SSブログ

チューリッヒ中央駅の《椿姫》 -- “イベント”というより、むしろ堂々たる“上演” [オペラ録音・映像鑑賞記]

zurich_goro.jpg


 駅で稲垣五郎が大ぐずり!?

 いえいえ。似てるけど(←ホントかよ?)、彼はイタリア人のオペラ歌手、ヴィットリオ・グリゴーロくんでございます。テノールです。

 少し前にお隠れになった“パヴァ神”ことルチアーノ・パヴァロッティの正統な後継者と言われており、今や欧米で大人気。もちろん、既に来日もしているんですよ。その時はオペラではなく、ミュージカル《ウェストサイド・ストーリー》のトニー役でした。

 いえ、ウチのゲストとして初出演の大物歌手ですから、イジリ対象としてスルーするわけにはいかないのよ。一発やっておけば、今後もキャラが立ちやすい→ブログに登場させやすい♪ でしょ。

 ファンの皆さん、ごめんなさい。でも私、基本的に、気に入った歌手しかイジリませんから、その点ご理解くださいね。(まぁ、しまブに気に入られるなんて迷惑!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんけど……ええい、今更遅いわよ!)

 ……で、話を元に戻しますと(笑)

 ちょっと出遅れた話題で恐縮ですが、9/30にスイスはチューリッヒ中央駅で《椿姫》が上演されるというなんとも面白いイヴェントがありまして、ようやくその動画を観たのであります。

 詳細は、keyakiさんのブログbabyfairyさんのブログを参照ください。さわりの動画も見られますし、周辺情報・面白ネタも満載です。

 私は所感のみをまとめますが、このチューリッヒ駅の《椿姫》、主催はArte、スイス国鉄 ( SBB/CFF ) 、チューリヒ・オペラハウスとスイス国営テレビドイツ語放送 ( SF ) 。

 つまり、テレビ局の制作するTVオペラなのでして、となると思い出されるのは先日DVD化されたBBC制作の《ビリー・バッド》です。そういえば、実際の駅構内で《椿姫》を上演するのはチューリッヒのが初めての試みではなく、さきがけてロンドンはパディントン駅で同じようなイヴェントがあり、BBCが中継をしています。昔からBBCってこういう企画が好きなんですね。

 《ビリー・バッド》の収録は1966年。なんと40年の昔ですから、当時の技術とは当然雲泥の差があるわけですが、想像していたよりも共通する要素も多く、とても興味深かったです。
-----------------------
 例えば、40年前のビリー・バッドも今回の椿姫も、どちらも生(ナマ)のオペラであること。ツギハギや口パクを駆使して収録したものではないのです。

 おそらく、このイヴェントに関する唯一の日本語ニュースかと思われるswiss info .chに、スイス国営テレビドイツ語放送のプロデューサーであるベック氏の発言が紹介されています。曰く、「テレビ放映にふさわしい形を見つけること、オペラをほかならずテレビというメディアの中でのみ可能にする形へ移すことに非常に苦心した」との事。

 オペラを鑑賞するための手段、メディアは複数存在するわけですけれども、その中でよりTVらしい、TVにしかできない“強み”というのは「生(ナマ)」の様子を伝えることができるという点にあります。さらには、上演の場を「劇場」という空間だけに制限されないというところも。

 BBCのビリー・バッドはスタジオという空間の中で演じられましたが、劇場の舞台をはるかにしのぐスケールの大きなセットの中で歌手を縦横無尽に動かして、実に生き生きとした映像を作り出しました。

 今回の《椿姫》の舞台はチューリッヒ中央駅と、40年前には考えられなかった巨大な施設を「スタジオ」に見立てています。しかも、上演中であっても駅の機能はいっさいストップさせず、通常業務を行っていたそうです(と言っても、日本人の感覚とは違いますので、多少の遅れやアクシデントは普通にあったと思いますが)。

 駅の広いコンコースにオーケストラ用のピットを設け、歌手はヘッドセット・マイクをつけて構内のあちこちを歩きながら(プラットホームやカフェなど、様々な場所を舞台セットに見立てて)歌うんですね。別れのシーンで実際に発車する電車に飛び乗ったりするシーンもありました。駅ですから利用客でごった返していますし、それ以上に「わざわざ見物にやってきた」野次馬も山ほどいます。携帯電話を片手に、「見て見て~。私、映ってる~?」なんて話しているであろう人々の真ん中で、《椿姫》のドラマが繰り広げられる。

 生の生活空間に生のオペラを存在させたというわけで、しかもその全貌を完璧に鑑賞できるのは自宅でTVを観ている人ですから(生で観ている場合、歌手があちこちに移動するので、音楽はちゃんとは聴こえないでしょう)、確かに、これぞ「TVオペラの進化型」であると言えます。

 大変おもしろい試み。そして、これは成功したと言えるのではないでしょうか。話題にもなったし、配信された映像は物珍しいだけではなくて、きちんとオペラとして楽しめるレベルの作品になっていると思いますから。単なる“イベント”ではなく、一つの形としての“上演”であると言えます。

 「オペラは劇場で」と考える人には邪道かもしれませんが、少なくとも私にとっては、こないだのパリ国立オペラ《青ひげ公の城》の“映像効果”より、はるかに好感が持てますね。なぜなら、チューリッヒ中央駅の《椿姫》は“生のオペラ”であり、生身の歌手による歌唱(と、生オーケストラの演奏)が主役だからです。

 青ひげ公も、ソリャ演奏じたいは生でしたし、上演の場所も劇場ですが、主役は人ではなくて過剰な映像のほうでしたからねぇ……。生の歌唱あってのオペラですから、憂うべきは形式ではなく、オペラの本質を軽視したアーティストによる自己満足な――いや、悪口はこの辺でストップしておきましょう(笑)

 では、自称オペラファンの端くれとして、歌手陣の感想も述べておきますネ。

 まずは稲垣五郎ちゃんヴィットリオ・グリゴーロのアルフレード。
 オペラ全曲を彼の声で鑑賞したのはお初なんですが、なるほど、パヴァ神のお隠れになった今、世界が彼の声音に神の残照を見るのも無理からぬことと思います。良い声です。そして、やっぱりパヴァ神に似てるところ、ありますね。

 なんか全体的にうるうるした声音なんで、私としてはもうちょっと強さを出してくれると嬉しいんですけどー。でも叙情的なところは好きですね。オモシロ歌唱の素質も十分に備えていますよ!

 次にエヴァ・メイのヴィオレッタ。
 実は私、小娘っぽい響きのあるメイの声って、あんまり好きじゃないんですよね……;;; 上手だとは思うけど。だから前半は、イマイチ乗り切れなかったかなぁ……。 
 でも後半は、確かに皆さんの仰る通り、迫真の歌唱で、私のガンコな苦手意識を払拭するほどの何かを感じたと思います。椿姫は私にとっては泣く演目ではないのですが、なんだかじーんときちゃいましたもの。

 アンジェロ・ヴェッキアのパパ・ジェルモン。
 んンンンン~(悶絶!) 私の最も嫌う歌唱、発声じゃん!!



 ↓↓↓おまけの動画↓↓↓
 

 YouTubeには既にたくさん上がっていますし、keyakiさんやbabyfairyさんのお宅でも見られますので、ご興味がありましたらぜひどうぞ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。