《ピーター・グライムズ》@新国立劇場 10/5,10/8 -- 遅くなって申し訳ございません [オペラ実演レポ]
長らく放置していて申し訳ありません。仕事のほかに、オフタイムで集中して頑張らなければならないことが出来てしまい、なかなかブログに気が回らなくなってしまいました。
今後も更新が滞ることが増えると思いますが、今のところブログをやめるつもりはありませんので、気長におつきあいいただけると嬉しいです。
さて新国も新シーズンが始まりまして(今更ですが)、今年はどんな手段を使っても(笑)全ての演目を制覇しようという野望を抱いております。
その手始めの《ピーター・グライムズ》。私が大好きな演目で、生で鑑賞できたらと夢を抱いておりました。ようやく念願かなって新国で初上演と相成ったので、気合を入れて2回も行ってしまいました。
簡単にその所感を備忘録っておきます。
まず、いちばん重要なタイトルロールについて。腕に(喉に?)覚えのあるテノールはけっこうこの役をやりたがるようですが、なかなか私の好みに当てはまる歌手さんに巡り合えません。
今回のスチュアート・スケルトンの声は、求めるものに限りなく近かったと思っています。響きが太く、低音がずっしりと重かった。
ワーグナーが多くレパートリーに入っているようです。グライムズは初代がピーター・ピアーズで、この人のために書かれた作品なので、本来はあまり力押し歌唱でないほうが良いのかもしれませんが、少年虐待の疑いをかけられるグライムズなんですから、肉体派っぽい力強い声のほうが私は好きです。
エレン・オーフォード役のスーザン・グリットンは素晴らしかった! 最も大きな拍手を送ったのはこの人です。たぶん私史上、最高のエレンだと思います。
まろみのある、柔らかな素敵な声なのですが、歌唱に凄みがありました。
2幕で、村人たちがこぞってピーターの小屋に向かった後、エレンとアンティ、二人の姪たちによる四重唱がありますが、そこでのグリットンのすさまじく悲痛な歌唱が2ヶ月以上経った今でも耳に残っています。
あそこのシーンは、ちょっと昔のCDやDVDだとけっこうあっさりと演奏されることが多く、いまいちその存在意義がわからなかったのですが、グリットンの歌唱によってエレンの、そして女性の献身的な愛情と諦観が嵐のように胸に迫ってきました。
アンティのキャサリン・ウィン=ロジャースは演技も歌唱も文句なし。太い声がキャラクターにとても合っていたと思います。
急きょ代役としてバルストロード船長を歌うことになったジョナサン・サマーズはROHの映像やCDでお馴染みのバリトン。私の初グライムズのCDでも同役を歌っているので、思いがけず生サマーズを体験できて(しかも日本で!)嬉しかったです。
日本人キャストで目を(耳を)ひかれたのは、ボブ・ボウルズ役の糸賀修平。あのイっちゃってヒステリックな面白キャラにとてもよくハマっていたというか。とにかく私の中のボウルズ役のイメージにぴったりで、何度も「そう、そうなんだよ!」と心の中で親指を立てていました。ええ声や!
ホレス・アダムズの望月哲也も、なにげに胡散臭い牧師によく合っていました。礼拝のシーンであまり姿が見えなかったのが残念です。声だけ聞こえる…という演出がミソなんでしょうけどね。
それから、オケの演奏もとても素晴らしく、興味深かったことも忘れずに記しておきましょう。特に1幕の嵐のシーンでどんな演奏をしてくれるか楽しみだったのです。あそこは指揮者によってびっくりするほど変わるのですね。
音楽そのものは全くもって写実的に作られており、私の愛聴盤であるコリン・デイヴィスなんかはもう大型台風通過中のあのメチャクチャぶりを思い出させるようでとても迫力があります。
一方、ハイティンクの手にかかりますと写実的な印象はまるでなくて、非常に観念的、宗教的な音になります。現実の嵐ではなく、グライムズの心情を描いているのかなぁと思わせられます。
新国でのリチャード・アームストロングの音作りは写実のほうだったと思います。が、金管をフィーチャーしたデイヴィス盤の音に慣れた耳にはこれまた新鮮。引き裂くようなヴァイオリンの音がとても印象に残っています。
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《ピーター・グライムズ》関連記事
■ジョン・ヴィッカーズの『ピーター・グライムズ』 with アレン ←アレンはネッド・キーン役です
■R・ジョンソンの『ピーター・グライムズ』 ←アレンはバルストロード船長役です!
