[命日訂正]リタ・ゴールの訃報(2012年1月22日) -- ブランとの共演を偲んで [オペラの話題]
※keyakiさんにご指摘いただき、ゴールの命日を訂正しました。
ネットをさまよっていて、あっとびっくり。
私の大好きなメゾソプラノ、リタ・ゴールが、今年の1月に亡くなっていたんですね。
2012年1月21日22日、スペインのバレンシア州、デニアで長い闘病の末に逝去。享年85才との事です。
主な訃報記事は、OPERA NEWS と、GRAMOPHONE、Telegraph紙 です。
右上の画像をクリックすると、YouTubeに飛びます。リタの歌う《ドン・カルロ》のエボリ公女、"O don fatale"。
ヴェルディのメゾの歌で私が唯一涙してしまう曲で、この人の冷たくてマチュアな声で聴くのがとても好きでした。
Wikiや上記の記事を参考に、簡単に略歴をまとめておきます。
1926年、ベルギーのゼルザーテ生まれ。
看護師として働いていたところ、雇い主が彼女の歌の才能を見出して、声楽のレッスン料を負担してくれたのだそうです。
ヘントやブリュッセルで学んだ後、1946年のスイス、ベルビエでのコンテストで1等賞を受賞し、同年アントワープで《ワルキューレ》のフリッカ役でデビュー。
さらに1952年にはローザンヌでのコンテストで優勝し、同年にパリ・オペラコミーク座でデビュー(ウェルテルのシャーロット役)、続いて《ニュルンベルクのマイスタージンガー》でパリ・オペラ座デビューを果たしています。
OPERA NEWSによると、バイロイト音楽祭に初めて登場したのは1958年、《ラインの黄金》、フリッカ役で。続いて《ワルキューレ》、《神々の黄昏》の第3のノルン。(メゾソプラノなら””the second"のノルンだと思いますが、"the third"と書いてあります。これは記事の間違いでしょうか?)
記事では言及されていませんが、'59年のバイロイトでは《ローエングリン》でエルネスト・ブランと共演しています。
リタ・ゴールの歌手人生はたいへん長く、最後の舞台は2007年、チャイコフスキー《スペードの女王》の伯爵夫人。ベルギー、アントワープのVlaamse operaにて。なんと81才の時でした。
彼女の主なレパートリーは上記のワーグナー諸役に加えて、《サムソンとデリラ》のデリラ、《アイーダ》アムネリス、《ドン・カルロ》エボリ、《イル・トロヴァトーレ》アズチェーナ、カルメンなど。
おもしろいところでは、プーランクの《カルメル派修道女の対話》のマリーとクロワシー夫人、両方の録音を残しています。前者はデルヴォー、後者はケント・ナガノの指揮によるもの。どちらも是非聴いてみたい。
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私がリタ・ゴールを知ったのは、エルネスト・ブランのファンだったから。共演の多かったこの2人、私にとっては他に代えがたいゴールデン・カップルです。
以前こちらの記事のコメント欄にて、ブランとゴールは夫婦だったのでは!? という話題が出ました。結局、「普通に"共演者"だったんでしょう」ということで落ち着きましたが(keyakiさんがいろいろと調べてくださいました)、そういうハナシにとても信憑性を感じてしまうくらい、二人の声は相性ぴったりだと思います。
優男っぽいブランの声に、氷の心を持っていそうなリタの声。
バイロイトの《ローエングリン》、ブランのテルラムントは、リタのオルトルートのお尻に完全に敷かれちゃっているみたいに聴こえます。それがあまりにも萌えるので、全曲制覇していないくせに第2幕のこのシーンだけは何度も繰り返し聴いているんですよ(笑)
左の写真は、その'59年のバイロイトの時のようです。
仲のよさげな二人ですね。
さすが舞台人…というだけあって、ブランもリタもちゃんと「モデル立ち」しているところも面白いです。大好きな写真です。
舞台ではこんな感じ(↓)だったようで(笑)
これも“悪の夫婦”としてお似合いダ!
