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エルネスト・ブラン/Ernest Blanc (2010.12.22 逝去) 追悼盤を購入 [オペラの話題]

ernestblancCD.jpg ブログ休止中にもオペラ界ではいろいろな出来事がありましたが、この『毎日オペラ』で最も大きく取り上げるべきは、エルネスト・ブラン(Ernest Blanc)(*1)が亡くなられたことでしょう。

 クリスマス間近の2010年12月22日、生まれ故郷のプロヴァンス、サナリー・シュルメールにて。
 享年87才でした。

 1年以上も前のことですので今更記事にするのもどうかと思ったのですが、いまだに“Ernest Blanc”でググると日本語サイトの上位に私のブログが表示されてしまいますので、責任をとって(?)最低限の情報をまとめておこうと思います。

 追悼記事はこちら“Ernest Blanc s'est tu pour toujours ”(『エルネスト・ブラン永久に逝く』とでも訳すのかな?)を参照。

 フランス語が全くわかりませんので翻訳サイトによる怪しい訳文を読み解くしかないのですが、ブランもピーター・グロソップ同じく労働者出身。トゥーロンの軍需工場で働いていたそうです。

 それからのキャリアは長く、70才近くまで歌っていたとか? 引退後はしばらくパリで後進の指導にあたっていたようですね。

 ブランはフランス人だてらにバイロイトに2度も招待され、《ローエングリン》のテルラムントを歌いました。ヴォータンのオファーもあったそうですが、そちらは「私の声はふさわしくない」と断ったようです。

 ワーグナー歌いにしてヴェルディ・バリトンであり、ご本家のフランス・オペラでは右に出る者なし。代表的な当たり役、《カルメン》のエスカミーリョについては、そのエレガントな歌いっぷりがこの追悼記事でも言及されています。

 その幅広いレパートリーを彷彿とさせる追悼盤。本日、山野楽器で見つけてホクホク買って参りました。
 Amazonのよか¥500も安かったの~(*´∨`)

EB-1.jpg CDジャケットの舞台写真は《タンホイザー》のヴォルフラムでしょうか。

 こーゆー舞台衣装のオペラを私は「ネグリジェ演目」と呼んでいるのですが、そのネグリジェと、微妙に小首を傾げた仕草と、いかにも南仏人っぽいキラキラお目目・・。ちょっと…いや、かなり引く…。

 やはりこのお方だけは、ワタクシ、本当に本当にそのセクシーなお声に一耳惚れをしたのであって、決して外見に惹かれたのではないワ~と断言できるのですけど(つまり、好みじゃないと言いたいんですが;;;)

 久しぶりにじっくりとブラン先生の“デレカント”歌唱を聞きながらこのお写真を眺めていると、結局「声が好きなら何でもイイ!!」という気がしてきますね(つまり、やっぱりカッコいい~!!と言いたいわけです;;;)

 まぁお顔のことはさておき、肝心の中身の感想です。

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blancbannen.jpg ジャケ裏をざっと見たところでは、《セヴィリヤの理髪師》、《エロイアード》、《リゴレット》、《真珠採り》、《ローエングリン》、《タンホイザー》、《清教徒》、《タイス》、《ドン・ジョヴァンニ》、《トーリードのイフジェニー》など。

 EMIのオムニバス集“Le Chant Francais1948-1965”におおむね収録されているタイトルですし、スタジオ録音の全曲盤で出ているものもあるし、お仲間から頂いた貴重な音源も持ってるし、「どれも知ってるよ」ってな感じで。あちこちに散らばったブランの歌が一枚に集まって、聴くのが楽になるな~くらいの気持ちで購入したのですが。

 実際に聴いてみて、あっとびっくり。
 貴重なライブ録音からの抜粋が結構ある!! つまり、お宝CDってわけです。

 《エロイアーデ》や《ローエングリン》は既に出ているライブ版と同じようですけど。
 《セヴィリヤの理髪師》はライブな上にフランス語。同じくフランス語版《リゴレット》は、「あのおいぼれめ,俺を呪いやがった」のスパラフチーレが去った後のシーンを拍手喝采の音付きで聴けるのです!

