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トビー・スペンスの《キャンディード》@ENO [オペラ録音・映像鑑賞記]

tobyspence1.jpg 演出についての自主勉強も終わったことだし、いよいよENO《キャンディード》の感想に移ります。

 まずは、主役のキャンディードを歌った英国人の若手テノール、トビー・スペンスをご紹介。
 苦手な徹夜までしてこの放送を録音したのは、ひとえに彼の声とパフォーマンスを聴きたいがためだったのです。

 生年月日は非公開。音楽一家に生まれ育ったサラブレッドで、オックスフォードのニューカレッジで合唱を、更に名門ギルドホール音楽演劇学校で声楽を学んだ秀才君。在学中にWelsh National Operaの《イドメネオ》に出演し、プロ歌手としてのキャリアをスタートさせたとウィキペディアには載っております。

 レパートリーは主にモーツァルトやヘンデル、ロッシーニ。
 これまでのキャンディードシリーズで取り上げたテノール君たちのレパートリーも、モーツァルトやバロックものが多いので、キャンディード役に要求される“声”の傾向もだんだん理解できてきました。

 嬉しいことに、ブリテンのオペラ2作もレパートリーに入っています。《ビリー・バッド》の新兵というのは、まぁ若いからということもあるでしょうけど、もう一つは《カーリュー・リヴァー》の狂女!!
 これを知った瞬間、私のマニア心に一気に火が点いてしまいました!!
 すンごいんですのよ~、この役は!!
 能の《隅田川》を題材にした教会寓話三部作の一つで、上演される機会は少ないのですが、これは是非トビー君で体験したいと思います。もち、生で。

 その他、トビー君の代表作として是非心に留めていただきたいのは《テンペスト》。ベンジャミン・ブリテンの再来と言われている作曲家トーマス・アデスによる新作オペラで、初演は2004年2月。トビー君の役はナポリの王子フェルディナンドだそうです。

 おっと、《キャンディード》の感想を書いていたんでした。

 キャンディード(カンディード)という名前の意味は、ズバリ「天真爛漫」ということで、この役を担当するテノールも、明るい声で屈託の無い、嫌味のない純粋な歌唱を売りにしている人でなければ全然サマになりません。

 少しでも悲壮感が漂う声だと、第一声からブチ怖し。かといってパヴァ神みたいなのじゃ、純真無垢を通り越して頭悪すぎになっちゃいます。

 キャンディードは一途すぎるところもありますけれども、決しておバカさんなキャラではありませんから、その辺りの微妙な匙加減が大変重要。与えられた歌もワンパターン気味なので、観客を惹きつける魅力も兼ね備えている必要がありますしね。

 その点、童顔で笑顔のさわやかなトビー君なら、見た目も合格100点満点。
 肝心の歌唱においても、まったくもって理想的なキャンディードでありました。NYのポール・グローブズもロイヤル・フェスティバル・ホールでのマイケル・スラッテリーも、理想的なキャンディードには違いありませんが、トビー君はちょっと別格。ファンの贔屓耳でしょうけれども、“輝き”と“華”で勝っていました。


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