グロソップ×ウ゛ィッカーズの『オテロ』/ヴェルディ :1 [オペラ録音・映像鑑賞記]
たまにはマジメに書かなくちゃ……などと言いつつ、上記のタイトル(意味がわからない方はそのままスルーしてください)。
せっかく買ったDVDですが、スイッチが入ってしまったからには二度と正気では観られません。
でも大丈夫。同キャストによるCDだって、ちゃ~んと手配しておいたんですよ。“絵”が無いぶん、歌唱の細かい部分まで集中して聴くことができます。
映画のために先録りした音源のようですネ。
さて、グロソップのイァーゴ。
さぞかし似合うだろうなぁと期待していた通り、陰と陽のはっきり分かれた理想的な歌唱です。豪快なオジさんと小悪党、それぞれの顔がイイ感じに現れたり隠れたりしています。
そう感じられるのには、グロソップの声の音色が、ベースは明るいながらも、ときおり曇りガラスのような不透明感を帯びるからかな。
曇り、湿り気、ヌルヌル感。コレ重要。
カラッと明るい声であるほど邪心の無い(単純おウ゛ァカな)キャラクター性が際立つのに対して、声音に曇りが生じれば、とたんに歌詞の意味の裏表が気になってくるのですから。陰険なイァーゴにうってつけの声ってワケです。
グロソップの場合、倍音が「曇って」聴こえるタイプのようですね。
ただし、ウ゛ェルディの描くイァーゴは、全く陰険な感じがしませんね。やっぱりイタリア人なんですよね、ウ゛ェルディも。
そりゃ「悪い人」というか「小悪党」って感じはしますけれども、憎めない。というか、単純でわかりやすい旋律なので、ぶっちゃけカワイイ(*´∨`)
“クレド”でも、あっけらかんと悪徳を宣言しちゃってまして、裏も表もあったもんじゃない。
シェイクスピアのイァーゴにはもっと後ろ暗いイメージがあります。例えばブリテンがこの台本に音楽をつけていたら……“クレド”だって、陰鬱で、それでいて悪魔的な悦びに身悶えするかのような、それこそ『ビリー・バッド』のクラッガートの独唱のようになっていたことと思います。
(それぞれの作曲家の個性なので……どちらが良いとか悪いとかではないです)
かなり以前に、ローレンス・フィッシュバーンとケネス・ブラナーの映画『オセロ』を観たことがあります。ブラナーのイァーゴは陰険で小心、神経質そうなキャラでした。ワタクシ、シェイクスピアは全く門外漢の為、語る言葉を持たないんですが、たぶん、これがスタンダードなイァーゴ像なんでしょう。ブラナーの演技はかなり現代的とはいえ、人の本質は変わりません。
さすがと言うか、英国人のグロソップはさまざまな声色を使い分けて、本家イァーゴの複雑な内面を表現しようとしていると思いますが、これが大雑把なタイプの歌手でしたら、単なる天邪鬼なオジさんみたいになるんでしょうか。いやグロソップだって結局そういう感じだし。
むろん大雑把なイァーゴのほうが、オペラの『オテロ』的には“正しい”んだと思います。だって作曲者ウ゛ェルディの感性がそもそも大雑把なんですもん。
グロソップの細けぇ表現力もヴェルディの(良い意味で)大味な楽曲の前には「無駄な足掻き」というか(笑)
それだけヴェルディの個性って強いんでしょう。
それはそうと、グロソップの歌唱は素晴らしいです。というか、好みです。
重めの声でありながら弾力性に富み、高音の伸びの小気味の良いこと。トリルなんかもいとも簡単にやってのけちゃう。イヤホンなんかで聴いていますと、滑らかで、耳を舌でくすぐられるかのようで、とっても気持ちイイんです。
重量歌手(体重じゃないですよ?)だからあまり小回りはきかないんじゃないかと思っていましたが、いやいや恐れ入りました。
テクニシャンです。器用な喉をお持ちです:*:・テレ(*´エ`*)テレ・:*:
お顔もサンダーバードですし……。
※こんどは“猿の惑星”と言われました・゚・(つД`)・゚・
