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《兵士たち》シュトゥットガルト国立歌劇場 -- 完聴記念のメモ [オペラ録音・映像鑑賞記]

《兵士たち》の1文あらすじ。
裕福な家庭の娘マリーが兵士たちに弄ばれてやがて娼婦となり、立ち直ろうとするも一度堕落した生き方を変えることはできず、最後には物乞いへと成り果てる話。

diesoldaten.jpg オドロオドロピーヒャララ~!

 このオペラの音楽を、↑のように表現した方がいらっしゃいまして。
「何じゃそりゃ!? オモシロそうだ!!」
と、好奇心から鑑賞してしまいました。
(素晴らしいセンス。まさにそういう音楽です!)

 シュトゥットガルト国立歌劇場、1989年の収録です。

 指揮はベルンハルト・コンタルスキー。いやホント、どうやって指揮するんでしょうね、こういう音楽。

 現代音楽は嫌いではありませんが、さりとて積極的に手を出すような愛好家ではありません。基本、ズンチャッチャな体内リズムで生きているような人間ですし。

 興味を持った今でないと、おそらく一生聴かんで終わる作品。翌日がたまたま休みだったので、音楽で具合が悪くなってもいいやと覚悟し、全曲制覇に挑戦しました。(⇒YouTubeに全曲上がっています)

 最初の20分くらいはしんどかったんですが、ストーリーが進むにつれてだいぶ耳が慣れてきまして、意外と「楽しむ」ことができました。

 いや、Rシュトラウスとかを楽しむような感覚とは全く違いますけど。全然理解不能ですけど。意外と「心地良かった」…じゃないな、何と言うか、「イイ感じで理性が吹っ飛んだ」とでも表現しておきましょうか。

 舞台の映像で鑑賞したのがかなりの助けになったと思います。私のような初心者が、いきなりCDでは辛かったでしょうね。作曲者は何か意図があってこういう音を作っているんでしょうけど、聴いている側はそんなもんわかりませんから。ストーリーと演出が騒音のような音楽に「意味」を与えてくれる。

 ストーリーは、当時としては衝撃的だったのかもしれません。最初から最後までオドロオドロしい怪音の嵐で、いわゆる「男性」ではなく「兵士」たちの獣的で非人道的な欲望であるとか、性的魅力で自らの価値をはかる女の愚かさであるとか、そういうものを表しているのかなと思いますが、今の時代にそういうテーマはちょっと古臭く感じます。

 しかし、もう一度まっとうな生き方に戻ろうとしても「もう遅い。取り返しがつかない」という事実を突きつけられる。その身を引き裂かれるような後悔と恐怖、絶望を、聴く側の感情に暴力的に浴びせるのが目的であれば、これ以上の表現は無いのではないかなぁと思いました。

 深夜から早朝にかけての鑑賞でしたので、何度か落ちかけましたが、唖然として目が覚めたのは、マリーを娼婦の境遇から助けようとする伯爵夫人とマリー、姉シャルロッテの三重唱…というか、三重絶叫。すごすぎて開いた口が塞がらなかった。

 墜ちるところまで墜ちたマリーが床を這いずりまわり、かつての父(娘のマリーとは気付かない)に食べ物を乞うまでのラストシーンも圧巻。(⇒YouTube
 2時間近くも頑張って聴き、観たことが大いに報われる瞬間です。

 2008年には《軍人たち》という訳で、新国立劇場で上演されましたが、当時は観ようなんて全く思いませんでした。もちろん観てません。
 まんがいち、再演されることがあるとしたら、恐いもの聴きたさで行ってみようかなと思いますが…。

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Die Soldaten/兵士たち
ベルント・アロイス・ツィマーマン作曲

Wesener: Mark Munkittrick
Marie: Nancy Shade
Charlotte: Milagro Vargas
Wesener's old Mother: Grace Hoffman
Stolzius: Michael Ebbecke
Stolzius' Mother: Elsie Maurer
Obrist: Alois Treml
Desportes: William Cochran

The Stuttgart State Opera Chorus
Staatsorchester Stuttgart
Direttore: Bernhard Kontarsky.


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