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No.1~5 シュロット, グァッレーラ, マッサール①, ティベット, ミルンズ ["闘牛士の歌" 聴き比べ]

聴き比べ企画 Chanson du Toréador -- 100人の「闘牛士の歌」 もくじはこちら

※4/9 マッサールの写真を差し替えてみました。
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No.1 アーヴィン・シュロット(Erwin Schrott) ウルグアイ 1972 -
 原調/フランス語/2009年コンサート音源 ⇒YouTube
 囁き声で歌ってみたり、シャンソンっぽく(?)崩したりしていますが、コンサートだからそういう歌唱をしているのかもしれませんが、とても器用だと思いますが、闘牛士のイメージには合わないと思う。
 エスカミーリョは伊達男でモテるけど、英雄。女ったらしな放蕩者ではありません。
 この人はドン・ジョヴァンニが良いでしょう。


No.2 フランク・グァッレーラ(Frank Guarrera) アメリカ/1923 - 2007
 原調/フランス語/1953年のライブ録音(Met)
 豪快で陽気なオジさんって感じ。粋な闘牛士のイメージは皆無だが、辛気臭いドン・ホセの対極にあってこれはこれで楽しいから良いです。
 ただ、カルメンはエスカミーリョおじさんの金につられたって感じがするけど。


Massardport.jpgNo.3 ロベール・マッサール①(Robert Massard) フランス/1925 -
 原調/フランス語/1959年のライブ録音(パリ)⇒YouTube
 (なんと! ご存命でいらっしゃいますか?)
 シャッフルで聴いているので、いきなりのド本命です。
 溌剌とした色気、華のある理想的なエスカミーリョ。
 鼻母音の響きがたまりません。この歌がマッチョになりすぎず、上品な色気を漂わせているのは、ひとえにフランス語独特の発音が故だと思う。
 Viva! Viva! Escamillo!
 もうひとつ音源があるので続きはそちらで。


No.4ローレンス・ティベット(Lawrence Tibbett) アメリカ/1896 - 1960
 半音上げ(?)/フランス語/録音年不詳 ⇒YouTube
 同じアメリカ人ながらグァッレーラより仏語の発音がうまい(笑)
 半音上げて歌っている(*1)が、F♯、後半のFも伸びやかで、力強さの中にエレガンスを感じます。
 20世紀初頭のエスカミーリョのスタンダードって、こんな感じだったのかもしれない。


No.5シェリル・ミルンズ(Sherrill Milnes) アメリカ/1935 -
 原調/フランス語/77年の録音
 丁寧に歌っていて好感が持てます。
 装飾音符(短前打音や三連符)をきっちりと歌うのがこの曲の「らしさ」の鍵で、そのおかげで(人によっては)ちょっとニョロけた、色っぽい歌唱が引き出されるのですね。
 ミルンズの真面目さが功を奏しているって感じ。

(*1)確かに原調より半音上がっているのですが、レコードの回転速度の影響のようにも思えます。いかにも蓄音機っぽい音だし。わざわざ半音上げる理由がないし。演奏のスピードも速すぎる気がするし。

Chanson du Toréador -- 100人の「闘牛士の歌」 ["闘牛士の歌" 聴き比べ]

blanctoreador3.jpg 私が今のようなオペラ・ファンになったのは、EMIの『ベスト・オペラ・100』に収録されているエルネスト・ブランの「闘牛士の歌」に一"耳"惚れをしたのがきっかけです。
(しつこいですが、画像をクリックするとブランの歌唱をYouTubeで聴けます)

「何、この声? 爽やかでシュテキー(*´艸`*)  この人でもっと他の曲も聴きたいんだけど!?」

 と、次のお休みの日にさっそく山野楽器へすっ飛んでいって、ブランの全曲盤CD(カルメンじゃなかったけどw)を手に入れたのがその後のコレクター人生のはじめの一歩。

 とても思い入れのある歌なのですが、実は私、ブランという歌手に出会う前は「闘牛士の歌」はそんなに好きでもなかったのです。

 マッチョだし。
 大衆的だし(当時は大衆性と芸術性は相容れないと思い込んでいたアマちゃんでした。許して)。
 洒落臭くてイケイケで、肉食系なヤラシさがむんむんしていて。

