ティッタ・ルッフォの全録音を粘着に聴いて感想をつけてみた/Edition Vol.1 [オペラ録音・映像鑑賞記]
今年の8月にティッタ・ルッフォの(おそらく)全録音(*1)を収録したと思われるCD全3巻を入手しまして、通勤の行き返りに粘着に聴きました。
1巻毎にそれぞれCDが2枚あり、Edition Vol.1(52曲)、Vol.2(47曲)、Vol.3(43曲)、計142曲。ルッフォが録音に前向きだったとは聞いていましたが、こんなにあるとは思いませんでした。
至福の極みです。
特にVol.1 は、1905年のパテ兄弟社での録音が入っており、ルッフォの初期の歌唱がどんなだったかを知る上でも大変貴重。なにしろ28才という若い時代の歌唱。
さぞ素敵だったんでしょうねぇ…・:*:・(*´エ`*)ウットリ・:*:・と、ワクワクしながら聴いてみたところ、
びっくりするほど下手くそだった!
……という事実も判明www
(いるかどうかわからないけどファンの皆さんごめんなさい)
とにかく大声でやかましくて、情感もへったくれもなく、おまけにオンチで、聞くに耐えずにすっ飛ばしたくなる曲もいくつか……orz
後年の録音のあの素晴らしさは何なんでしょう。この時の録音から10年くらいの間に技術と芸術性が飛躍的に向上したに違いなく、芋虫ルッフォを蝶に変身させた要因はいったい何だったのかと、自伝を読み返してあれこれ妄想を膨らませるのもこれまた楽しく。
Twitterでこれまた粘着に感想をつぶやきましたので、今年中にこちらに転記しておこうと思います。
続けて聴いているうちにだんだん頭がおかしくなってきて、コメント(声)が裏返っている部分はご容赦をww
ちなみに、ルッフォの録音の多くは「アコースティック録音(ラッパ録音)」と呼ばれる方法で録ったもの。マイクではなく、メガホンの大きいほうの開口部に向かってがなりたてた歌ったんですね。
二重唱などでどちらか一方の歌手の声が遠く聴こえるのはポジション争いに負けたためと思われますww
⇒⇒ティッタ・ルッフォEdition 2 へ
⇒⇒ルッフォについての過去記事はこちらから
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Titta Ruffo Edition 1-1 (全27曲)
1~15:1905年5~6月 パリ パテ兄弟社
1:ザザ/おまえはいい女だ /これはまだマシなほうで、高音なんかきれいに伸びてる。しかし低音がひどく、出ない音を無理やり絞り出してて痛々しい。後年の録音では、ルッフォのこの歌は涙無しには聴けないというに。
2:ザザ/可愛いジプシー娘よ/ちゃんとなめらかに歌えてるけどひたすら棒読み&大声だ。あーうるさいうるさい。でも、声はほんとに輝いている。これぞ私の愛するルッフォの声です。だからラストは息切れしなさんなw
3:アムレット/乾杯の歌/さすがに聴き飽きたけど感想は付けにゃ。初役大当たり直後の録音なので当時の歌唱を想像できる。テンポはかなり遅く、慎重にがなりたててる感じw カデンツァは長いけど、この頃はまだ無理やり感が強く、滑らかさが足りないな。
4:セビリアの理髪師/私は町の何でも屋/変なおじさんが大声で何ごとかわめきながら走って追いかけてくる感じ。コ、コワイ…。
5:ラ・ファヴォリータ/来たれレオノーラ/私がドニゼッティ好きじゃないこともあって、余計に点が下がるんだろうが…。一言でまとめると「鬱陶しい」。でもルッフォのこの鬱陶しさが好きだったりする。女心はかくも複雑。
6:シベリア/O bella mia/下手くそなパテ社時代の録音の中でこれがいちばんひどいww な、なんて乱暴な歌唱…! 声が完全に嗄れてますよ! よく聴くと痰を切る音まで入っていて笑えるし!