 《タンホイザー》もフランス語版で、夕星の歌の冒頭部分の収録です。

 なんだかんだでブランの録音はたくさん所持しているのですが、このCDでお初に耳にしたのはサン=サーンスの《ヘンリー八世》とグノーの《ミレイユ》。
 残念ながらどちらの作品も知らないのですが、これをきっかけに聴く機会があればいいと思います。

 オイシイところでは、インタビューなんでしょうか、ブランのバイロイトでの思い出を語っている音源が収録されています。
 歌唱ではあんなに甘くセクシーな声のブラン先生の地声が意外とダミ声ってのが面白い。

 何を仰っているのか全然わからないのが残念です。どなたかフランス語に堪能な方、いらっしゃいましたらぜひ日本語に書き起こしてくださいませ。(ワタシのファン道は皆様の生温かい励ましと通報、施しによって成り立っております)

 以前にご紹介したオペレッタ《コルヌヴィユの鐘》CDでもブランのセリフが入っており、そのオッサン臭いダミ声に「は(*゚Д゚)? 誰コレ?」となったものです(笑)

 こういうギャップもオペラ歌手のファンを極める中でのひとつの楽しみかもしれないですね。

b-toreador2.jpg エルネスト・ブランは、短い私のオペラ愛好暦で最も大切な歌手です。

 それまで“音楽”としてしかオペラを聴いていなかった私に「歌手で味わう」という醍醐味に目覚めさせてくれたのがブランでした。

 抜粋版で初めてブランの"闘牛士の歌"を聴いた時の衝撃は生涯忘れることはないでしょう。
 (←のの画像をクリックすると、YouTubeでブランの闘牛士の歌フルバージョンを聴けます)

 神は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 創世記第1章第3節

 若草のように青く、上質な葡萄酒のように成熟したブランの歌声は、私の人生を甦らせた光でした。

 2008年に亡くなったピーター・グロソップの時も思ったことですが、エルネスト・ブランもまた、私が長じた時には既に現役を退いていた人です。

 しかも日本ではそれほど知られていたわけでもないフランス人歌手。
 私もフランスオペラに馴染みはないし、ワーグナーなんて大の苦手な似非ヴェルディアンだし。大昔のフランス人が歌うフランス語のヴェルディなんて、「音楽で」オペラを聴いていただけなら絶対にブランという歌手には辿りつかなかったでしょう。

 ブランとの出会いは“はずみ”の奇跡で、さらにインターネットが発達した今の時代に出会ったことが、単なる“はずみ”を不可避の経験にまで押し上げてくれた。
 その幸運を感謝せずにはいられません。

 彼の貴重な録音、美しい歌声が、この先も永久にオペラ界の歴史の遺産として受け継がれていきますように・・。




 オマケのYouTubeは、このCDにも収録されている《タンホイザー》の夕星の歌です。

 以前はブランのデッカイ吼え声やエロっぽいデレカント歌唱にドキドキしていましたが、最近はこういう咽び泣くようなソットヴォーチェや包み込むような優しい低音が好き・・。

エルネスト・ブラン(Ernest Blanc)(*1)
 「Blanc」はフランス語で「ブラン」と読みますが、初めて手に取ったブランのCDには名前が「ブランク」と記載されており、その他のCDでも同じでしたので、私もそう呼びならわしてきました。今回、この追悼盤(?)の置いてあった山野楽器では「ブラン」と表示されていましたので、今後はフランス語読みに統一することにしました。

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関連記事リンク
オペラ・コミーク《コルヌヴィユの鐘》 -- ブランク先生の青春時代
【デレカント唱法】/歌唱用語
(エルネスト・ブランの個性的な歌い癖について。試聴ファイル多数あり)


※つぶやき フランス語の記事を翻訳サイトで英語にしたら、ブランの名前までが「アーネスト・ホワイト」さんと訳されていて、なんだか別人のようで笑えました。
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コメント 10

