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エルネスト・ブランのアルマヴィーヴァ伯爵 in 《フィガロの結婚》 -- 全曲盤!! しかもライブ!! [オペラ録音・映像鑑賞記]

erfigaroCD.jpg ※'12,3,3 「続きを読む」以下のブランの写真を差し替えました。

往年のヘルデン・バリトンエルネスト・ブランの新譜が出てます。
(教えてくださったBasilioさん、ありがとうございます。私のファン道は皆様の生温かい励ましと通報、施しによって成り立っております)

 これはかなりのレアもの。
 というのも、お得意のフランスオペラやワーグナー等ではなく、モーツァルトの《フィガロの結婚》なんですから。もちろんアルマヴィーヴァ伯爵役です。

 何がレアって。そりゃ、フィガロの伯爵はブランのレパートリーの一つですから何度も歌ってきたんでしょうけど、現在では「ああ、あのセクシーな“闘牛士の歌”の人ね」くらいの知名度だと思いますし。

 マスネとかグノーとかフランスものならいいけれど、彼の特徴的な歌い癖でリゴレットやルーナは聴きたくないでしょ(しかもフランス語で、ですよ?)。

 ましてやモーツァルト。歌えるのはわかっているけど、いかにもワーグナーっぽい太すぎる声質といい声量といい、明らかに「モーツァルト向きではない」です。周囲からかなり浮くでしょう。

 しかもアルマヴィーヴァ伯爵役です。憎めない役ドコロとはいえ、セクハラ・パワハラ全開のウザい殿さま。大抵はエロおやじっぽく演じたり、若い歌手がやる時でも(憎めない程度には)性格悪そうにしますものね。

(※'12,3,3追記)
 セクハラシーンになるとやけに張り切るトーマス・アレンのCrudel!を貼っておきます。伯爵役は声質も声域もアレンにぴったり合っていて、数あるレパートリーの中でも上位のハマリ役だと思います。
 彼の声もかなり“ヘルデン”っぽいですが、粘着な歌唱と演技で味を出してますね。


 ブランの歌唱は「さわやかな好青年」っぽいですから、いったいどんな伯爵になってしまうんでしょう? 
 “Hai Gia Vinta La Causa! ”はEMIの“Le Chant Francais”に収録されていますが、全曲盤が出たのは初めて。ブランが数々のセクハラシーンをどんなふうに歌ったのか検証する絶好のチャンス!
 というか、ファンとして普通に楽しめます!

 そして、嬉しいライブ盤です。
 1961年6月2日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで収録された模様。おそらくコンサート形式だと思います。奥方の部屋の外で扉をドンドン叩いているはずの伯爵の声が、モロにマイクのまん前にありましたからね(笑)

 まずは右上のCDジャケット画像をクリックして、YouTubeにアップされた"Crudel!"から"Hai già vinta la causa" の部分をお聴きください。
 ご安心を。ちゃんとイタリア語で歌っていますから(笑)

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blanconte.jpg いかがです?
 爽やかでステキな伯爵でしょ?・:*:・(*´∀`*)ウットリ・:*:・

 意地悪な感じも全くなくて、"Crudel!"のところなんか、「もうこの伯爵かわいそーだから、1回くらい相手してあげて~!!」と言いたくなっちゃう。

 "Hai già vinta la causa"なんて、本来はワガママな伯爵の逆恨みの歌なのに、ブランだと「悪人どもに正義の鉄槌を下す!」なんて言ってるみたいに聴こえます(笑) 
 まぁブランにしては、頑張って逆ギレしてる感を表現しているようですけれども、もともとの声が「善い人」っぽいのでね。バリトンって敵役も多いのに、ほんと、希少な声音だと思います。

 実際、フィガロ役のフェルナンド・コレナがなかなか芸達者な歌いぶりなので、なんだかフィガロのほうが伯爵に意地悪をしているみたいなんですよ(笑)

 とはいえ、アルマヴィーヴァは根っからの悪人ではないですし、その昔は奥方のロジーナと大恋愛の末に結ばれたわけですから、これっくらい男前で色っぽさがあってもいいかもしれないですね。ブランは高音がきれいなので、貴族のノーブルな雰囲気もよく出ていると思います。

 左上の画像をクリックすると、YouTubeで“Susanna or via sortite!”の部分が聴けます。

 さて、共演者もなかなか豪華で、伯爵夫人はエリザベート・シュワルツコップ。けっこう似合いのカップルですよ。

 脇役陣も私的に興味深く、バルバリーナはヘザー・ハーパーです。

cappuccilli.jpg そしてさらに興味深いことに、庭師アントーニオはピエロ・カプッチッリ(※3/5追記:キャストにカプッチッリを付け加えました)

 カプッチッリがアントーニオを歌っている録音は「指揮ジュリーニ、ヴェヒター、タディ、シュワルツコップ、コソット、モッフォ」のがありますが、ひとつ増えましたね! ちなみにこのライブ盤も、指揮はジュリーニなんですね。上記の録音が'58年なので、カプ様はジュリーニに「キミのアントーニオはいいねぇ」と気に入られていたのかも!?