7:トロヴァトーレ/君が微笑み/正直、こんなグダグダなルーナは初めてですよ? 鬱陶しい、鬱陶しいぞ。グロソップのルーナが正統派に思えてくるわ。
8:椿姫/プロヴァンスの海と陸/ああ…ヴェルディ屈指の名アリアをこんなにしちゃって…。
9:ファウスト/ヴァランタンの死/誰ですか。「ヴァランタンほど深く掘り下げて考察した役はない」なんて自慢していたのは!これじゃ妹の首を締めつつガンガン地面に打ちつけてるただの暴力アニキですよ。
10:フェドーラ/ロシア女は女らしくて愛しいが/これも際限なく鬱陶しい大声歌唱なんだけど、曲調に合ってて良い雰囲気。ルッフォはラブソングよかこういう素朴でカワイイ民謡風なのを機嫌よく歌ってりゃいいんだよ~。なんて言ったらご本人からクレームがきそうだけどww ルッフォは酷評されるとすべて「陰謀だ」って騒ぐからな。
11:チャタートン/Tu sola me rimani , o poesia/(ルッフォのせいかもしれないけど)なんともつまらん歌ですな。レオンカヴァッロの辛気臭さとルッフォの鬱陶しさはかなり相性が良いと思う。当時はこの組み合わせ、ウケたんだろうな。
12:ドン・カルロ/あなたを抱くことができる私は/やっぱ辛気臭い歌だと輝くのね(笑)大きな声で旋律をふっくらと包むような歌唱がとても素敵。なにげにこの人のロドリーゴは良いのです。男前ではないけど誠意がある。そして、伴奏を間違えてオロオロするピアニストが笑える。
13:ディノラ/Sei vendicata assai/ルッフォのせいではなく、ひたすら曲がつまらん。
14:Mia sposa sara la mia bandiera/なんか知らない歌ですが、真面目くさった歌唱がなかなか良いです。後半の高音もするすると…と思ったら、いきなり声が割れやがりました…orz こんな歌い方してよく声帯を傷めなかったもんです。
15:ボエーム/おおミミ、きみは戻ってこない/ロドルフォと大声合戦してる…orz 泣けない! このボエームは泣けない! マルチェッロ役で女子に人気があったというのが全くもって信じられない。
ルッフォの声が大きすぎたのか、テノールを集音ラッパの近くに立たせて、ルッフォは遠ざけられているようですww 途中からにじり寄ってきているようだけどww テノールはアメデオ・バッシという人。
* *
16~25:1906年10月 ミラノ グラモフォン&タイプライター社
16:セビリアの理髪師/私は町の何でも屋/再挑戦?したフィガロは力みがとれていい感じ。相変わらず変なおじさん的なオーラはあるが、声色にいろんな変化を出せるようになってる。この役にふさわしい可愛いげもあるね。
17:ファウスト/門出を前に/どうしたんだルッフォ!苦手な低音がキレイに出てるぞ!ただの大声に奥行きが加わって、まるで王者のようではないか この一年の間に何があった!? ポケモンの中ではこの役はブランが最高だけど、次点をあげていい。威厳では(それが必要な役かどうかは別として)むしろルッフォの方が…。
18:トロヴァトーレ/君が微笑み/これも再挑戦。1905年のは半分以上カットだったが今回は丸ごと歌いきっている。そしてこれも素晴らしい出来。ドラマティックに広がる声の響き、天井破りの高音域。合間合間に「ぶはぁ~っ!」と息を吸う音も男らしいぞー!! これぞ恋するライオンだ!ルッフォーーーーーーーーヽ(;▽;)ノ
19:椿姫/プロヴァンスの海と陸/これも再挑戦。29才にしてこの苦みばしった親父っぷり。悲哀感ベタベタのビブラートが良いぞ! ルッフォーーーー!ヽ(;▽;)ノ
20:リゴレット/泣くがいい娘よ/ルッフォのリゴレットは白眉~~~。・゜・(ノД`)・゜・。それにしても28才にしてこの爺さんっぷりはww マリア・ガルヴァニーも、たまに蚊の羽音みたいな声になるけど、ジルダとしてはけっこう理想的だと思う。本当に泣いてるみたいで。
21:椿姫/お泣きなさい不幸な人よ/歌う人が歌うとヴィオレッタとジェルモンの盛大な濡れ場になってしまう二重唱だが、ルッフォにはその心配はなし。普通にハマってるけど、あんまり心はこもってないな。ルッフォはキャラ的にはアルフレードだからな。
22:運命の力/脅迫や暴言は/うんちか最大のオモシロシーン、大相撲デュエットの録音が残っているとは何たる幸せ。ルッフォはここでも受け相撲。アルヴァーロがへなちょこすぎて相手にならん。決まり手としては「吊り出し」か。何しろルッフォは幕下付出しデビュー、史上最短で十両昇進だかんね?!(エヘン)
23:リゴレット/Ah! veglia o donna/素晴らしい爺さん声!不幸な異形の老いぼれそのもの! 実は精力ギラギラの大声なんだけど、ビブラートを惨めったらしく揺らして老人らしさを強調してる。ガルヴァニーもややノッペリだけど良い仕事してます。
24:リゴレット/No, vecchio t'inganni /これは…ものすごいハイテンション!デフォルトがモッサリなルッフォがキレて高速ツッパリ大暴れ!相手はジルダよww ヒストリカルを舐めたらあかん!ルッフォーーーーーーーーヽ(;▽;)ノ
