲とオペラ・アリアとの違いもそこにあるのだと思います。
歌曲は“真実”であり、オペラは“虚構”。
そして私は、オペラが好きです。
特に“虚構性”の高い、「あり得ない~!!」なヴェルディに救いを求める(笑)
ま、それはそれとして・・。
アレンの湿った声バリトン声で聴きなれた歌曲を、望月さんの透明感のあるテノールで聴くのはなかなか新鮮でよかったです。
やはりテノールですとキーが高いので、とたんに華やかに聞こえますね。
アレンは全体的に優しくなまめかしく、ビブラートをたっぷりきかせて歌っていましたが、望月さんはビブラートは控えめに、そして力強く。
こういう歌唱の差は解釈の違いから生じるんでしょうが、歌手の年令もあるなと思ったり。
まだ30代の望月さんの歌唱は、
そして第二部のオペラ・アリア。
前半のリートですっかり心が清らかになっていた私ですが、いけませんねぇ、ピアノが「この清らかな住まい」の冒頭を奏で始めたとたんに「ヒャッホウ!!」なお祭り気分になってしまいました。
望月さんもノリノリ大熱唱(笑)
やはりこの方はオペラ歌手です。ナヨっちい歌曲も悪くはないけど、この人の真価が味わえるのはコテコテなオペラの舞台でしょう。
ロメオとジュリエットもハイテンションで良かったわ~!!
そして《真珠採り》の「耳に残るはきみの歌声」ですが、実はコレ、私のリクエストで歌っていただけたのですよ(*´艸`*) キャッ
この歌を初めて聴いたのはニコライ・ゲッダの録音。そのせいでゲッダのクリーミーな声音が私のスタンダードになってはいますが、本来はもっと硬質で透き通った声で歌われるべき。それにはアジア人、特に日本人テノールがぴったりなんじゃないかと。
ぜひ望月さんの声で聴きたいと思っていましたので、望みが叶って大満足です。
ちなみに、最高音の“Folle ivresse,”の部分はソトヴォーチェかフォルテか個性が分かれると思いますが、望月さんはとても力強いほうでした。
ゲッダはこれみよがしにソトヴォーチェですが(笑)
YouTubeで検索したら、ドミンゴなんかはグワーッとフォルテで押し上げていますね。
アルフレード・クラウスやビヨ様ことユッシ・ビヨルリンクもピーンと張ったフォルテで歌っていたのはちょっと意外でした。
二人とも鼻歌でいけると思っていたので(笑)
あと良いなと持ったのは、グルックの《オルフェとエウリディース》。
望月さんは宗教曲も歌うようなので、グルックのような古典によく合う声だなと思いました。
フランスづくしのオペラ・アリア。
アンコールでは、ベートーヴェンとシューマンに続いて、《ウェルテル》の“Pourquoi me reveiller”、いわゆる「オシアンの歌」を。
これがまたびっくりするほど良かった!
望月哲也はオペラの人だと確信したリサイタル。普段はドイツやイタリアものが多いそうですが、「意外とフランスオペラも似合うのでは?と、ちょっと期待したくなっちゃったのでした。
もっちぃとの記念写真。
ファンの皆さんを押しのけて、恐れ多いことにこんな良いポジションです(笑)
望月さんはフライヤーの写真はちょっとアレなんですが(失礼)、実物はおヒゲを生やして精悍な感じ。お髪もふさふさで、若き日のグロ様を髣髴とさせます。
タグ:望月哲也
2012-02-15 01:28
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コメント(5)
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ひさびさのアップ拝見しました!数年前のリサイタル…ハクジュホールだったよね?あの日もヴァレンタインデーでした(笑)
コレ、ご本人読まれたら感激すると思うよ(*^^*)
…ってコトで、コピペ彼に送っても良いかしら!?
私はオランダ人は3月20日(火祝)にまきのちゃんと行くよ♪
良かったらご一緒しませんか?
by ゆっこです (2012-02-26 13:12)
■ゆっこちゃん
読んでくれてありがとう! そしてリサイタルに誘ってくれてありがとね!
>コピペ彼に送っても良いかしら!?
良いですよ~。誰でも読めるwebに公開しているものなので。
でもなんだか恥ずかしいですね・・
プロの目には全然検討違いなポイントで盛り上がってるでしょうから。
>オランダ人
あ、残念! 私は別の日のチケットを買ってしまったのです。
また機会があったらご一緒しましょう!
by しま (2012-02-26 22:30)
オランダ人ザンネン!
また一緒に着物来てオペラしたいです♪
もっちぃ関係コンサートはまたお誘いしますねぇ(^^)
by ゆっこ (2012-02-27 08:56)
来て×→着て○ (笑)
by ゆっこ (2012-02-27 09:00)
■ゆっこちゃん
そういや、最近着物着てませんね。
今度はもっちぃのコンサートに着物でいかが?
by しま (2012-02-27 22:35)