 YouTubeでアントーニオの場面を探したのですが見つからなかったので、久々に自分で音声ファイルをアップしました。

"Ah! signore... signor!"



 この記事を書くにあたり、自分でYouTubeに投稿しなきゃいけないかなと思っていたのですが、既にオイシイ場面がたくさんUPされていまして。世界中のブランのファンがこの《フィガロの結婚》発売を喜んでいるんだなと実感しました。
 おそらくファンのほとんどが「爽やかすぎるよ~」と笑いながら聴いているんだと思います。
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Fernando Corena (Figaro)
Elisabeth Söderström (Susanna)
Ernest Blanc (Almaviva)
Elisabeth Schwarzkopf (Countess)
Teresa Berganza (Cherubino)
Giorgio Tadeo (Bartolo)
Edda Vincenzi (Marcelina)
Hugues Cuénod (Basilio, Don Curzio)
Heather Harper (Barbarina)
Piero Cappuccilli (Antonio)
Philharmonia Orchestra & Chorus
Carlo Maria Giulini

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コメント 6

Basilio

なんか聴いてるとだんだん“爽やか素敵伯爵”もありだな、と思わせてしまう不思議な録音ですよね(^^;フィガロがバルトロ夫妻の息子だとわかる6重唱でも伯爵に肩入れしたくなってしまうという…笑。
コレナとかも結構声がでかいから全然浮いてないし、実は隠れ名盤な気もします。

カプッチッリはこのころはジュリーニとの録音でモーツァルトの小さい役をよくやってたんですかね?このフィガロのアントニオもそうですが、ヴェヒター主演のドン・ジョでもマゼットをやってましたし。
by Basilio (2012-03-03 09:20) 

しま

■Basilioさん
>“爽やか素敵伯爵”
まさに(笑)

>カプッチッリのマゼット
そうなんですよね。
やけに輝いた声のマゼットだ…と思って配役を見たらカプッチッリでびっくりした思い出が。
ヴェヒター、タデイ、シュワルツコップと、メンバーも似たようなものだし、いわゆる「ジュリーニ ファミリー」みたいになっていたんでしょうか?(笑)

あ、でもネット検索していたら、クレンペラーの病気で急遽ジュリーニになったらしい。
ドンジョの録音が59年なので、これがきっかけでファミリーに・・?(笑)
by しま (2012-03-03 17:38) 

Basilio

爽やか素敵伯爵のお写真が!www

カプッチッリはちょっとマゼットには声が輝かしすぎですよね(^^;あの役はバスのほうがいいと思います。
あののちジュリーニの『リゴレット』ではタイトル・ロールですから気に入られたんだかプロデューサーのご指名か…

あれはクレンペラーがもともと予定されてたんですか…なんか想像つきません笑。
by Basilio (2012-03-04 08:14) 

しま

■Basilioさん
>爽やか素敵伯爵のお写真
見つけたので貼っておきました。
外見だけなら普通にオジさんなんですよね。声とのギャップがありすぎます(笑)

マゼットがカプッチッリと知った時、普通に「ふぅん、この人も元々はバスだったんだ?」なんて思っていました、私(笑)
by しま (2012-03-04 22:09) 

ぶどう

カプ様美声~♪( ´▽`)
出番が2分半もあるなら買ってもいいかなぁと思ってきました。
ボルサと対して変わらないよね。

最後のキャストにカプ様がないのは悲しい( ;´Д`)
by ぶどう (2012-03-05 19:48) 

しま

■ぶどうくん
>買ってもいいかなぁと
そうよ、そうよ~。キャリア初期のレアな録音だからこそ貴重なコレクターズアイテムなのよ。それにこのCD、安いよ(笑)
私もアレンがモラレス歌ってる《カルメン》、買ってますから♪

>最後のキャストにカプ様がない
あらま、ゲストとしてお呼びしておきながら、申し訳ない。
某サイトからのコピペだったので(←怠惰)。
付け加えておきました!

それにしても、ブランとカプッチッリが共演していたなんて。オペラ界は狭いですね(笑)
by しま (2012-03-06 00:08) 

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