他にも夫婦役で共演している作品があって、最近のものではシャルパンティエの《ルイーズ》があります。
ヒロインの両親役で、ブランは娘に精神的に癒着したパパを、リタは娘の成長を冷ややかに眺めるママを好演しています。
リタの追悼記事なのに、どうしてもブランと絡めて語ってしまってごめんなさい。私にとってはブランあってのリタなので。
フランスではこの二人を取り上げた本も出版されています。英語訳って出ていましたっけ? 原語ですと手も足も出ませんが、もしも英語版があるならぜひ熟読してみたいものです。
というわけで、我がブログでの追悼音源は、私がリタ・ゴールの声に強烈に惹かれた《サムソンとデリラ》にしておきましょう。
もちろんブラン(ダゴンの大司祭)との絡み、サムソンへの復讐を誓うシーンです。
大司祭とデリラは過去にいろいろあった模様…という設定ですので、ブランとゴールのカップリングは激しい二重唱でもどこかなまめかしくて良いのです。
1963年の録音。指揮はジョルジュ・プレートル。サムソンはジョン・ヴィッカーズです。
私にとっては文句の付けようのない最高のキャスティングで、この録音でのリタ・ゴールの声が、ダリラという役の個人的なスタンダードとなっています。
ブランとリタ、天国でも仲良く歌っていることでしょう。ご冥福をお祈りします。
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関連記事リンク
◆二つめの“動く”ブラン -- 《サムソンとデリラ》 チリ サンティアゴ市民歌劇場
◆ブランクとゴールの『ルイーズ』
ネットをさまよっていて、あっとびっくり。
私の大好きなメゾソプラノ、リタ・ゴールが、今年の1月に亡くなっていたんですね。
2012年1月
主な訃報記事は、OPERA NEWS と、GRAMOPHONE、Telegraph紙 です。
右上の画像をクリックすると、YouTubeに飛びます。リタの歌う《ドン・カルロ》のエボリ公女、"O don fatale"。
ヴェルディのメゾの歌で私が唯一涙してしまう曲で、この人の冷たくてマチュアな声で聴くのがとても好きでした。
Wikiや上記の記事を参考に、簡単に略歴をまとめておきます。
1926年、ベルギーのゼルザーテ生まれ。
看護師として働いていたところ、雇い主が彼女の歌の才能を見出して、声楽のレッスン料を負担してくれたのだそうです。
ヘントやブリュッセルで学んだ後、1946年のスイス、ベルビエでのコンテストで1等賞を受賞し、同年アントワープで《ワルキューレ》のフリッカ役でデビュー。
さらに1952年にはローザンヌでのコンテストで優勝し、同年にパリ・オペラコミーク座でデビュー(ウェルテルのシャーロット役)、続いて《ニュルンベルクのマイスタージンガー》でパリ・オペラ座デビューを果たしています。
OPERA NEWSによると、バイロイト音楽祭に初めて登場したのは1958年、《ラインの黄金》、フリッカ役で。続いて《ワルキューレ》、《神々の黄昏》の第3のノルン。(メゾソプラノなら””the second"のノルンだと思いますが、"the third"と書いてあります。これは記事の間違いでしょうか?)
記事では言及されていませんが、'59年のバイロイトでは《ローエングリン》でエルネスト・ブランと共演しています。
リタ・ゴールの歌手人生はたいへん長く、最後の舞台は2007年、チャイコフスキー《スペードの女王》の伯爵夫人。ベルギー、アントワープのVlaamse operaにて。なんと81才の時でした。
彼女の主なレパートリーは上記のワーグナー諸役に加えて、《サムソンとデリラ》のデリラ、《アイーダ》アムネリス、《ドン・カルロ》エボリ、《イル・トロヴァトーレ》アズチェーナ、カルメンなど。
おもしろいところでは、プーランクの《カルメル派修道女の対話》のマリーとクロワシー夫人、両方の録音を残しています。前者はデルヴォー、後者はケント・ナガノの指揮によるもの。どちらも是非聴いてみたい。
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私がリタ・ゴールを知ったのは、エルネスト・ブランのファンだったから。共演の多かったこの2人、私にとっては他に代えがたいゴールデン・カップルです。
以前こちらの記事のコメント欄にて、ブランとゴールは夫婦だったのでは!? という話題が出ました。結局、「普通に"共演者"だったんでしょう」ということで落ち着きましたが(keyakiさんがいろいろと調べてくださいました)、そういうハナシにとても信憑性を感じてしまうくらい、二人の声は相性ぴったりだと思います。
優男っぽいブランの声に、氷の心を持っていそうなリタの声。
バイロイトの《ローエングリン》、ブランのテルラムントは、リタのオルトルートのお尻に完全に敷かれちゃっているみたいに聴こえます。それがあまりにも萌えるので、全曲制覇していないくせに第2幕のこのシーンだけは何度も繰り返し聴いているんですよ(笑)
左の写真は、その'59年のバイロイトの時のようです。
仲のよさげな二人ですね。
さすが舞台人…というだけあって、ブランもリタもちゃんと「モデル立ち」しているところも面白いです。大好きな写真です。
舞台ではこんな感じ(↓)だったようで(笑)
これも“悪の夫婦”としてお似合いダ!