25:リゴレット/Miei signori, perdono/いいぞ、泣け泣けーー! やっぱこの人のリゴレットは絶品だ。惨めったらしさ鬱陶しさ200%!ルッフォーーーーーーーーぉ。・゜・(ノД`)・゜・
* *
26~27:1907年5~6月
26:マレーナ/Ma tu sfiorata/この曲と次のが謎なんですが、作曲者と指揮者の名前にエットレ・ティッタとある。これはルッフォの兄の名前。確か兄は聖チェチーリアで作曲を学んでいまして、イタリアの劇場でオペラの指揮なんかもしていたみたいです。ヴェリズモ風のきれいな曲です。
27:マレーナ/Disse il saggio/これもエットレ・ティッタの曲。民謡っぽい感じだが、コード進行はやけにモダン。そしてあんまりオモシロくない。まぁ、ルッフォがゴキゲンに歌ってるから良しとしよう。
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Titta Ruffo Edition 1-2 (全25曲)
1~25:1907年10~11月 ミラノ グラモフォン
1:アムレット/spettro santo/イタリア語だとますます雰囲気違って聴こえる…orz 直前にハンプソンのとろけるような歌唱を聴いていたので、それに慣れた耳には、ルッフォなんて雄叫びをあげるターザンr(ry
2:アムレット/Spettro infernal/「あ~!ぱーどれ…」って、パパはアンタだろ?とツッコミたくなるwww こんな爺さんみたいな声でハムレットなんて、やっぱり何かの冗談としか(笑) こっぱずかしくて聴いてらんない。誰か助けて…
3:トロヴァトーレ/わしの心は嫉妬のために(レオノーラ、マンリーコ付き)/た、助かった…。 これはとんでもなくカッコいい!ルッフォーーーー!ヽ(;▽;)ノ 怒りと嫉妬にがお~っと吼えて、これぞ男の中の男! あたしゃルーナにはフェロモンよりテストステロンを求めますよ!
ちなみにレオノーラを歌っているのはフォスカ・ティッタ。ルッフォの妹で、彼女も歌手でした。1903年にローマのキリノ劇場にて同役でデビュー、1908年頃に寿引退。スピントだったそうですが、ごめん、あんまり上手くはないですw ティッタ家、なにげに音楽一家だったんですねぇ~。
4:清教徒/ラッパを吹き鳴らせ/修行時代にバスと判定されたルッフォが低いほうを歌っております。ルッフォの声も決して低くはないけど、重いから重心が取れていいのかも。ラストは一緒に上げてほしかった。ルッフォならいける気もするが、ここでは冒険はしなかったようです。ハイCも出せたという伝説はありますけど・・
5:ドン・ジョヴァンニ/窓辺に出でよ/随分とのめり込んで歌ってるけど、ハッキリ言ってヘタクソですよ! 音ハズレてますよ。休符まちがってますよ。そして何なんですか、ラストの無意味なオクターブ上げと長伸ばしは。今後いっさいモーツァルトを歌うのは禁止する!
6:アムレット/Nega se puoi la luce/この二重唱はとんでもなくロマンティックで素敵な筈なんだけど、どうしてもリゴレットとジルダ父娘に聴こえてしまう。なぜこの役が当たったんだか未だに理解できません。誰も止めなかったのか? 同世代のバリトンどもはいったい何をしてたんだ?
7:アムレット/乾杯の歌/ ん~でも、彼のハムレットを飽きるほど聴き続けてわかったことがあります。当たったのは、ルッフォの燃えたぎる情熱がゆえ。この情熱的な歌唱が同時代の他のバリトンを凌駕したのでしょう。それがオヤジ声のわめき歌唱であろうと。ベネデッタの存在はデカかったんですね。ようやく当時の観客達の気持ちがわかってきたような。(←突然手のひらを返す・・・)
8:ドン・カルロ/あなたを抱くことのできる私は/再録音。05年の歌唱も良かったけど、こちらは力ずく一辺倒を脱し、叙情性が更に豊かに。豊かになりすぎて泣き声が滑稽に聴こえるほど。同じ嗚咽をリゴレットて聴いたぞww そして最後で声が普通に裏返っているのもオイシイ。
9:セビリアの理髪師/Dunque io son/懸念していたより普通に歌えているんだけど、イタい作り声の合間に、いきなりいつもの唸りと咆え声が入ってコ、コワイ…。ロジーナのガルヴァニーは上手いな。
10:アムレット/E tu! sparito sei ... Essere o non essere/生きるべきか死ぬべきか。パリで、ここを歌いながら幽体離脱したらしい。うん、確かに、お迎えがきたじーちゃんみたいだゾww
11:リゴレット/Pari siamo/良すぎて褒め言葉がみつからないw もともと物悲しい響きのある声音に加えて、30才の肉体の放つ大声量がこの壮絶さを生んでいるのだな。時期的に、永遠の心の恋人を亡くした直後だし(なるほど、それが突然上手くなった要因か…!)