Basilio

これはほんとに仏国歌手ボックスとおなじぐらい宝物ですよね!普通だったら絶対入っていない渋い演目も入ってますし(音は悪いけど苦笑)

あとは彼のロドリーゴとスカルピアが発掘されるのを待つばかりでしょうか・・・?笑
by Basilio (2012-03-02 08:07) 

しま

■Basilioさん
コメントありがとうございます。
本当にお宝ですよね!! あるならもっと早く出して欲しかったのに~。
亡くなったタイミングのほうが売れるんでしょうね。

>彼のロドリーゴとスカルピア
あるならぜひ聴きたいです。このCDが出たのなら、ロドリーゴもスカルピアもどこかに存在しているんじゃ・・?と思ってしまいます(笑)
by しま (2012-03-02 23:59) 

Basilio

ですよね!財宝がざくざく出てくるんじゃないかとw

あるいはあの追悼盤にあった『アンリ8世』と『ミレイユ』の全曲とか笑。
by Basilio (2012-03-03 09:05) 

しま

■Basilioさん
>『アンリ8世』と『ミレイユ』の全曲
おそらくブランじゃないと聴かないだろう演目ですから、ぜひともお願いしたいです!

>アンリ
そっか、フラ語だからHは発音しないのねw
by しま (2012-03-03 17:27) 

Basilio

>『アンリ8世』
や、ヘンリーのほうがとおりがいいし、それでもいいかなとも思うんですが、最近はトマの『ハムレット』も『アムレ』と書いたりするので、流れに乗って?みました笑。そのうちヴェルディの『マクベス』も『マクベット』になるんだろうか…?
これの録音は極端に少なくて、全曲はミシェル・コマンほかの1つしか知りません。
アリア集ではなんとボリス・クリストフが歌ってますwww

>『ミレイユ』
これは実は結構録音があります。ゲッダニコライも歌ってますw
全体聴くとちょっとだれもあるんですが、アリアやなんかは総じてとてもいい曲だと思いますよ!
全曲だとロベール・マッサールが歌ってるやつがありますね。
by Basilio (2012-03-04 08:12) 

しま

■Basilioさん
>『ハムレット』も『アムレ』
……(*゚Д゚)

>ゲッダニコライの『ミレイユ』
購入を検討します。
by しま (2012-03-04 22:05) 

Basilio

そういえばノーマークだったんですけど、ブランのスカルピアって、どうやら録音自体はあるみたいですね。しかもこれDECCAの正規のものじゃないかしら…?
http://fr.wikipedia.org/wiki/Ernest_Blanc

誰か持ってないだろうか…
by Basilio (2012-03-05 15:09) 

しま

■Basilioさん
ホントだ。抜粋盤のようだけど、テ・デウムは絶対入ってますよね。
トスカを押し倒すシーンでも良いわ♪
誰か持っていないかなぁ…

DVDのサムソンとダリラも気になるんですけど。
本腰入れて探してみるかな。


by しま (2012-03-05 23:44) 

Basilio

トスカ抜粋でテ=デウムが入ってなかったら編集者の見識を疑いますよ(^^;

サムソンとデリラの映像はyoutubeに転がってますよ~ん♪
http://www.youtube.com/watch?v=51YI_1i63ls

DVDに『ミレイユ』もありますね!
以前ちょっとお話した抜粋版の塊の音源もありますし、探索はつきませんね笑。
by Basilio (2012-03-06 09:58) 

しま

■Basilioさん
ありがとうございます♪
ブランの大祭司の映像が見られるなんて。このGilbert Pyって人のお陰かな。(容貌といい、なかなか良いサムソンですね)

http://youtu.be/Fv1SCFIYGdE
このシーンはブランの声がけっこう聴けますね。
'84年、チリのサンティアゴ歌劇場。チリって…どれだけ国際的に活躍なさっていたのかしら…(*゚Д゚)

ブランは61才なんですね。
なのに爽やかなお声とデレカント唱法は変わらない…!!
あーこのDVD欲すぃい!!ヽ(`Д´)ノ
by しま (2012-03-06 15:34) 

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