SSブログ

ヤナーチェク《マクロプロス家の事》@日生劇場11/20 [オペラ実演レポ]

makropulos.jpg 《マクロプロス事件》という訳のほうが一般的かもしれません。ほかにも《マクロプロスの秘事》という訳もあり、'06年の東京交響楽団定期演奏会ではこちらのタイトルでした。

 チェコ語の原題は“Vĕc Makropulos”ですが、この"Vĕc"をどう解釈するかによって訳が変わってくるのだそうです。
 「事」とか「物」とか「あれ」とか「それ」とか、多義的というか曖昧なので、今回の二期会による上演では、観客に先入観を与えないよう、出来る限り原題の雰囲気を生かした翻訳をこころがけたのだとか。

 私も、単に「事」とした今回の翻訳がいちばんしっくり来ると思います。ほとんど予備知識ゼロの状態でこのオペラを観たのですけど、「秘事」とか「事件」などとしてしまうと、胸に残っている余韻とはかなりズレてしまいます。

 不老不死の薬を飲んで337年も生き続ける絶世の美女と、翻弄される男たちの物語。設定だけを読めば荒唐無稽でバカバカしいので、ついつい三面記事的な派手な訳語を当てはめてしまいがちですけれども、ヤナーチェクが注目した主題は「とほうもなく長生きをすることの驚異」ではなく「死による救い」でありますから、センセーショナルな字面に頼るべきではないでしょう。

"あなたたちには、この世の全てが意味をなす。
あなた達には、この世の全てに価値がある。
ものの見えぬ人たち、あなたたちは幸せ。
早々に死ぬという運命に恵まれているのだから。"


 ヒロイン、エリナ・マクロプロスの驚異的な長寿は本人が意図して得たものではなく、典医の家に生まれた運命や為政者の気まぐれに利用されたが故の悲劇です。「事件」や「秘事」と限定するより、理不尽な人間世界の営みすべてを包括した「事」という訳語を当てはめたほうが、物語の主題を損なうことなく観る側に伝えることができるではと思います。

続きを読む


[再掲] 聴きました! 《キャンディード》@ロイヤル・フェスティバル・ホール [アレンのミュージカル]

 ※11/22 :試聴ファイル追加しました。

rfh.jpg 05年ロイヤル・フェスティバル・ホールでの《キャンディード》。BBCで放送された音源の情報をこちらの記事で募りましたところ、keyakiさんが真っ先にご連絡をくださったのですが、他の複数の方々からもご提供をいただきました。皆さん、本当にありがとうございます。(ワタシのファン道は、皆サマの生温かい励ましと通報、“施し”によって成り立っております)

 めでたく聴くことができましたので、かる~く感想などを。(もちろん、じーちゃん中心です。あしからず)

 演奏会形式だったこともかなり影響していると思いますが、ざっと聴いたところでは、「まぁ、こんなものかナ」という印象です。

 やはり歌だけじゃなくて、合間合間に芝居がないと、この作品の魅力は伝わりにくいんだと思います。バーンスタインの音楽だけでもとても魅力的なんですけれども、同じフレーズの繰り返しも多いので、音楽だけだとワンパターンに感じちゃいます。

 メロディラインが同じなのは、ストーリー上そうでなければならない理由がちゃんとあるからで、それこが芝居で表現されるべきポイントなんですよね。もちろん「語り」が入りますけど、それだけだとつらいです。(まぁ、ところどころで観客の笑い声が入っていますので、棒立ちではなく、何かカンタンな小芝居をしていたことは間違いないと思いますけど)



続きを読む


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。