12:道化師/プロローグ/後半の一部。この歌は好きだが、泣きたくなったのはルッフォが初めて。ヴェリズモオペラの時代に青春時代を送った人だからだろう。現代の歌い手にこの味わいは出せない。でもモレルの歌唱と聴き比べることができるなら、ルッフォも相当新しく感じるに違いない。
* *
13~14:1908年11月21日
13:E la mia dama/……ご機嫌に歌っていらっしゃるご様子で、私も嬉しうございます。
14:ドン・ジョヴァンニ/お手をどうぞ/幼女とロリコンのおじさん。ヘンタイか?(´Д` ) 最後の倍速 Andiam! Andiam! が最大のオモシロポイント。つか、誰も止めなかったんだろうか…orz
15~17:1908年11月23日
15:E canta il grillo(そしてコオロギは歌う)/とても泣ける歌。虫の声に心を寄せるのは日本人だけだと思っていたけど、こんなイタリア歌曲もあるのね。ルッフォの歌唱もとても素朴で優しい。昔話を語るかのようで、心にしみ入る…(´_`。)グスン
16:アムレット/Come il romito fior /おいめ~おふぇりあ~みぃ~あ~~。・゜・(ノД`)・゜・。(←感想を書く気がない)
17:リゴレット/O mia Gilda! … lassu in ciel /ルッフォの迫真の歌唱とパレートの蚊のなくようなヘロヘロ声とのギャップがなんとも…。まぁルッフォのリゴレットが聴けりゃ何でもいい。
18~19:1908年11月24日
18:トロヴァトーレ/Per me ora fatale/こ、こんな中途半端な部分まで録音があるとはなんたる至福! 同じおやじ声でもグロ様の10倍ルーナっぽい!ルッフォにしては滑舌も良い! お得意の長伸ばしと下降グリッサンドが色っぺー!ルッフォーーーーー!ヽ(;▽;)ノ
19:リゴレット/ララ、ララ…悪魔め!鬼め!/ルッフォーーーーー!ヽ(;▽;)ノ(←毎度すみませんね)
20~21:1908年11月25日
20:Meriggiata/何の歌か知りませんが(レオンカヴァッロだそうです)、ルッフォのテンションが異様に高いww 目の前でやられたらコワくて固まると思うww やっぱこの人には機嫌良く大声を張り上げていてもらいたいものです。この剣幕、めちゃくちゃ癒されるわ?(笑)
21:カルメン/諸君の杯を喜んで受けよう(闘牛士の歌)/合唱付き/2番のみ/可もなく不可もなし。一応、これを聴いてルッフォを好きになったんですけどね。⇒⇒初ルッフォの感想はこちら
22~23:1908年11月26日
22:チャタートン/ Tu sola a me rimani, o poesia/以前にも録音して、めちゃんこ鬱陶しかったやつですねw 表現に幅が出てきて、突然泣いたりしてオモシロいんだけど、前よりも地味になった気が…。元々そーゆー歌なんですかね。辛気臭いなぁ。
23:Non penso a lei/この歌も複数回録音しているよう。こちらのほうが後年のよりアドリブが多く技巧を尽くしているけど、途中で「アッハハハ!」と笑うところのテンションが低い。もっと上げようよ。ルッフォからテンションを取ったらただのじーさんだから、私もそこはこだわるわけです。
24:ジョコンダ/おおモニュメントよ!/ルッフォのスケールの大きな歌唱を誇示するにはうってつけ。世界征服を宣言するかのような咆哮w
25:ジョコンダ/漁師よ、餌を沈めよ!/(しょぼい)合唱付き/ルッフォの数ある録音のうち、ベストと呼べるものの一つだと、個人的には思います。地味だけど。この人の驚異的な息の長さを存分に堪能できる。伸ばしすぎて曲の原型を留めていないがw ラストのアクートなど昇天もの。
⇒⇒ティッタ・ルッフォEdition 2 へ
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(*1)YouTubeのコメントなどを読むと、どうやら《オテロ》以外にもカルーソーと録った二重唱がある、という噂が。《ジョコンダ》だそうで、何かオトナの事情があって世に出さなかった…みたいに言われています。
しかしルッフォのこの録音集にはボツ音源も収録されているので、もし《ジョコンダ》が存在しているならとっくに出していると思うのですよねぇ。遺言で「世に出すな」とか言われていなければ、ですが(笑)
1巻毎にそれぞれCDが2枚あり、Edition Vol.1(52曲)、Vol.2(47曲)、Vol.3(43曲)、計142曲。ルッフォが録音に前向きだったとは聞いていましたが、こんなにあるとは思いませんでした。
至福の極みです。
特にVol.1 は、1905年のパテ兄弟社での録音が入っており、ルッフォの初期の歌唱がどんなだったかを知る上でも大変貴重。なにしろ28才という若い時代の歌唱。
さぞ素敵だったんでしょうねぇ…・:*:・(*´エ`*)ウットリ・:*:・と、ワクワクしながら聴いてみたところ、
びっくりするほど下手くそだった!