 そんな負の印象を見事に覆してくださったのがブランの歌唱だったものですから、「闘牛士の歌」はもう頑なにブラン一神教を貫いてしまっています。

 それでも今回、100人の歌手で「闘牛士の歌」を聴いてみよう、なんて無謀なコトを思い立ったのには、ブランの愛好家としても仲良くさせていただいているお仲間Basilioさんの影響があります。

 ニコライ・ギャウロフの大ファンでいらっしゃるBasilioさん。《ドン・カルロ》のフィリポ2世のアリア、「ひとり寂しく眠ろう」の録音100種を聴き比べ、そのひとつひとつに感想を付けるという偉業を成し遂げられたのですよ。

 なんという粘着なるほど、真のファンとはこうあるべき。盲目的に崇拝するだけでなく、他の多くの歌唱を聴いてそれぞれの良さを見出しつつ、それでもやっぱりこの人が最高!と思える根拠を自覚していくのも必要ダ。と、いたく納得してしまいまして。

 いろいろな人の歌唱をじっくり聴くことによって、新たなご贔屓歌手に巡り会えるかもしれませんしね。できれば当代の若いバリトンであれば嬉しいのですが(なぜか昔の人ばかり好きになるから)。

 というわけで、付け焼刃ながら「闘牛士の歌」の音源をガツガツ集めて聴いております。
 玉石混交でただいま62録音。
 できれば100まで頑張りたいので、お勧めの音源がありましたら皆さん通報してください。

 感想の実況はツイッターにて。⇒こちら

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No.81~83 ベリー, クヴィエチェン, ギュゼレフ
No.76~80 テジエ②, トゥマニャン, エンドレーズ, コー, ルイヨン
No.71~75 フィッシャー=ディスカウ, レイミー, ヴィノグラードフ②, ルッフォ, ドス
No.66~70 グラッシ, コロンバーラ, ベッキ, グエルフィ, プライ
No.61~65 ディアス, マッサール②, マルコンデス, ダミアーニ, アルベルギーニ
No.56~60 マズロク②, ナウリ, ブラン③, トゥマニャン①, ヘルマン
No.51~55 ボルテール, ケテルセン, クラウゼ, ダン, メッテルニヒ
No.46~50 アマート, マズロク①, マレール, メリル, テジエ①
No.41~45 アブドラザコフ, フィンリー, ピンツァ, カプッチッリ, ターフェル
No.36~40 コルヴェロ, ガレッフィ, アタネッリ, パーペ, ヴァン・ダム
No.31~35 トロッタ, ライモンディ, リシツィアン, Ahualli, ヒオルスキ
No.26~30 ウォーレン, カンパナーリ, タリアブエ, アルヴァレス, フィヌッチ
No.21~25 レリエ, エステス, バスティアニーニ②, ヴィノグラードフ, ブラン②
No.16~20 キリコ, ブラン① , グロソップ, カンボン, マルドネス
No.11~15 ローズ, ギャウロフ, ホロストフスキー, コロンボ, ダルカンジェロ
No.6~10 ロヴァーノ , ゴリン , エディ , ポリトコフスキー , バスティアニーニ①
No.1~5 シュロット, グァッレーラ, マッサール①, ティベット, ミルンズ

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ブログ仲間のヴァランシエンヌさんが以前に「闘牛士の歌」の聴き比べをなさった時の記事をご紹介くださったので、リンクを貼らせていただきます。⇒こちら

我が家の関連記事リンク
《カルメン》@Royal Opera House 10/24
《カルメン》新国立劇場11/25(日)
コソットの“おやじ”カルメン with グロソップ/San Carlo 1969年
エルネスト・ブラン/Ernest Blanc (2010.12.22 逝去) 追悼盤を購入


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タグ:カルメン

兄ぃニ(畏れ多くて名前を出せない)のルーナ伯爵 -- イル・トロヴァトーレ '57年と'60年盤 [オペラ録音・映像鑑賞記]