■『ピーター・グライムズ』/ブリテン自作自演盤
■『ピーター・グライムズ』あれこれ
■《ピーター・グライムズ》MET ライブビューイング 5/27
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10/5 , 10/8 両日とも3階C席で鑑賞。
写真は5日の席からの眺めです。
※開演前から幕が上がっており、舞台上のものまで写ってしまったので、マスキングをしておきました。
【ピータ・グライムズ】スチュアート・スケルトン
【エレン・オーフォード】スーザン・グリットン
【バルストロード船長】ジョナサン・サマーズ
【アーンティ】キャサリン・ウィン=ロジャース
【姪1】鵜木絵里
【姪2】平井香織
【ボブ・ボウルズ】糸賀修平
【スワロー】久保和範
【セドリー夫人】加納悦子
【ホレース・アダムス】望月哲也
【ネッド・キーン】吉川健一
【ホブソン】大澤 建
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
今後も更新が滞ることが増えると思いますが、今のところブログをやめるつもりはありませんので、気長におつきあいいただけると嬉しいです。
さて新国も新シーズンが始まりまして(今更ですが)、今年はどんな手段を使っても(笑)全ての演目を制覇しようという野望を抱いております。
その手始めの《ピーター・グライムズ》。私が大好きな演目で、生で鑑賞できたらと夢を抱いておりました。ようやく念願かなって新国で初上演と相成ったので、気合を入れて2回も行ってしまいました。
簡単にその所感を備忘録っておきます。
まず、いちばん重要なタイトルロールについて。腕に(喉に?)覚えのあるテノールはけっこうこの役をやりたがるようですが、なかなか私の好みに当てはまる歌手さんに巡り合えません。
今回のスチュアート・スケルトンの声は、求めるものに限りなく近かったと思っています。響きが太く、低音がずっしりと重かった。
ワーグナーが多くレパートリーに入っているようです。グライムズは初代がピーター・ピアーズで、この人のために書かれた作品なので、本来はあまり力押し歌唱でないほうが良いのかもしれませんが、少年虐待の疑いをかけられるグライムズなんですから、肉体派っぽい力強い声のほうが私は好きです。
エレン・オーフォード役のスーザン・グリットンは素晴らしかった! 最も大きな拍手を送ったのはこの人です。たぶん私史上、最高のエレンだと思います。
まろみのある、柔らかな素敵な声なのですが、歌唱に凄みがありました。
2幕で、村人たちがこぞってピーターの小屋に向かった後、エレンとアンティ、二人の姪たちによる四重唱がありますが、そこでのグリットンのすさまじく悲痛な歌唱が2ヶ月以上経った今でも耳に残っています。
あそこのシーンは、ちょっと昔のCDやDVDだとけっこうあっさりと演奏されることが多く、いまいちその存在意義がわからなかったのですが、グリットンの歌唱によってエレンの、そして女性の献身的な愛情と諦観が嵐のように胸に迫ってきました。
アンティのキャサリン・ウィン=ロジャースは演技も歌唱も文句なし。太い声がキャラクターにとても合っていたと思います。
急きょ代役としてバルストロード船長を歌うことになったジョナサン・サマーズはROHの映像やCDでお馴染みのバリトン。私の初グライムズのCDでも同役を歌っているので、思いがけず生サマーズを体験できて(しかも日本で!)嬉しかったです。
日本人キャストで目を(耳を)ひかれたのは、ボブ・ボウルズ役の糸賀修平。あのイっちゃってヒステリックな面白キャラにとてもよくハマっていたというか。とにかく私の中のボウルズ役のイメージにぴったりで、何度も「そう、そうなんだよ!」と心の中で親指を立てていました。ええ声や!
ホレス・アダムズの望月哲也も、なにげに胡散臭い牧師によく合っていました。礼拝のシーンであまり姿が見えなかったのが残念です。声だけ聞こえる…という演出がミソなんでしょうけどね。
それから、オケの演奏もとても素晴らしく、興味深かったことも忘れずに記しておきましょう。特に1幕の嵐のシーンでどんな演奏をしてくれるか楽しみだったのです。あそこは指揮者によってびっくりするほど変わるのですね。
音楽そのものは全くもって写実的に作られており、私の愛聴盤であるコリン・デイヴィスなんかはもう大型台風通過中のあのメチャクチャぶりを思い出させるようでとても迫力があります。
一方、ハイティンクの手にかかりますと写実的な印象はまるでなくて、非常に観念的、宗教的な音になります。現実の嵐ではなく、グライムズの心情を描いているのかなぁと思わせられます。
新国でのリチャード・アームストロングの音作りは写実のほうだったと思います。が、金管をフィーチャーしたデイヴィス盤の音に慣れた耳にはこれまた新鮮。引き裂くようなヴァイオリンの音がとても印象に残っています。
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《ピーター・グライムズ》関連記事
■ジョン・ヴィッカーズの『ピーター・グライムズ』 with アレン ←アレンはネッド・キーン役です
■R・ジョンソンの『ピーター・グライムズ』 ←アレンはバルストロード船長役です!
■『ピーター・グライムズ』/ブリテン自作自演盤
■『ピーター・グライムズ』あれこれ
■《ピーター・グライムズ》MET ライブビューイング 5/27
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10/5 , 10/8 両日とも3階C席で鑑賞。
写真は5日の席からの眺めです。
※開演前から幕が上がっており、舞台上のものまで写ってしまったので、マスキングをしておきました。
【ピータ・グライムズ】スチュアート・スケルトン
【エレン・オーフォード】スーザン・グリットン
【バルストロード船長】ジョナサン・サマーズ
【アーンティ】キャサリン・ウィン=ロジャース
【姪1】鵜木絵里
【姪2】平井香織
【ボブ・ボウルズ】糸賀修平
【スワロー】久保和範
【セドリー夫人】加納悦子
【ホレース・アダムス】望月哲也
【ネッド・キーン】吉川健一
【ホブソン】大澤 建
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
タグ:新国 ピーター・グライムズ
2012-12-14 16:16
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