……という事実も判明www
(いるかどうかわからないけどファンの皆さんごめんなさい)
とにかく大声でやかましくて、情感もへったくれもなく、おまけにオンチで、聞くに耐えずにすっ飛ばしたくなる曲もいくつか……orz
後年の録音のあの素晴らしさは何なんでしょう。この時の録音から10年くらいの間に技術と芸術性が飛躍的に向上したに違いなく、芋虫ルッフォを蝶に変身させた要因はいったい何だったのかと、自伝を読み返してあれこれ妄想を膨らませるのもこれまた楽しく。
Twitterでこれまた粘着に感想をつぶやきましたので、今年中にこちらに転記しておこうと思います。
続けて聴いているうちにだんだん頭がおかしくなってきて、コメント(声)が裏返っている部分はご容赦をww
ちなみに、ルッフォの録音の多くは「アコースティック録音(ラッパ録音)」と呼ばれる方法で録ったもの。マイクではなく、メガホンの大きいほうの開口部に向かって
二重唱などでどちらか一方の歌手の声が遠く聴こえるのはポジション争いに負けたためと思われますww
⇒⇒ティッタ・ルッフォEdition 2 へ
⇒⇒ルッフォについての過去記事はこちらから
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Titta Ruffo Edition 1-1 (全27曲)
1~15:1905年5~6月 パリ パテ兄弟社
1:ザザ/おまえはいい女だ /これはまだマシなほうで、高音なんかきれいに伸びてる。しかし低音がひどく、出ない音を無理やり絞り出してて痛々しい。後年の録音では、ルッフォのこの歌は涙無しには聴けないというに。
2:ザザ/可愛いジプシー娘よ/ちゃんとなめらかに歌えてるけどひたすら棒読み&大声だ。あーうるさいうるさい。でも、声はほんとに輝いている。これぞ私の愛するルッフォの声です。だからラストは息切れしなさんなw
3:アムレット/乾杯の歌/さすがに聴き飽きたけど感想は付けにゃ。初役大当たり直後の録音なので当時の歌唱を想像できる。テンポはかなり遅く、慎重にがなりたててる感じw カデンツァは長いけど、この頃はまだ無理やり感が強く、滑らかさが足りないな。
4:セビリアの理髪師/私は町の何でも屋/変なおじさんが大声で何ごとかわめきながら走って追いかけてくる感じ。コ、コワイ…。
5:ラ・ファヴォリータ/来たれレオノーラ/私がドニゼッティ好きじゃないこともあって、余計に点が下がるんだろうが…。一言でまとめると「鬱陶しい」。でもルッフォのこの鬱陶しさが好きだったりする。女心はかくも複雑。
6:シベリア/O bella mia/下手くそなパテ社時代の録音の中でこれがいちばんひどいww な、なんて乱暴な歌唱…! 声が完全に嗄れてますよ! よく聴くと痰を切る音まで入っていて笑えるし!