※4/2 画像をいくつか差し替えました。
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aniniprice.jpg
《イル・トロヴァトーレ》の1文あらすじ

 ジプシーの老婆の復讐により、生き別れた兄弟が1人の女をめぐって争い、肉親と知らずに殺し合う愛憎悲劇。


 ある意味壮絶だった《オランダ人》の予習の反動と言うべきか。ここンところのCD鑑賞はヴェルディ三昧。

 主に大先生の空前のヒット作、《イル・トロヴァトーレ》の聴き比べなんぞを楽しんでおったわけです。

 私はたぶん、ヴェルディの中ではこのトロヴァトーレがいちばん好きと思います。

 なぜ「たぶん」かというと、ヴェルディ作品を全て聴いているわけではないからなんですが(ジョヴァンナ・ダルコとか海賊とか)、マイナーなやつ全て聴いても順位はひっくり返らんと思いますね。《レニャーノの戦い》とか死んだよ、あたしゃ。

 ヴェルディのオペラは辛気臭いお話が多いけど、そのワリにはスチャラカ♪で笑える音楽で。
 「呪い」だの「復讐」だの「愛」だの「恋」だの本気でやってンのかしら?と、大先生の神経を疑いたくなるのですが。
 その最たるものが《イル・トロヴァトーレ》だと思うわけです。

 そりゃ、アリアも重唱もカッコ良いさ。どの場面のメロディーもめちゃくちゃキャッチーだし。寄木細工みたいに緻密に計算された2幕幕切れの重唱とか、「神」だと思うさ。

 でも結局、全編がハイテンションな大運動会。歌手たちが自慢の大声と高速歌唱で「オレが!」「アタシが!」と泥試合を繰り広げる、オモシロ演目・お祭り演目として楽しんでいるわけです。
 いや、ま、私はね。

 なので。
 初めてバステ(あ、あぶねぇ…)兄ぃニがルーナ伯爵を歌っているトロヴァトーレの某録音を聴いた時、なんかこう……ちぇっと舌打ちしたくなるような、拗ね拗ねモードに入ってしまったのです。

 その時の心の声を再現すると……

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[ドンジョ映画化につき再掲]アレンの“愛弟子”!? -- 勇者マルトマンのインタビュー [オペラの話題]

※’12/3/19追記。
 インタビューの後半でちょっとだけご紹介した“ドンジョ映画化”の件、実現しました。(⇒公式サイト
 書いた私は忘れていた気付いていなかったのですが、教えてくださったgalahadさんが鑑賞記事をアップされましたので、リンクさせていただきます。⇒映画 JUAN:In fernem Land unnahbar euren Schritten....


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 2008-10-18
 ヴィノ君のヒゲ剃りクリームであやしく盛り上がっているROHの《ラ・ボエーム》。真相は、マルチェッロ役のクリストファー・マルトマンの気が効かなかったってことでOK?

maltman.jpg そのマルトマンのインタビューがMusicalCriticism.comに出ています。長いので、オイシイ部分だけご紹介。

 まず《ラ・ボエーム》のマルチェッロについてですが、彼が初めてプロとしてMid-Wales Operaに出演した時に歌った役なのだそうで、それなりに思い入れもあるみたいですね。今回ROHのこのプロダクションでマルチェッロを歌うことは「ちょっとした心の休日」なんて言っています。

 かと言って、気を抜いているというわけではなく(弟分のクリームを拭うのは忘れたようですがw)、「どんな役であってもないがしろにはしたくない。可能な限りその役を理解して演じることが僕の仕事です」と言い添えたりなんかしているところ。歌唱からうかがえる“生真面目さ”が言葉の端々からもにじみ出ている感じがします。

don_giovanni.jpg さて、マルトマンは今年の夏のザルツブルク音楽祭の《ドン・ジョヴァンニ》でタイトルロールを務めたばかり。

「エーベルハルト・ヴェヒター、ティト・ゴッビ、シエピとか、伝説の歌手たちの後に僕が続くのかと思うと、肩にずっしりと責任がのしかかったみたいで……『神様、僕なんかでいいんでしょうか』という思いと『やったぁ!! スバラシイ!!』という思いが半々で……」

