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夢とロマンの「喜べ!」「既に夜も更けた」/19人のオテロ [オペラ録音・映像鑑賞記]

verdietamagno.jpg 19世紀生まれのアンティーク歌手たちによる《オテロ》、名場面集より。1枚目CD“オテロの巻”に移ります。

 第一弾は、登場の第一声「喜べ!」と、デズデーモナとのラブ・デュエット「既に夜も更けた」から。

 イァーゴの時は「声がデカいか小さいか」に加えて「どんな役づくりをしているのか」あたりに着目(耳)して聴きましたが、オテロはもっとカンタンです。

「アタマが良いか悪いか」

 アタマの良さそうなオテロの代表格は、プラシド・ドミンゴとか。こないだハマったラモン・ビナイとか。細やかな感情表現に長けていて、わりと簡単に騙されてしまうオテロの単純さも「無理もないことだったんだ!」と聴き手を説得するだけの力がある。

 対して、アタマの悪そうな代表格は、えっと、マリオ・デル・モナコとか? とにかく大声で、脳みそまで声帯でできている系。基本的に大根で(本人は演技しているつもりだから尚更イタい)、盛大に騒げば騒ぐほど「プ…」と聴き手の笑いを誘う。

 で、私は基本、アタマ悪い系のオテロが好きです。大声最重視のオペラ愛好家ですし、“黄金のトランペット”のデル・モナコは、オテロを歌うために生まれてきたテノールだと思うわけです。

 そして今回の聴き比べで最も楽しみにしていたのが、フランチェスコ・タマーニョ。右上の写真で、ヴェルディ大先生と嬉しそうに腕を組んでいるのがヤツでござんす。

 彼こそは1987年の初演時にオテロを歌った元祖であり、スカラ座の外まで声が響いたという伝説の大声歌手。
 ええ当然アタマ悪い系です。大声ですもん。
 その演技力の無さ、表現の乏しさにはさすがのヴェルディもびっくりで、付っきりで歌唱指導をしたとか。

 いろいろな逸話を知るにつけ、そして↑のお茶目なお写真を見るにつけ、タマーニョがカワイくてカワイくてたまらなくなってきました。そんな彼のオテロ名場面を、リストア済サウンドで聴けるのですから、私のテンションが上がらない筈ありません。

 更に、予想外のオマケとして、アタマ良い系なオテロ歌い、レナート・ザネッリ様との出会いもありました。「様」を付けたということは、惚れたのです、はい。

「テノールに惚れるなんて…!!」と、アタフタしてしまいましたが、実はザネッリ、バリトンからの転向組なの。「我ながら、ブレないわ~」と感心することひとしきりです(笑)

 タマーニョ以降、この手のタイプでは20世紀初頭の最高のオテロ歌いではなかろうかと、個人的には思っています。

 この「喜べ!」の感想を呟いていた時点では、まだ彼の魅力に気付いていなかったのですが、この後急速に感想のテンションが上がっていきます。今後はぜひ、このザネッリに注目していただきたい。

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tamagnoport.jpg【喜べ!】 フランチェスコ・タマーニョ(Francesco Tamagno)イタリア/1850-1905
1903年の録音/ピアノ伴奏/
これぞ夢とロマン…!! とテンションマックスで身構えて聴くと、「え、普通じゃん(大声じゃないじゃん)」と思うのだけど、これが御年53才の声であり、最盛期に録音している他の歌手に負けていないことを考えると驚異的。若い頃はそりゃ大声だったでしょう! きっと人間ファンファーレのように登場したに違いない。最後がちょっと息切れしているのがせつない。ちなみにこの録音の2年後に亡くなっているのです。



demuroport.jpg【喜べ!】 ベルナルド・デ・ムーロ(Bernardo De Muro)サルデーニャ/1881-1955
1917年の録音/オーケストラ伴奏(合唱・イァーゴ・カッシオ付き)/
ちょっ、息が長過ぎww タマーニョ親方もそうなんだけど、昔の歌手はここで馬鹿馬鹿しいほどに長伸ばししてたんでしょうねぇ。重量級のドランマーティコ。これぞ横綱の土俵入り! ヨイショ〜!! 太刀持ちはイァーゴ、露払いはカッシオですかね。



osullivanport.jpg【喜べ!】 ジョン・オサリヴァン(John O'sullivan)アイルランド/1877-1955
1922年の録音/オーケストラ伴奏/
真の英雄登場。頭も良さそう。 ヴェルディよりもワーグナー向きかも? 低音から高音まで声の響きが均一に太い! こういうオテロが登場したら土下座したくなっちゃう。全然関係ないけどルッフォとタメ。声の相性良さそうだから、共演しててくれたりしたら嬉しいんだけど。(調べてみたけど共演ナシ)



renatozanelliport.jpg【喜べ!】 レナート・ザネッリ(Renato Zanelli)チリ/1892-1935
1928年の録音/オーケストラ伴奏/
この人も素晴らしいドランマーティコだなぁ。いかにもオテロって感じがする。
しかし無理矢理クレッシェンドした直後から声帯に血が滲んでやしませんか?www
カッコいい声だし頭も良さげ。芯が太くて英雄的で、戦士としての強さも感じる。
全体をこの大声でやられると少し単調に感じるかもしれないけど。



volpeport.jpg【喜べ!】 ジャコモ・ラウリ・ヴォルピ(Giacomo Lauri Volpi)イタリア/1892-1979
1941年の録音/オーケストラ伴奏/
若々しいけどオテロにしては声が細い。
もっと食っちゃ寝して体を作らないと三役、横綱にはなれませんよ!
バシオラとの「神かけて誓う」でとんでもない「さぁんぐぇ〜〜〜!」をやらかしたのは、声の弱さを補うためか?
かなりヒステリックなオテロです。



monac.jpg【喜べ!】 マリオ・デル・モナコ(Mario Del Monaco)イタリア/1915 - 1982
1951年の録音/オーケストラ伴奏/
マ、マリ夫ちゃんっ、20世紀生まれなのに出てきちゃダメよヽ(´o`;
すみませんねぇ先生方。この役得意なもんですから、歌わせてやってくださいな。
……で、いかがですかしら、ウチのマリ夫は? なかなかヤルと思いません? ええ大声では負けてませんのよ。




【既に夜も更けた】
フランチェスコ・メルリ(1887-1976) and クラウディア・ムツィオ(1889-1936)
1935年の録音/オーケストラ伴奏/
Merliport.jpgmuzioport.jpg なぜこのデュエットが1曲だけ収録されているのか謎ですが。テノールがわめきバリトンが唸るだけのCDの中で一服の清涼剤であることは確か。
デズデーモナを歌うムツィオ、蓄音機声だけど表現力がとても豊か。成熟した女性の色気が素敵。ちなみに《外套》世界初演時のジョルジェッタ役を歌った人です。
メルリの歌唱も素敵ですが、最初からボロ泣きしすぎw ムツィオのふくよかな胸に顔を埋めて…って、赤ちゃんプレイの一種かしらww
このペアで全曲を聴いたら、濃厚な雰囲気に酔えそうです。イァーゴはストラッチャーリがいいかな。

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