7:トロヴァトーレ/君が微笑み/正直、こんなグダグダなルーナは初めてですよ? 鬱陶しい、鬱陶しいぞ。グロソップのルーナが正統派に思えてくるわ。
8:椿姫/プロヴァンスの海と陸/ああ…ヴェルディ屈指の名アリアをこんなにしちゃって…。
9:ファウスト/ヴァランタンの死/誰ですか。「ヴァランタンほど深く掘り下げて考察した役はない」なんて自慢していたのは!これじゃ妹の首を締めつつガンガン地面に打ちつけてるただの暴力アニキですよ。
10:フェドーラ/ロシア女は女らしくて愛しいが/これも際限なく鬱陶しい大声歌唱なんだけど、曲調に合ってて良い雰囲気。ルッフォはラブソングよかこういう素朴でカワイイ民謡風なのを機嫌よく歌ってりゃいいんだよ~。なんて言ったらご本人からクレームがきそうだけどww ルッフォは酷評されるとすべて「陰謀だ」って騒ぐからな。
11:チャタートン/Tu sola me rimani , o poesia/(ルッフォのせいかもしれないけど)なんともつまらん歌ですな。レオンカヴァッロの辛気臭さとルッフォの鬱陶しさはかなり相性が良いと思う。当時はこの組み合わせ、ウケたんだろうな。
12:ドン・カルロ/あなたを抱くことができる私は/やっぱ辛気臭い歌だと輝くのね(笑)大きな声で旋律をふっくらと包むような歌唱がとても素敵。なにげにこの人のロドリーゴは良いのです。男前ではないけど誠意がある。そして、伴奏を間違えてオロオロするピアニストが笑える。
13:ディノラ/Sei vendicata assai/ルッフォのせいではなく、ひたすら曲がつまらん。
14:Mia sposa sara la mia bandiera/なんか知らない歌ですが、真面目くさった歌唱がなかなか良いです。後半の高音もするすると…と思ったら、いきなり声が割れやがりました…orz こんな歌い方してよく声帯を傷めなかったもんです。
15:ボエーム/おおミミ、きみは戻ってこない/ロドルフォと大声合戦してる…orz 泣けない! このボエームは泣けない! マルチェッロ役で女子に人気があったというのが全くもって信じられない。
ルッフォの声が大きすぎたのか、テノールを集音ラッパの近くに立たせて、ルッフォは遠ざけられているようですww 途中からにじり寄ってきているようだけどww テノールはアメデオ・バッシという人。
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16~25:1906年10月 ミラノ グラモフォン&タイプライター社
16:セビリアの理髪師/私は町の何でも屋/再挑戦?したフィガロは力みがとれていい感じ。相変わらず変なおじさん的なオーラはあるが、声色にいろんな変化を出せるようになってる。この役にふさわしい可愛いげもあるね。
17:ファウスト/門出を前に/どうしたんだルッフォ!苦手な低音がキレイに出てるぞ!ただの大声に奥行きが加わって、まるで王者のようではないか この一年の間に何があった!? ポケモンの中ではこの役はブランが最高だけど、次点をあげていい。威厳では(それが必要な役かどうかは別として)むしろルッフォの方が…。
18:トロヴァトーレ/君が微笑み/これも再挑戦。1905年のは半分以上カットだったが今回は丸ごと歌いきっている。そしてこれも素晴らしい出来。ドラマティックに広がる声の響き、天井破りの高音域。合間合間に「ぶはぁ~っ!」と息を吸う音も男らしいぞー!! これぞ恋するライオンだ!ルッフォーーーーーーーーヽ(;▽;)ノ
19:椿姫/プロヴァンスの海と陸/これも再挑戦。29才にしてこの苦みばしった親父っぷり。悲哀感ベタベタのビブラートが良いぞ! ルッフォーーーー!ヽ(;▽;)ノ
20:リゴレット/泣くがいい娘よ/ルッフォのリゴレットは白眉~~~。・゜・(ノД`)・゜・。それにしても28才にしてこの爺さんっぷりはww マリア・ガルヴァニーも、たまに蚊の羽音みたいな声になるけど、ジルダとしてはけっこう理想的だと思う。本当に泣いてるみたいで。
21:椿姫/お泣きなさい不幸な人よ/歌う人が歌うとヴィオレッタとジェルモンの盛大な濡れ場になってしまう二重唱だが、ルッフォにはその心配はなし。普通にハマってるけど、あんまり心はこもってないな。ルッフォはキャラ的にはアルフレードだからな。
22:運命の力/脅迫や暴言は/うんちか最大のオモシロシーン、大相撲デュエットの録音が残っているとは何たる幸せ。ルッフォはここでも受け相撲。アルヴァーロがへなちょこすぎて相手にならん。決まり手としては「吊り出し」か。何しろルッフォは幕下付出しデビュー、史上最短で十両昇進だかんね?!(エヘン)
23:リゴレット/Ah! veglia o donna/素晴らしい爺さん声!不幸な異形の老いぼれそのもの! 実は精力ギラギラの大声なんだけど、ビブラートを惨めったらしく揺らして老人らしさを強調してる。ガルヴァニーもややノッペリだけど良い仕事してます。
24:リゴレット/No, vecchio t'inganni /これは…ものすごいハイテンション!デフォルトがモッサリなルッフォがキレて高速ツッパリ大暴れ!相手はジルダよww ヒストリカルを舐めたらあかん!ルッフォーーーーーーーーヽ(;▽;)ノ