 なんて、またもや真面目な好青年ぶりのうかがえるお言葉(笑)

 ですが、謙虚なだけでなく、自分のシゴトの方向性にかなり意識的で誇りを持っているのだろうと思わせる発言もあるのです。例えば今年2月にサイモン・キーンリーサイドとダブルキャストだった《魔笛》のパパゲーノについては、こんな感じ。

「音楽の水準が保たれるというのであれば、フィジカルな面が要求されるような演技・演出もアリだと思います。僕にとってオペラとは、歌を聴かせるだけで、美術や衣装は付けたしってもんじゃないんです。演奏者側にとっても観客側にとっても、これぞ最高のオペラだ!!と思えるのは、音楽やヴィジュアルやドラマ全ての芸術が融合されたもの。それらの要素をいっしょくたにして放り投げて、パァッ!!ときらめく。そうやってオペラにドラマ性とリアリズムをもたらすんです」

 そしてここで、インタビュアーがナイス質問。

 実はマルトマン、2007年6月に、ニューカッスルのセージ・ゲーツヘッドにて、我らがじーちゃんトーマス・アレン演出による《ドン・ジョヴァンニ》でタイトル・ロールを歌っているんですよね。

 なんて勇者な…!!

 と、私がマルトマンを応援しちゃう理由も、半分以上はこんなところにあったりします。

 というのは、ここ日本での評判はともかくとして、じーちゃん本人は「オレ様こそがドン・ジョヴァンニの生まれ変わり」みたいなイタタな発言が多いですから、そんなじーちゃんのもとでドンジョを歌って演じるだなんて、さぞかしプレッシャー……というか、ぶっちゃけウザかったろうなぁと想像に難くないわけで。

 しかし、そこは“大人”なマルトマン。

「トムには確かに特別なものを感じました。イギリス人の“ドン・ジョヴァンニ”だからってことではないですけど、彼には僕が歌手として尊敬している全ての特質があるんです。歌唱力や演技力だけじゃなくて、鋭敏な知性もそうですし、ステージで歌うことだけに満足せずに役柄になりきろうとする渇望などです。その役に没入して、命を吹き込もうとするんですね。僕も彼も演劇という伝統を有するこの国の人間なので、より演技の面に意識が向きやすいし、音楽の伝統もきちんと受け継がれているんじゃないかと思います」

 ちゃんと“師匠”(*1)を立ててくれていますネ。ありがとーマルトマン。いい子だネ(*´∨`)

 ちなみに、アレン演出の《ドン・ジョヴァンニ》がどんな舞台だったのか。ソースはネット上にちょこちょこあるので、こちらも暇をみつけてブログにまとめる予定です。(“愛弟子”マルトマンとのカンドー的なエピソードもあるのヨ)

don_giovanni.jpg さて、マルトマンの今後の予定は、ROHでは《ラ・ボエーム》と《利口な女狐の物語》、Metでの《魔笛》、ケルンで《ドン・ジョヴァンニ》など。

 なんだかドンジョづいてますね。
 私はマルトマンのドンジョって、なんだかピンとこないんですが。ザルツでのドンジョの写真を見ますと、演出のせいかもしれませんが、いわゆるカッコよくてセクシーなジョヴァンニとは違いそうだし。
 歌唱かなぁ~? でも歌唱も、特にそれらしい特徴が見出せないんだけどなぁ~、今のところは。

 でも、ザルツブルク音楽祭でも歌ったわけですし、なんとドンジョの映画化の話もあるんだそうですから、ドンジョ歌いとして評価され始めているのかもしれません。

 いいなぁ~。“師匠”のアレンだって、ドンジョの映画は無いですよ。というか、映像でも録音でも、正規盤ではアレンの最高のジョヴァンニってのは残っていないんじゃないかしら。 