ドニゼッティなども得意なようで、ベルカント系にあまり気乗りのしないワタシでも、この人の声ならけっこう楽しめちゃうんじゃないかしらん。
んじゃ、お次はグロソップの『マクベス』を……といきたいトコロなんですが、ウ゛ィッカーズのオテロ歌唱にまだ触れていないんだっけ。
実は、このCDを聴いて粘着に語るべきなのはグロソップではなく、ウ゛ィッカーズのほうだと思うんですよ。
ん~ワタシにとってのグロ様の弱点を一つだけ挙げるとすれば、ウ゛ィッカーズのような一度聴いたら忘れられない強烈な個性に欠けるって点でしょうか。
もしくは、アレンみたいな「ツッコミどころ」が無いってトコロね(←鬼畜)
09/11/29追記: トーマス・アレンの“クレド”をネタにした記念に、お手本としてグロ様の“クレド”も貼っておきます。
次回はヴィッカーズの歌唱について(。+・`ω・´)シャキィーン☆
せっかく買ったDVDですが、スイッチが入ってしまったからには二度と正気では観られません。
でも大丈夫。同キャストによるCDだって、ちゃ~んと手配しておいたんですよ。“絵”が無いぶん、歌唱の細かい部分まで集中して聴くことができます。
映画のために先録りした音源のようですネ。
さて、グロソップのイァーゴ。
さぞかし似合うだろうなぁと期待していた通り、陰と陽のはっきり分かれた理想的な歌唱です。豪快なオジさんと小悪党、それぞれの顔がイイ感じに現れたり隠れたりしています。
そう感じられるのには、グロソップの声の音色が、ベースは明るいながらも、ときおり曇りガラスのような不透明感を帯びるからかな。
曇り、湿り気、ヌルヌル感。コレ重要。
カラッと明るい声であるほど邪心の無い(単純おウ゛ァカな)キャラクター性が際立つのに対して、声音に曇りが生じれば、とたんに歌詞の意味の裏表が気になってくるのですから。陰険なイァーゴにうってつけの声ってワケです。
グロソップの場合、倍音が「曇って」聴こえるタイプのようですね。
ただし、ウ゛ェルディの描くイァーゴは、全く陰険な感じがしませんね。やっぱりイタリア人なんですよね、ウ゛ェルディも。
そりゃ「悪い人」というか「小悪党」って感じはしますけれども、憎めない。というか、単純でわかりやすい旋律なので、ぶっちゃけカワイイ(*´∨`)
“クレド”でも、あっけらかんと悪徳を宣言しちゃってまして、裏も表もあったもんじゃない。
シェイクスピアのイァーゴにはもっと後ろ暗いイメージがあります。例えばブリテンがこの台本に音楽をつけていたら……“クレド”だって、陰鬱で、それでいて悪魔的な悦びに身悶えするかのような、それこそ『ビリー・バッド』のクラッガートの独唱のようになっていたことと思います。
(それぞれの作曲家の個性なので……どちらが良いとか悪いとかではないです)
かなり以前に、ローレンス・フィッシュバーンとケネス・ブラナーの映画『オセロ』を観たことがあります。ブラナーのイァーゴは陰険で小心、神経質そうなキャラでした。ワタクシ、シェイクスピアは全く門外漢の為、語る言葉を持たないんですが、たぶん、これがスタンダードなイァーゴ像なんでしょう。ブラナーの演技はかなり現代的とはいえ、人の本質は変わりません。
さすがと言うか、英国人のグロソップはさまざまな声色を使い分けて、本家イァーゴの複雑な内面を表現しようとしていると思いますが、これが大雑把なタイプの歌手でしたら、単なる天邪鬼なオジさんみたいになるんでしょうか。いやグロソップだって結局そういう感じだし。
むろん大雑把なイァーゴのほうが、オペラの『オテロ』的には“正しい”んだと思います。だって作曲者ウ゛ェルディの感性がそもそも大雑把なんですもん。
グロソップの細けぇ表現力もヴェルディの(良い意味で)大味な楽曲の前には「無駄な足掻き」というか(笑)
それだけヴェルディの個性って強いんでしょう。
それはそうと、グロソップの歌唱は素晴らしいです。というか、好みです。