25:リゴレット/Miei signori, perdono/いいぞ、泣け泣けーー! やっぱこの人のリゴレットは絶品だ。惨めったらしさ鬱陶しさ200%!ルッフォーーーーーーーーぉ。・゜・(ノД`)・゜・
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26~27:1907年5~6月
26:マレーナ/Ma tu sfiorata/この曲と次のが謎なんですが、作曲者と指揮者の名前にエットレ・ティッタとある。これはルッフォの兄の名前。確か兄は聖チェチーリアで作曲を学んでいまして、イタリアの劇場でオペラの指揮なんかもしていたみたいです。ヴェリズモ風のきれいな曲です。
27:マレーナ/Disse il saggio/これもエットレ・ティッタの曲。民謡っぽい感じだが、コード進行はやけにモダン。そしてあんまりオモシロくない。まぁ、ルッフォがゴキゲンに歌ってるから良しとしよう。
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Titta Ruffo Edition 1-2 (全25曲)
1~25:1907年10~11月 ミラノ グラモフォン
1:アムレット/spettro santo/イタリア語だとますます雰囲気違って聴こえる…orz 直前にハンプソンのとろけるような歌唱を聴いていたので、それに慣れた耳には、ルッフォなんて雄叫びをあげるターザンr(ry
2:アムレット/Spettro infernal/「あ~!ぱーどれ…」って、パパはアンタだろ?とツッコミたくなるwww こんな爺さんみたいな声でハムレットなんて、やっぱり何かの冗談としか(笑) こっぱずかしくて聴いてらんない。誰か助けて…
3:トロヴァトーレ/わしの心は嫉妬のために(レオノーラ、マンリーコ付き)/た、助かった…。 これはとんでもなくカッコいい!ルッフォーーーー!ヽ(;▽;)ノ 怒りと嫉妬にがお~っと吼えて、これぞ男の中の男! あたしゃルーナにはフェロモンよりテストステロンを求めますよ!
ちなみにレオノーラを歌っているのはフォスカ・ティッタ。ルッフォの妹で、彼女も歌手でした。1903年にローマのキリノ劇場にて同役でデビュー、1908年頃に寿引退。スピントだったそうですが、ごめん、あんまり上手くはないですw ティッタ家、なにげに音楽一家だったんですねぇ~。
4:清教徒/ラッパを吹き鳴らせ/修行時代にバスと判定されたルッフォが低いほうを歌っております。ルッフォの声も決して低くはないけど、重いから重心が取れていいのかも。ラストは一緒に上げてほしかった。ルッフォならいける気もするが、ここでは冒険はしなかったようです。ハイCも出せたという伝説はありますけど・・
5:ドン・ジョヴァンニ/窓辺に出でよ/随分とのめり込んで歌ってるけど、ハッキリ言ってヘタクソですよ! 音ハズレてますよ。休符まちがってますよ。そして何なんですか、ラストの無意味なオクターブ上げと長伸ばしは。今後いっさいモーツァルトを歌うのは禁止する!
6:アムレット/Nega se puoi la luce/この二重唱はとんでもなくロマンティックで素敵な筈なんだけど、どうしてもリゴレットとジルダ父娘に聴こえてしまう。なぜこの役が当たったんだか未だに理解できません。誰も止めなかったのか? 同世代のバリトンどもはいったい何をしてたんだ?
7:アムレット/乾杯の歌/ ん~でも、彼のハムレットを飽きるほど聴き続けてわかったことがあります。当たったのは、ルッフォの燃えたぎる情熱がゆえ。この情熱的な歌唱が同時代の他のバリトンを凌駕したのでしょう。それがオヤジ声のわめき歌唱であろうと。ベネデッタの存在はデカかったんですね。ようやく当時の観客達の気持ちがわかってきたような。(←突然手のひらを返す・・・)
8:ドン・カルロ/あなたを抱くことのできる私は/再録音。05年の歌唱も良かったけど、こちらは力ずく一辺倒を脱し、叙情性が更に豊かに。豊かになりすぎて泣き声が滑稽に聴こえるほど。同じ嗚咽をリゴレットて聴いたぞww そして最後で声が普通に裏返っているのもオイシイ。
9:セビリアの理髪師/Dunque io son/懸念していたより普通に歌えているんだけど、イタい作り声の合間に、いきなりいつもの唸りと咆え声が入ってコ、コワイ…。ロジーナのガルヴァニーは上手いな。
10:アムレット/E tu! sparito sei ... Essere o non essere/生きるべきか死ぬべきか。パリで、ここを歌いながら幽体離脱したらしい。うん、確かに、お迎えがきたじーちゃんみたいだゾww
11:リゴレット/Pari siamo/良すぎて褒め言葉がみつからないw もともと物悲しい響きのある声音に加えて、30才の肉体の放つ大声量がこの壮絶さを生んでいるのだな。時期的に、永遠の心の恋人を亡くした直後だし(なるほど、それが突然上手くなった要因か…!)