 そういう意味では、“愛弟子”マルトマンがドンジョ歌いとして名を馳せてくれて、それを追っかけたりしたら楽しいだろうなって気もするのですけど。でも愛って意図的に芽生えるものではないですし、そもそも代償とするにはちょっとタイプが違いすぎるし。しばらくは、「アレンと縁のあるバリトン君」として、気にかけておくくらいにしようかな;;;

 (*1)アレンとマルトマンが実際に師弟関係にあるわけではありません。


サー・トーマス・アレンのスケジュール 2012/13 season [アレンのニュース]

durhamallen.jpg

 ミュージカル《ビリー・エリオット》、ダーラム出身の主人公のモデルとされるサー・トーマス・アレンは2012年1月、故郷のダーラム大学の第12代総長におなりあそばされました。(⇒こちら参照
 驚きと感動で怪しい敬語になってしまった・・・。

* * *


 さて、2012-2013 シーズンのアレンのスケジュールですが、例によって調査下手な私ですのでなかなか情報が集まりません。

 最近ようやくiPhoneをゲットしまして、だいぶ時間を有効に使えるようになりましたが。

 英国ロイヤル・オペラ・ハウスでの登場はありません。(⇒ROHの発表はこちら

 続きを読む以下に、判明毎にアップしていきます。私が気付いていない情報がありましたら是非とも”通報”してくださいませ。


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《さまよえるオランダ人》@新国立劇場 3/14 -- スイッチとかキャスト交代とか地震とか [オペラ実演レポ]

samayoe.jpg ワーグナーってあんまり気乗りしないんですけど。
 行ってきました。

 なぜなら、この演目のタイトルロール、オランダ人は、私めの愛するエルネスト・ブランのレパートリーのひとつだからです。(⇒こちら参照

 そんなこと言ったら《ローエングリン》やら《タンホイザー》やらも行かなきゃいけなくなるわけですが、この先ずっとオペラファンを続けるつもりなら避けては通れない道ですし、《オランダ人》ならヴェルディ派でも大丈夫だと聞いていたので、初心者にはちょうどいっかなと思って。

 まぁ私にとって最も重要なのは上演時間が長くないってことなのですけど。

 一応、ワーグナーの実演を見るのは初めてではないんです。デビューはいきなりの《ジークフリート》と、翌月の《神々の黄昏》でした。ブログ休止中だったんで感想書いていませんけど。

 どちらもそれなりに楽しめたんですが、楽曲を全く知らずに鑑賞したので、音楽がスル~っと耳を通り抜けてしまって、そこがちょっと物足りなかったんですよね。

 なので、今回の《オランダ人》は、事前にちゃんとCDを聴き込んで、自分なりの鑑賞ポイントを固めてから観に行こうと思っていました。だってホラ、「あ~この旋律をブランも歌ったんだなぁ…」と感傷に浸りたいじゃないですか。

 とはいえ、脳内が常にアドレナリンな似非ヴェルディアンとしては、この“予習”がけっこう大変だったんですよ。タワレコで「いちばん安い」CD買って、全曲1周するのにまる2日かかりましたからね。まぁ《マイスタージンガー》完聴に1週間を要したあの頃に比べれば成長したと思ってください(笑)

 慣れたら普通に聴けるようになりましたけど、およそ3周めにして悟りました。

 ワーグナーを聴く時は、テンションだの大声合戦だのオモシロ歌唱だのヴィブラートだのと言ってないで、ちゃんと芸術鑑賞しなくちゃダメってこと。お祭り騒ぎなヴェルディ・スイッチをOFFにする必要があるのですな。…って、ヴェルディをそんなアホな聴き方をしているのは私だけですけど。

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[命日訂正]リタ・ゴールの訃報(2012年1月22日) -- ブランとの共演を偲んで [オペラの話題]

※keyakiさんにご指摘いただき、ゴールの命日を訂正しました。

gorrport.jpg ネットをさまよっていて、あっとびっくり。
 私の大好きなメゾソプラノ、リタ・ゴールが、今年の1月に亡くなっていたんですね。

 2012年1月21日22日、スペインのバレンシア州、デニアで長い闘病の末に逝去。享年85才との事です。

 主な訃報記事は、OPERA NEWS と、GRAMOPHONETelegraph紙 です。

 右上の画像をクリックすると、YouTubeに飛びます。リタの歌う《ドン・カルロ》のエボリ公女、"O don fatale"。
 ヴェルディのメゾの歌で私が唯一涙してしまう曲で、この人の冷たくてマチュアな声で聴くのがとても好きでした。