他にも夫婦役で共演している作品があって、最近のものではシャルパンティエの《ルイーズ》があります。
ヒロインの両親役で、ブランは娘に精神的に癒着したパパを、リタは娘の成長を冷ややかに眺めるママを好演しています。
リタの追悼記事なのに、どうしてもブランと絡めて語ってしまってごめんなさい。私にとってはブランあってのリタなので。
フランスではこの二人を取り上げた本も出版されています。英語訳って出ていましたっけ? 原語ですと手も足も出ませんが、もしも英語版があるならぜひ熟読してみたいものです。
というわけで、我がブログでの追悼音源は、私がリタ・ゴールの声に強烈に惹かれた《サムソンとデリラ》にしておきましょう。
もちろんブラン(ダゴンの大司祭)との絡み、サムソンへの復讐を誓うシーンです。
"Il faut, pour assouvir ma haine"
大司祭とデリラは過去にいろいろあった模様…という設定ですので、ブランとゴールのカップリングは激しい二重唱でもどこかなまめかしくて良いのです。
1963年の録音。指揮はジョルジュ・プレートル。サムソンはジョン・ヴィッカーズです。
私にとっては文句の付けようのない最高のキャスティングで、この録音でのリタ・ゴールの声が、ダリラという役の個人的なスタンダードとなっています。
ブランとリタ、天国でも仲良く歌っていることでしょう。ご冥福をお祈りします。
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関連記事リンク
◆二つめの“動く”ブラン -- 《サムソンとデリラ》 チリ サンティアゴ市民歌劇場
◆ブランクとゴールの『ルイーズ』
2012-03-08 15:24
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コメント(7)
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>リタの追悼記事なのに、どうしてもブランと絡めて語ってしまってごめんなさい
私もいつも◯◯の共演者扱いしちゃいます。
情報収集のためにちょいちょい覗いているオペラフォーラムで追悼記事が掲載されていたのですが、あ!リタ・ゴール、エルネスト・ブラン、しまさん.....と瞬間的に連想しましたよ。
フォーラムの記事リンクします。
http://www.operaclick.com/editoriali/e-morta-rita-gorr
亡くなられたのは1月22日になってます.....しまさんがリンクしているので21日となっているのはOPERA NEWSだけなので22日が正しいと思います。
亡くなった時間でややこしくなることもあるんですけど、速報でもないようですので....
by keyaki (2012-03-09 10:26)
私もゴールの不感症っぽい、でも色気たっぷりな声が大好きなんで、とても残念です。
あれ以上のデリラはちょっと思いつきません。
ショルティ盤『アイーダ』のアムネリスも個性的で好きです。
エボリは全曲の録音がないのが惜しい…ゴール(エボリ)、クリュイタンス指揮、マルス(フィリッポ)、ゲッダ(カルロ)、クレスパン(エリザベッタ)、ブラン(ロドリーゴ)、クリストフ(宗教裁判長)、ドゥプラ(修道士)、デロサンヘレス(天の声)、仏語全曲盤とかあったら、ちょっと違う『ドン・カルロ』像を築けたんではないかなぁ…(妄想拡大中)
しかし、ビーチャムは何故ゴールではなくデロサンヘレスで『カルメン』やったかなぁ…(デロサンヘレスは嫌いな訳ではなく、マルグリットととか好きなのもある訳ですが。)
話が盛大にそれてしまいましたが、ゴールとブランの名コンビ、お二人とも亡くなってしまって、非常にさびしいですね。。。
by Basilio (2012-03-09 13:20)
■keyakiさん
>1月22日
ご指摘ありがとうございます! 訂正しておきました。
そういえば、22日といったら、ブランの月命日にあたりますね(12/22)。
どんだけ仲が良いんでしょう、このお二人。
>リタ・ゴール、エルネスト・ブラン、しまさん
光栄な連想・・嬉しいです。
フォーラムのリンクもありがとうございます。
うぉ、イタリア語だ!と焦りましたが、"モルタ"でピーンときちゃうところが根っからのヴェルディっ子だと思いましたです(笑)
by しま (2012-03-10 01:36)
■Basilioさん
>不感症っぽい、でも色気たっぷりな
そうそう! そうなんですよね~!!
色気たっぷりふりまいてイイ男をさんざん寄せ付けておきながら、でも私は誰も愛さないわよ~みたいな、これぞファムファタールみたいな。
そんなリタの声に爽やかなブランの声がまとわりつくと、もー美しき女郎蜘蛛の巣にみすみすひっかかりに行った男、みたいな…!!
す、すいません、ちょっと理性が・・
>ちょっと違う『ドン・カルロ』像
あははは!! いいですねぇ~、夢の競演。
カルロがゲッダっつーセンスも抜群です。
>何故ゴールではなくデロサンヘレス
ビーチャム盤がゴールだったら最高でしたでしょうに。デロサンヘレスも可愛いので好きですけど、カルメンが普通の女の子みたいに聴こえます。
by しま (2012-03-10 01:49)
や、妄想はとても大事ですよ、音だけでオペラを聴くときには特に(笑)
特に、すでにおっしゃられてますけどサムソン、ルイーズ、ローエングリンでのこのひとたちの名夫婦っぷりは…!
ゲッダのカルロはドイツ語抜粋があるらしいのですが、これも稀少らしくて…ちょっと探しているアイテムです。
デロサンへレスはデロサンヘレスでもっと合う役があるでしょうにね。
by Basilio (2012-03-11 11:51)
■Basilioさん
>名夫婦っぷり
あははは、いい言葉ですね!! まさに言い当てていらっしゃいます。
>ゲッダのカルロ
ニヤけ歌唱で得意満面に登場するカルロ・・ 想像しただけで笑えますわ♪
by しま (2012-03-12 00:25)
http://recordsound.jp/?mode=detail&gid=6976
by おせっかいさん (2012-06-15 09:45)