12:道化師/プロローグ/後半の一部。この歌は好きだが、泣きたくなったのはルッフォが初めて。ヴェリズモオペラの時代に青春時代を送った人だからだろう。現代の歌い手にこの味わいは出せない。でもモレルの歌唱と聴き比べることができるなら、ルッフォも相当新しく感じるに違いない。
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13~14:1908年11月21日
13:E la mia dama/……ご機嫌に歌っていらっしゃるご様子で、私も嬉しうございます。
14:ドン・ジョヴァンニ/お手をどうぞ/幼女とロリコンのおじさん。ヘンタイか?(´Д` ) 最後の倍速 Andiam! Andiam! が最大のオモシロポイント。つか、誰も止めなかったんだろうか…orz
15~17:1908年11月23日
15:E canta il grillo(そしてコオロギは歌う)/とても泣ける歌。虫の声に心を寄せるのは日本人だけだと思っていたけど、こんなイタリア歌曲もあるのね。ルッフォの歌唱もとても素朴で優しい。昔話を語るかのようで、心にしみ入る…(´_`。)グスン
16:アムレット/Come il romito fior /おいめ~おふぇりあ~みぃ~あ~~。・゜・(ノД`)・゜・。(←感想を書く気がない)
17:リゴレット/O mia Gilda! … lassu in ciel /ルッフォの迫真の歌唱とパレートの蚊のなくようなヘロヘロ声とのギャップがなんとも…。まぁルッフォのリゴレットが聴けりゃ何でもいい。
18~19:1908年11月24日
18:トロヴァトーレ/Per me ora fatale/こ、こんな中途半端な部分まで録音があるとはなんたる至福! 同じおやじ声でもグロ様の10倍ルーナっぽい!ルッフォにしては滑舌も良い! お得意の長伸ばしと下降グリッサンドが色っぺー!ルッフォーーーーー!ヽ(;▽;)ノ
19:リゴレット/ララ、ララ…悪魔め!鬼め!/ルッフォーーーーー!ヽ(;▽;)ノ(←毎度すみませんね)
20~21:1908年11月25日
20:Meriggiata/何の歌か知りませんが(レオンカヴァッロだそうです)、ルッフォのテンションが異様に高いww 目の前でやられたらコワくて固まると思うww やっぱこの人には機嫌良く大声を張り上げていてもらいたいものです。この剣幕、めちゃくちゃ癒されるわ?(笑)
21:カルメン/諸君の杯を喜んで受けよう(闘牛士の歌)/合唱付き/2番のみ/可もなく不可もなし。一応、これを聴いてルッフォを好きになったんですけどね。⇒⇒初ルッフォの感想はこちら
22~23:1908年11月26日
22:チャタートン/ Tu sola a me rimani, o poesia/以前にも録音して、めちゃんこ鬱陶しかったやつですねw 表現に幅が出てきて、突然泣いたりしてオモシロいんだけど、前よりも地味になった気が…。元々そーゆー歌なんですかね。辛気臭いなぁ。
23:Non penso a lei/この歌も複数回録音しているよう。こちらのほうが後年のよりアドリブが多く技巧を尽くしているけど、途中で「アッハハハ!」と笑うところのテンションが低い。もっと上げようよ。ルッフォからテンションを取ったらただのじーさんだから、私もそこはこだわるわけです。
24:ジョコンダ/おおモニュメントよ!/ルッフォのスケールの大きな歌唱を誇示するにはうってつけ。世界征服を宣言するかのような咆哮w
25:ジョコンダ/漁師よ、餌を沈めよ!/(しょぼい)合唱付き/ルッフォの数ある録音のうち、ベストと呼べるものの一つだと、個人的には思います。地味だけど。この人の驚異的な息の長さを存分に堪能できる。伸ばしすぎて曲の原型を留めていないがw ラストのアクートなど昇天もの。
⇒⇒ティッタ・ルッフォEdition 2 へ
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(*1)YouTubeのコメントなどを読むと、どうやら《オテロ》以外にもカルーソーと録った二重唱がある、という噂が。《ジョコンダ》だそうで、何かオトナの事情があって世に出さなかった…みたいに言われています。
しかしルッフォのこの録音集にはボツ音源も収録されているので、もし《ジョコンダ》が存在しているならとっくに出していると思うのですよねぇ。遺言で「世に出すな」とか言われていなければ、ですが(笑)
タグ:ティッタ・ルッフォ
2012-12-25 14:51
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