 Wikiや上記の記事を参考に、簡単に略歴をまとめておきます。
 1926年、ベルギーのゼルザーテ生まれ。
 看護師として働いていたところ、雇い主が彼女の歌の才能を見出して、声楽のレッスン料を負担してくれたのだそうです。

 ヘントやブリュッセルで学んだ後、1946年のスイス、ベルビエでのコンテストで1等賞を受賞し、同年アントワープで《ワルキューレ》のフリッカ役でデビュー。

 さらに1952年にはローザンヌでのコンテストで優勝し、同年にパリ・オペラコミーク座でデビュー(ウェルテルのシャーロット役)、続いて《ニュルンベルクのマイスタージンガー》でパリ・オペラ座デビューを果たしています。

 OPERA NEWSによると、バイロイト音楽祭に初めて登場したのは1958年、《ラインの黄金》、フリッカ役で。続いて《ワルキューレ》、《神々の黄昏》の第3のノルン。(メゾソプラノなら””the second"のノルンだと思いますが、"the third"と書いてあります。これは記事の間違いでしょうか?)
 記事では言及されていませんが、'59年のバイロイトでは《ローエングリン》でエルネスト・ブランと共演しています。

 リタ・ゴールの歌手人生はたいへん長く、最後の舞台は2007年、チャイコフスキー《スペードの女王》の伯爵夫人。ベルギー、アントワープのVlaamse operaにて。なんと81才の時でした。

 彼女の主なレパートリーは上記のワーグナー諸役に加えて、《サムソンとデリラ》のデリラ、《アイーダ》アムネリス、《ドン・カルロ》エボリ、《イル・トロヴァトーレ》アズチェーナ、カルメンなど。

 おもしろいところでは、プーランクの《カルメル派修道女の対話》のマリーとクロワシー夫人、両方の録音を残しています。前者はデルヴォー、後者はケント・ナガノの指揮によるもの。どちらも是非聴いてみたい。

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4月はロシアで《ばらの騎士》 -- ボリショイ劇場デビュー [アレンのニュース]

pianoallen.jpg 2012年のサー・トーマス・アレンのスケジュール。

 まず4月は、ロシアのボリショイ劇場にて《ばらの騎士》だそうです。もちろんゾフィーの父ちゃんファニナル役。

 へぇ~ボリショイなんて珍しい…と思って調べてみたら、やっぱりボリショイで歌うのは初めてとの事です。劇場デビューですね。

 日程は、4/3, 6, 8 です。

 劇場のホームページにはキャストなどの詳しい情報は掲載されていないんですが、エージェントの発表ですので確実だと。

 4/4, 7 ,10 にも《ばら》の公演がありますので、日程的にダブルキャストかな?

 舞台写真などが見られれば嬉しいですね。

 翌5月のスケジュールとしては、5/6ミュンヘンのプリンツレーゲンテン劇場で《スウィーニー・トッド》

toddallen.jpg こちらも「へえぇ~」って感じ。
 ドイツでやるならまた《コジ》だと思っていたので。ええと、根拠はないんですが。

 '03年にROHでトッドを演じていますが…。年齢的にこういうのはもうやらないと思っていた(笑)

 ジョアンナ役はJane Henschelという人のようです。

 アレンの《ばら》は過去にさんざん騒いだので、今度は《スウィーニー・トッド》でも調べてみようかしら。

 この作品のことはよく知りませんし、そういえばアレン出演のミュージカルについても《キャンディード》以来ノータッチですもんね。

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関連記事リンク
聴きました!! -- アレンのファニナル in Met 《ばらの騎士》
聴きました!! -- アレンのファニナル in ROH 《ばらの騎士》
アレンのミュージカル(カテゴリー)
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他のスケジュールは「続きを読む」以下にて随時更新。