重めの声でありながら弾力性に富み、高音の伸びの小気味の良いこと。トリルなんかもいとも簡単にやってのけちゃう。イヤホンなんかで聴いていますと、滑らかで、耳を舌でくすぐられるかのようで、とっても気持ちイイんです。
重量歌手(体重じゃないですよ?)だからあまり小回りはきかないんじゃないかと思っていましたが、いやいや恐れ入りました。
テクニシャンです。器用な喉をお持ちです:*:・テレ(*´エ`*)テレ・:*:
お顔もサンダーバードですし……。
※こんどは“猿の惑星”と言われました・゚・(つД`)・゚・
ドニゼッティなども得意なようで、ベルカント系にあまり気乗りのしないワタシでも、この人の声ならけっこう楽しめちゃうんじゃないかしらん。
んじゃ、お次はグロソップの『マクベス』を……といきたいトコロなんですが、ウ゛ィッカーズのオテロ歌唱にまだ触れていないんだっけ。
実は、このCDを聴いて粘着に語るべきなのはグロソップではなく、ウ゛ィッカーズのほうだと思うんですよ。
ん~ワタシにとってのグロ様の弱点を一つだけ挙げるとすれば、ウ゛ィッカーズのような一度聴いたら忘れられない強烈な個性に欠けるって点でしょうか。
もしくは、アレンみたいな「ツッコミどころ」が無いってトコロね(←鬼畜)
09/11/29追記: トーマス・アレンの“クレド”をネタにした記念に、お手本としてグロ様の“クレド”も貼っておきます。
次回はヴィッカーズの歌唱について(。+・`ω・´)シャキィーン☆
2007-05-18 23:38
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サンダーバード・・・顔の三分の一が「おでこ」で出来ている感じが似ているかも。相変わらず、目の付け所?がヨロシイようで(笑)。
しまさんと一緒にオペラを見たら、劇後の感想を話すのが楽しそうですね。劇中はずっとオペラグラスでクチビルを覗いていそうな気もしますが・・・。
by K16 (2007-05-19 23:29)
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こんにちは。
遊びにやってまいりました。
やっぱりイアーゴって気になるキャラクターですよね。
ヴェルディ自身もこの役をとても気に入っていたらしくタイトルロールにも考えていたとか・・。
グロソップ、なかなか容姿もぴったりですね(これって褒め言葉?)
単純そうなマッチョなイアーゴだったりするとがっかりします。
by メラノ (2007-05-20 08:55)
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■K16さん
>顔の三分の一がデコ
言われてみればそうですね~。
いちばん近いのが4号↓ですか。
http://www.tbjapan.com/ir/gordon/
続けざまに二人の人間から指摘されたってことは、サンダーバードもグロソップも典型的な英国人顔ってことなんですかねぇ。
■メラノさん
いらっしゃいませ。ブログでは検索よけ(あんまり意味ないんですが)をかけて、おバカ丸出しで遊んでいます;;;
>イァーゴがタイトルロール
えええッ!? それヤダっ!
日陰の存在だからこそイァーゴのキャラが輝くのに!
そうならなくてよかったデス~(*´Д`)
でも確かに、本家シェイクスピアでもオセロよりイァーゴを誰が演じるかが成功の鍵みたいですね。“Vanne!!”も「ヴェルディ、どうしちゃったの!?(←失礼)」ってくらい気合いが入った曲に仕上がっていますし。
そのワリには、ラストは「走って逃げる」というおマヌケぶりを発揮していますが…(´・ω・`)
>これって褒め言葉?
モチロンです(*´∨`)
by しま (2007-05-20 14:28)