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二つめの“動く”ブラン -- 《サムソンとデリラ》 チリ サンティアゴ市民歌劇場 [オペラの話題]

blangranpedre.jpe かなり以前になりますが、こちらの記事エルネスト・ブランが(たまたま)出演していたLD《ボリス・ゴドノフ》(ライモンディ盤)を話題にしたことがありました。

 これが唯一の“動く”ブランと思われていたのですが、灯台下暗し、YouTubeのこの映像にも(たまたま)ブランが映っていたのです!! またもやBasilioさんからの“通報”です。毎度ありがとうございます。

 '84年、チリのサンティアゴ市民歌劇場での《サムソンとデリラ》。

 ブランはお得意のダゴンの大司祭役ですね。

 右上の画像をクリックすると、該当のYouTubeページへ飛びます。
 画質がかなり悪いので絵を見ただけでは「本当にブランか?」と疑いたくなりますが、声を聴けば一目(耳)瞭然。ブランに間違いありません。

 前出の《ボリス・ゴドノフ》が'80年の収録ですから、更に新しい映像となります。
 なんと、御年61才!!

 若い頃にくらべて声量は落ちていますが、敵役とは思えない爽やかな声音は健在。“デレカント”なレガートも’62年にヴィッカーズゴールと組んだスタジオ録音での歌唱と変わりません。

 この歌い癖を“売り”としてきたブランですから。大司祭役も何度も歌ったと思いますが、何十年も同じ歌唱スタイルを貫いてきたんでしょう。ファンとしてとっても嬉しいです。

 映像の詳細はこちらです。ちゃんと正規盤。YouTubeに上がっているのはVHSだと思いますが、嬉しいことにDVDも出ているんですね。
 リージョンコードに阻まれるのでなければ、なんとか手に入れたいものです。

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エットレ・バスティアニーニの《外套》 -- その歌唱とストーリーについて [オペラ録音・映像鑑賞記]

aninitabarro2.jpg「伝説の名バリトンがこんなネタブログに…」とハラハラされている方もいらっしゃるかもしれませんが、最近またプッチーニの《外套》聴きなおしましたので、記念に感想を上げておきます。

 なにしろ私がエットレ・バスティアニーニを見直すに魅了されるきっかけとなった録音です。今後ウチでも彼のヴェルディを取り上げる(←遠くから「ヤメロ~!!」という声が聞こえるわけですが)前にきちんとけじめをつけておきたい。

 有名なので今更ここに書くまでもないのですが、1954年ハンブルクでの録音。指揮はマリオ・コリドーネ。バスティアニーニ以外のキャストはルイジ・アルヴァ(流しの歌手)以外ほとんど馴染みがありません。

 改めて聴いてみたところ、以前の記憶より「声が若い」と感じました。バスティアニーニの“当社比”ではなく、「50才という設定のミケーレにしては若い」という意味です。最初はとにかくバスティアニーニの迫力に圧倒されるばかりで、細かい部分に耳の神経が行き届いていなかったのかもしれません。

 まぁでも、それは些細なことであると思う。録音当時のバスティアニーニは32才で、若い妻に裏切られた初老の男の愛憎をリアルに理解することはなかっただろうけれども、おそらくこの人は非情に音楽的な勘に優れていて、ミケーレの旋律をどのように歌えばキャラクターの心理や作品のテーマを最も効果的に表現できるのか知っていたのではないかと思います。天才なんですね。

 かなり以前に「ストリップ歌唱」というとんでもなくお下品なネタ用語を作ってしまったことがありますが(ヴィッカーズのオテロ参照)、バスティアニーニは当然これには当てはまらない。対極にあると思います。

 この《外套》での彼の歌唱はヴェルディ(特にライブでの)の時とは違う冷静さ、計算している感があります。それがちっとも興ざめでない…というか、むしろ聴き手がこの作品に求めているカタルシスを的確に達成させているような気がします。カラヤンの生み出す音楽に通じるものがあると思う。
 まぁ、単に表現のしかたが私の好みだったから、というだけかもしれませんが。


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